第二章 後始末と深慮
はい、たいが~すです。今回は短いです、申し訳ございません。他の作者様達はやはり凄いですね。
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
襲撃者達は壊滅させた。ある程度の首謀者達は生け捕りに、それ以外は逃さず殲滅して。
形勢が決まった後、盗賊達は悲鳴をあげて逃げようとした。
「ひっ、ひいいぃ!」
「なんなんだあのアマと野郎!強すぎる!」
「くそくそ!いつか、いつっ…」
それを竜也が逃す程甘くなど無い。それを瞬間的に把握し、刹那。
かの時の盗賊達と同じ惨殺。全滅の憂き目に合わせたのだ。
脚で大地を掴み、そして押し出す。それにより生まれた速度は音速を遥かに越えて。すれ違い、斬り落とす。一刀の元に。たった一瞬で10を越える命が無くなった。閃光もかくや。
戦闘は、いや、小さな戦争は終わりを告げる。
鬼、いや、羅刹による惨殺と鏖殺によって。
冒険者達も少なからず損害を受けた。死者が13名。応援が8人、ラズーロは5人。相棒の魔獣も一頭が逝き、負傷した者が大半であった。ネロもあらゆる部位に浅いとはいえ刀傷を負っていた。無傷なのはアイシャのみ。アイシャは感情を隠しながらも少々不満気ではあった。強い相手と渡り合う機会が一切無かったからだ。
竜也はその身一つで拿捕14名、討伐19名、計33名という戦力の三分の一もの数を削る大手柄を腹部への槍の掠り傷一つで成し遂げていた。
これはアイシャが討伐17名という数を遥かに越えていたのも相まって、どれだけ竜也が恐ろしい存在であるかは誰もがハッキリと理解していた。
ネロは討伐5名。勿論筆頭の手柄であることには間違いなく、ネロも実力を認められつつあった。
戦闘の後、怪我の手当て、道具の回収、死者の火葬などの様々な後処理が行われた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
侯爵領マストルーユに官憲達が雪崩れ込む。ワース侯爵の罪が完全に立証されたことにより冒険者ギルドが立告。ワース侯爵の身柄を拘束するためだ。
「ワース侯爵!貴殿にはかねてより冒険者ギルドへの不当介入と妨害行為!そして山賊達を先導した国家への反逆罪と犯罪者を匿った共謀罪に殺人容疑!そして不当な奪取による扶助暴行に誘拐に強盗による様々な大罪により身柄を拘束する!大人しくせよ!逆賊が!」
罪状を述べ、ワース侯爵を拘束しようとする官憲達。しかし、まさか立証される筈が無いと高を括っていたワース侯爵は往生際悪く喚く。
「なに!?そんなことをしたという証拠があるというのかね!?名誉毀損で訴えてやる!下民風情が!」
しかし、そんな往生際の悪い喚きは既に通じもしない。
「証拠ならある!目撃証言の犯行に魔法尋問で吐かせた内容が完全に一致した!その他にも冒険者ギルドから送られてきた証拠品が山のようにある!舐めるなよ!」
「な、なんだと!?それは我輩を貶めるための罠だ!そうだ!そうに違いない!ええい、離せ!下民如きが触るな!」
「抵抗しても無駄だ!連れていけ!罪を償ってもらうぞ!」
ワース侯爵は離せ下民がと暴れるが、そんな程度で官憲が引き離す訳も無く、すぐさま確保し拘束。手に縄をかけて無理矢理引っ張っていった。
そして。残った官憲達はすぐさまワース侯爵の館や領地を虱潰しに探索して回る。すると。
出るわ出るわ。無理矢理奴隷にされてしまった男に女。雇っていた影の者達との契約書。それに引き取られたはずにも関わらず真っ当な扱いを全く受けていなかった魔獣に、極めつけには奴隷を嬲り殺しにしてそれを見せつけていた十字架に、麻薬や毒薬の栽培所に、殺された貴族達の宝石や爵位を示す紋章に、果ては公爵暗殺計画書の血判までもが。
汚職に暗殺、強姦に殺害。麻薬に強盗。窃盗や脅迫までもが。あらゆる罪という罪を立証する証拠品のそれらが山のように出てきたのだ。
官憲達はすぐさまそれらを解放したり元に戻したり王に報告したりと奔走することとなった。
そして、その場に居合わせた官憲達は全て唇を噛みしめて歯ぎしりすることにもなった。
こんな屑をいの今まで誅殺できずにいたのか。
と。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
竜也達も奔走することとなった。何故なら竜也が死んだということになっていたことは誤認判定だったことにするために。ネロやその他の負傷した冒険者の治療のために。ワース元侯爵の余罪がまだ無いのかしっかりと調べ上げる為に。そして、奴隷にされていた元冒険者達を再び冒険者に戻したり、ないしは治療するために。その中で見込み無く家族も友人も全て殺され絶望した者は竜也が安楽死させてやったりしたために…
アイシャも久しぶりに駆けずり回っていた。あらゆることに精通している彼女は治療に手助けを通常業務と平行してこなしていたからだ。竜也とアイシャの二人は全くと言って良い程疲れも怪我もしていなかった。その為二人がすべき仕事を片付けて回ったのだ。
その際にワース元侯爵が死刑となり、市中引き回しの上に見せつけて斬首する、という最も重度な刑罰で誅殺されたことも知った。
無傷なフェンラルと行動し、ワース元侯爵が関係を結んでいた暗部やならず者達を鏖殺して回ったりもした。
そして、彼らの元にハンターや市民達がお礼を言いに訪れた。
「竜也様、アイシャ様、本当に、本当にありがとうございました…!目の前であの下衆野郎に妻は犯され息子は殺されてしまった仇を討って頂けた…!なんといってよいか…!」
と、眼前で咽び泣きながら礼を言う商人の男や、
「本当に今回はありがとうな、君達…!あの野郎に奪われた俺の相棒が痩せ細った姿とはいえ、俺の元に戻ってきてくれたんだ…!ありがとう、ありがとう…!」
と、手を握って千切れんばかりに上下に振り回して礼を言うハンターの男に、
「ありがとう、ありがとう…!あなた達のお陰で夫は戻ってきたの…!会えないと思ってずっとアイツを憎んで枕を濡らしていたのに…!本当に…!」
と、とても大きな涙の痕が目元に見られる農家の女が笑顔を見せて礼を言う等。
踏み潰したたった一人は途轍とない悪事を働いていた下衆の極みであったことに気づいた竜也。彼らの感謝を聞きながらも、ある事を心で再確認し、再び更に意思を強めていく竜也。
その先にあるのははたして邪か鬼か。それとも魔王か。
それほどの強い感情を目に湛える。その様にアイシャすら見惚れながらも根源的な恐怖も感じてしまう。恐ろしいまでの何かを決心する竜也。
ネロが起きたのは戦闘の2日後。そして完全に回復したのは18日後。それに合わせて鍛練の質をより高める為に。
竜也は初めてネロと組み手をすることにしたのだった。
ご覧頂きありがとうございました。ああ、タイトルすらも難しいだなんて…作者めにどうか才能を一欠片でも分け与えて頂きたいものです…!
後、明日は諸事情によりお休みさせて頂きます。申し訳ございません。m(_ _)m
またご覧頂ければ幸いです。
ありがとうございました。