第三章 採取と遭難者
はい、たいが~すです。今回から第三章です。新たな舞台もそろそろですかね。
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
魔物の森の森の中…
竜也、ネロ、フェンラル、そして狩人であるラスカは薬草である癒し鈴蘭や解毒草である毒抜き牡丹、ポーションの下地にもなるマジックシメジなどの採取を目的に訪れていた。
いわゆる採取依頼である。
これは、実際簡単でもなんでもなく、むしろ高難易度に近い依頼である。
一つ目にまず、目利きができないといけない。
使えない品などを持ってこられても困るし、そもそも知識も経験も無いものが野草等を見分けられるなんていう筈も無い。
二つ目にそもそも採取するものが安全なところに生えているなら依頼する必要もない。安全なら、わざわざ冒険者を使わずとも安い労働力を頼ればいい。しかも、冒険者ギルドは達成率を高めるために割高なので、専門を雇う方が安く済む。
三つ目に良いものはやはりいい場所でこそ育ちやすいからだ。特に薬草なんかは魔物もそれを目的として集まってくる場合すらあるからだ。
これらから鑑みても採取依頼は簡単にいくものではない。そのため最低でも誰か一人が鉄級で、尚且つ狩人ないしは目利きできるものを連れていくのが必須となっている。
そんな中、竜也は銀級の上にフェンラルまでもいる、というのなら鬼に金棒とも言える。魔物の森でなら最も安全なパーティーだ。
ネロは銅級だが、明らかに鉄かそれ以上に実力があり、恐らくこの中で一番非力なのは狩人であり、青銅級冒険者でもあるラスカだろう。
因みにラスカの自己紹介は、
「私はラスカ・グレーン。イケメンと美少年と一緒でもなるべく働きたくないでござる。守ってくだされ。」
…竜也を思いっきり不安にさせたが、知識と経験は豊富なので冒険者ギルドの職員は採取依頼によく同行させていると言っていた。
実際技術は相当に高いことが実践で判明した。人の性格は案外話す言葉とは裏腹なのかもしれない。
魔物は3人を恐れて出てくる訳もなく、ラスカが納品依頼を受けている麻痺火炎茸の採取を手際よく安全にかつ丁寧に終わらせていく。そんな中で、ラスカは隣にある薬草である癒し鈴蘭や治癒蔓なども少し採取していく。
採取依頼は難易度に見合い、実入りがかなりいい依頼だ。
なにせ、完全に上手くいけば、魔物との遭遇も無いため、武具や防具、矢やポーションなどを大きく節約できる。
更に道具があるので、偶然あった薬草や素材や材料を確保して持って帰ることができるのも大きい。
そして、相当な量の依頼金が手に入る。前は一人2金貨30銀貨が7人の合計16金貨10銀貨だったが、今回はなんと48金貨を4人で分ける、つまり一人12金貨である。差は歴然だ。
納品数は24本の麻痺火炎茸と36本の癒し鈴蘭。麻癒丸と呼ばれる、麻痺毒と傷を治療する癒しの能力が高い薬を作るために、ということらしい。
既に納品分は確保した。だが、ラスカは更に採取を続ける。
やはりというべきか魔物の森の土壌は相当に良く、しかもダンジョンが近くにあり、魔力の影響を受けるからか稀少な薬草もたまに生えているぐらいだ。
「稼ぎ時、稼ぎ時。なるべく楽して暮らすのだ。イケメンや美少年に寄生してもよいですな~。」
…このまま仕事を続けてくれることを切に願う。なにせ、技術も知識もあるのだ。辞めるとしたら勿体無いが、これは本人次第だろう。
そんな中かなり森の奥まで入り込む。安全な時に稼いでおく、というのがやはり冒険者の本質で、それができなければ生きていけない。どうやら彼女は今なら安全に稀少な薬草等が取れる、と考えた上での行動のようだ。抜け目が無い。
もう少し進むために森の中のほんの少し開けた場所へと出る。
…なんとそこに誰かが横たわっていた。誰だ。わからないが、かなり衰弱している。身体中に出血や歯跡、突進を受けた様子までも見られるが、そこは対したことはない。
問題は水だ。脱水症状を起こしている。しかもかなり重度だ。恐らく中で迷ったのか、それとも何らかの事情があったのか。様子から見るに恐らく後者。何故なら。
耳は尖っており、魔法の強い気配を感じる存在、つまりはエルフの少女であったからだった。
正直竜也は嫌な予感がする。元々森に住む種族などと言えば聞こえは良いが、実際は蛮族に近い可能性がある。
しかも、子供だ。家出、で済めば良いが、こういう場合誘拐と勘違いされれば洒落にもならない。
しかし、流石に放置するにも不味かった。
辺にも一応魔物はいる。しかも、こんな状態は餌にも近く、放置すればいずれ死ぬか喰われるか。
助けない理由が無くなっていた。
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竜也はまず急いで木陰に入らせる。頭にも膝枕をして支えてやり、気道を確保する。支えてやりながらも、膝枕を上手く使って頭を上げて水を飲ませたりしてやるなど次々処置していく。
膝枕をしたのは硬いのは嫌だろうと竜也が思ったからだ。少女なのだから、別になんてことすら無いが。
服は…最初から緩かった。しかも、汗も少ない状況と唇の乾き具合から判断して脱水症状だと特定できたのだ。
因みに森で遭難した時水不足に陥る、なんてのはよくあることだ。
安静にして一時間。ようやく意識を取り戻して、エルフは眼をあける。その眼は白い。アルビノのようだ。
「大丈夫か?」
そんな竜也の言葉。イケメンや美少年が覗き込む状態。そして頭から感じる筋肉質ではあるが石よりもずっと遥かにマシ、いやむしろご褒美ともいえる膝の感触。
「はえっ!?はわっ!?」
エルフの少女は顔を真っ赤にして急いで起き上がる。頬を朱に染めながらも状況が理解できない、という不安の色が見える。
「えっ!?人間!?えっ!?うそ!?なんで!?えっ!?」
「落ち着け。俺は竜也。この少年はネロ。狩人はラスカ。そこにいて見張ってるのがフェンラルだ。お前の名前は?」
「あっあっサタシャと申します。サタシャ・エルドームです。助けて頂きありがとうございます。」
そんな丁寧な言葉で反応が帰ってきた。これが竜也達とエルフの初遭遇だった。
ご覧頂きありがとうございました。エルフって実は悪戯好きの妖精なのだとか。それなのにエルフってなぜ美男美女イメージなのでしょうかね?
またご覧頂ければ幸いです。
ありがとうございました。