第三章 心を通わす者と再手合わせ
はい、たいが~すです。今回はエルフ回です。エルフのイメージとは少し違うかもしれません。
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
エルフ、それは精霊、森の精霊のことを指す名称。魔法などを得意とし、賢者と言われる程の知識を持ち合わせ、耳は長く、そして長寿。その中でも一際特徴的と言えるものが美男美女である、ということ。ハーフですら人を簡単に魅了できる美しさを誇るのだ。
そんなエルフの子供が脱水症状で倒れていた。しかも、怪我を負っていた、ということからも含めて戦闘もしていたのが見てとれる。
その上で生きている、となれば子供ですらエルフは強いということだ。なにより一人だったということ。それなのに生きているという事実。
…目の前のサタシャと名乗るエルフはそんな風に見えなかった。少なくとも脱水症状で倒れていた、ということはそもそも水を持ち込んでいないのか、使い果たしたか。
水の確保は生存の必須項目であり、それを知らないということはそもそも森の経験がなかった、といえるだろう。
「サタシャは水を持っていないな?何故だ?冒険や遠出をする時には水は必須だろう。」
「お水は使いきってしまいました!弱りきっていた動物を手当てしていたら、いつの間にか、その…」
…なんとこのエルフは動物の手当てをしていたようだ。こんなところで。
「なら、その傷は?」
「これは魔物が暴れちゃって。治すのに苦労しました。てへへ。」
何がてへへ。なのか…
それにしても間違いなくこの子は強い。まず普通魔物に治療の為に近寄ろうとする者などいない。そして、暴れる魔物を押さえつけて治療してしまえることは、まず魔物以上に実力が無い場合できない。
「それにしても、竜也さん?もあの牙狼とお友達なんですね~。すごいです!フェンラルくんだね。よろしくね!」
…それにしてもこのエルフは警戒心がないのかなんなのか。今まで警戒したことがあるのかすらわからない。竜也は頭痛を感じた。
と、そこに。
ガサガサガサ。
何か生きものが出てきた。サタシャとフェンラル以外は全員警戒体勢で構える。
た
魔物だ。しかも、5~6頭。こちらを警戒している。
だが、彼らはどうやら敵ではないようだ。
何故ならどこからか汲んできた水をサタシャに差し出している。
「ありがとう!もしかしてお礼?わっ、くすぐったっ、ありがとね!」
魔物達に舐められたりしつつ魔物達の頭部を撫でながらサタシャは笑っている。魔物達もサタシャに助けてくれた礼を言っているようだ。
魔物使い
エルフでありながら、いやだからこそ魔物と意志疎通を図り、そして共に暮らしていけるのかもしれない。
「魔物と意志疎通。養ってもらえるなんて羨ましい。」
「成程。エルフってすごいんですね。」
サタシャに対して三者三様に思うところがある。が、もういいだろうな。
これを見ている限り、助けなくても助かっていただろう。実力もあるだろうし。
「もういいか。ではな、サタシャ。今度は水不足に気を付けろよ。」
そう言って竜也達は去ろうとしたところ。
「待ってください!お礼をさせてください!」
サタシャは引き止めた。
お礼なんてのは一切期待もしていなかったのだが。
「私は役に立ちます!連れていってください!後悔はさせません!むしろ、ポーションなどお返しできると思います!」
「いや、いい。お礼されるようなことはしていない。」
「いえ!自分を助けて頂きました!お礼させていただきます!断られても!」
真面目な上に強情だ。
竜也は頭を抱えるのだった。
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依頼を精算しながらもアイシャは苦笑していた。何せ竜也が今度は依頼途中にエルフの子供を助けて、お礼として付きまとわれた、と報告してきたからだ。
エルフ自体は有名で、そこまで珍しくもなく、いつかは竜也と会う者もいるだろう、とは思っていたが、想像を遥かに超えて速かった。
そのエルフの子供はサタシャ・エルドームといい、脱水症状で倒れていたところを助けてもらったお礼をする、と言っていた。が、恐らく本人は気付いていないかもしれないが、その眼は好きな人に向けるそれだった。そういえば、膝枕をした、とも言っていたな。羨ましい。
そういえば、サタシャは何も手立てが無い。ふむ、ならば…
「サタシャ、君はどうやってこの町で生きていく?ここで生きていくには金がいる。森なら生きられるかもしれないが、君はどうする?幸いここは冒険者ギルドだ。これは提案なのだが、竜也のパーティーと組んでみたらどうかな?君ならいけるだろう。恩も返せる。竜也はどうかな?」
「パーティーに入れる?確かにそれはいいな。だが、あまりにも知らないことが多い。確認してからだ。」
「入ります!入らせてください!」
「なら、手合わせをしようか。」
久しぶりだ。エルフと手合わせするのは。かつての仲間を思い出す。
ギルドの中庭へ鎧に身をやつして共に出る。サタシャは空間から武器を出して構える。
短刀、いわゆるダガーだ。対するこちらは大剣。
「いくぞ!」
地を蹴る。そして、すぐさま間合いを詰めようとする、しかし。
「植物の鞭!」
魔法がかなりの射程を持っており、それが放たれる。アイシャは体を右に傾け避けた。その威力は地を微かに抉りとる程の力だ。強力無比。
しかし、当たらなければ意味は無い。その鞭の尽くを避けて間合いまで詰めきる。
そこでサタシャは魔法は無理だと諦めてすぐさまダガーで攻めてくる。相当な速さだ。だが、短刀と大剣ではリーチと威力が大きく違う。短刀のリーチの外から振る大剣の一撃がサタシャの長い耳の微かに上で止まる。
「まっ、参りました!」
ふむ。間違いない。サタシャは経験不足がかなり大きい。だが、十分だ。いや、むしろ竜也にとっていいだろう。
「わかった。組もう。これだけやれるのと、フェンラルに害を与えず、そしてネロと共に鍛練ができそうだな。よろしく頼む、サタシャ。」
「え?やったー!組めるんだ!よろしくお願いします!竜也さん!」
サタシャは組めることに満面の笑みを浮かべている。喜ばしいことかもな。
こうして、竜也のパーティーに新たに一人加わった。果たしてこのエルフは恩を竜也に返せるのか、それは誰にも今はわからない。
ご覧頂きありがとうございました。最近かなり書くのが難しいです…誰か才能をわけてくれ!え?無理?ですよね…
またご覧頂ければ幸いです。
ありがとうございました。