第二章 暗愚と勝鬨
はい、たいが~すです。戦闘シーン入ります。…難しいです。作者の凡才では表現しきれたかどうか…
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
打ち合い、殴り合い、衝突し合い、殺し合う。ラズーロの冒険者ギルドと冒険者ギルド本部から送られてきた精鋭戦力と襲撃者達は戦闘していた。
「ちっ、全部情報が漏れていたか。しかし、退くわけにもいかんな。」
「だらぁ!散々やってくれたお返しだ!受け取りやがれ!」
「流石にここまでとは。ワースの奴もここまで大層な戦力を持っていたとはな。ぬんっ!」
怒声。罵声。雄叫び。咆哮。金属音。破壊。
ありとあらゆる喧騒と血と肉の切り裂き音が聞こえてくる。殺し合い。純然たる戦闘。
竜也はそんな中ネロやフェンラル、アイシャと冒険者ギルド本部の精鋭達やラズーロの冒険者と共闘していた。
送られてきた精鋭達は冒険者ギルドの銀級が20人。そして、対人戦闘に使える道具や武器をかなり運んできていた。火薬に剣に大盾に。
それに加えてラズーロの鉄~銀級の冒険者合計34名の竜也達を含めると計57名と8頭の相棒達が襲撃者達を迎え撃った。
対する襲撃者達は89名。傭兵崩れに盗賊紛いがかなりの数を占めていたが、対人戦闘に向いた本職も34名いたわけである。
正直に言えば最早この規模は小さな戦争とも言えた。
数では襲撃者達が、質では迎撃者達が上回っている。しかし、戦争はやはり数である。
竜也の元の世界でも戦争は数だよ、兄貴!などという名言があるくらいなのだから、どちらが不利かは言うまでもない。
しかし、地理と情報では迎撃者達が勝る。
拮抗、持久戦。そうなるのは自明の理とも言えた。
元来そうならないのがそうなったわけは単純明快だ。町、ではなく冒険者ギルドを襲撃者達が襲ったからである。
普通襲撃を知り、数を知るなら罠や内部分裂を仕掛けることも可能だ。いや、むしろしない方がおかしいのである。しかし。
今までワースがしてきたことを鑑みてできなかった。もし、嵌める手筋通りにやらねば、どうとでも言い訳が通ってしまう。下手をすれば証拠そのものとなる襲撃者達がこないという可能性も有り得た。故に罠も仕掛けず、只の情報隠蔽だけしかしなかった、いやできなかったのである。
何より送られてきた冒険者達は全てワースに煮え湯を飲まされていた。ある者は不当に利益を奪われ、ある者は仲間を殺され、ある者は愛人を、夫や妻を犯されたのである。ワースを引っ捕らえてやれるのならなんでもしてやる、できるならば奪われたものを取り返してやる、という復讐者の集まりでもあった。
対する襲撃者達は金や略奪目的で集められた者と襲撃する本人達であった。これはワースがよくやる常套手段。
つまるところ、襲ったのは山賊などのならず者達であって、自分が関与するところの者達ではない、という手段。しかも、襲撃者本人達が山賊達に接触するように命令していたために、山賊に紛れたその雇われた傭兵崩れを捕まえなければ立証することすら不可能であった。しかも、装備も点でばらばら。山賊にも似た装備をし、万が一には自決という死人に口なしと言わんばかりの方法をとっている。
だが。
竜也にはその存在が見抜ける。何せ、顔を、装備を、何より身体の癖を完全に覚えていた。そして、竜也自身が途轍もない実力者。襲撃者達を殺さずに捕らえるなど難しいことでもない。第一竜也は対人戦闘の技術を磨いていたのだ。そこまでの人数しか殺したり相手取ったことが無い相手だから別に強い訳でもなんでも無い。ただ冒険者達よりも対人戦闘の経験が豊富なだけだ。
峰打ち、首絞め、発勁。あらゆる半殺しの無力化をしていく。殺気も出さずに不可視の一撃を。眉間にこめかみに鳩尾に心臓に肝臓に腎臓に股間に喉仏に喉に。
数十名の証拠人を無力化・自害不可にして、襲撃者としては最後に残った一人に合い向かう。
残る襲撃者は一人。山賊達は今も確かに冒険者達と応戦している。その中で目の前にいる存在は少々別のようだ。
相手の中で一番の手練れ。本部から来た冒険者2名をハルバードで切り裂いてこちらに目を向ける。間違いなく相手方の首魁に当たる存在。
「お前も生かしておく訳にはいくまい。死ね。」
ハルバードをこちらに構えて敵首魁は突進してくる。人槍一体。まるで豹の如く身体に槍を添えて突進してくる。
竜也はわざとその槍を掠らせる。無理矢理避けて尚それが精一杯なのだ、と勘違いさせて踏み込ませるために。
血飛沫が僅かに飛ぶ。脇腹をほんの僅かに切り裂いて。そして、逃しなどしない。ここで死ね。と言わんばかりの、実際に言っていたのだが、その槍を身体ごと方向転換し、竜也に全身をバネの如く引き伸ばして右手で突き込んだ。
それを容易く、そして完璧に槍の柄を竜也は掴む。二撃目の予測など簡単だ。わざと誘い込んだそれに敵首魁は見事に釣られた。
身体を切らせ、身体が超え、回転し繰り出す瞬間に合わせて右足の踵を軸に高速で身体を回し、その回転に乗じて槍の柄を受け捌く。
剣道でのすり足からの方向転換に使うアレだ。正確には少し違う。踵を軸にはしない。この足さばきは実戦用に変えられた、方向転換のみに用いた技術だ。
そして、柄を強力に時計回りに回転させる。親指が回転にはね除けられ、そして、敵首魁は槍を思わず手離してしまう。その回転に槍を乗せ、身体も回し、槍を掴みながらもその勢いを全く殺さずに、柄を敵首魁の鳩尾に綺麗に叩き込む。
綺麗に決まったそれは敵首魁の意識を一撃で刈り取った。
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ネロは苦戦していた。何せ、相手にしていたのが山賊の3人組。何より難しいのがコンビネーションアタックとも言うべき連携。
フェンラルもアイシャも竜也もその他冒険者達も全員手が離せない状況下だった。
アイシャはというと、
「女だあぁぁぁ!ひゃはぁ!犯してやるぜぇぇ!」
などと言う下劣極まりなく、下品で下卑た山賊達をその大剣で切り殺している。が、かなり数が多い。
山賊達が美女を犯そうと群がっているのに近い状態で、冒険者達はかなり一方的に攻撃しているのだが、いかんせん襲撃者達が手練れであったためにかなり負傷・死亡者が出ていたのだ。竜也達がいなければ、どのみち難しい状態には代わりなかった。拮抗しているのが精一杯。手を回していられる余裕分が無い。
刀を振るう。未だに武を叩き込まれている最中故に山賊達を簡単に仕留めきることがまだ叶わない。それ故に3人組に翻弄される。
肩に腹に太股に腕に顔に僅かにだがかなりの数の切傷が出来ていた。普通なら怯みかねない怪我。
しかし、ネロは諦めてなどいなかった。むしろ、強くなるために、ただそれだけに。
ネロは意思を更に強く持った。
それが切っ掛けとなったのかはわからない。山賊達もそれぞれが切られてネロより深い傷を負っていた。
ネロは踏み込む。恐れなどを乗り越えて。何より自分自身を。
一閃。二撃。三突き。四斬。五手。次から次に殴り、蹴り、突き、斬り、薙ぎ、吼える。
自分は強いのだ。これよりも更に強くなれるのだ、と。
山賊達は深手の上で死なないためにそれを受ける。
掴み合い、斬り合い、押し込み合い、蹴り合い、せめぎ合う。互角。ならばなにが勝利を決めるのか。
意思だ。
ネロも斬られ殴られ蹴られ突かれて血を流し、肉を切る。だが、それでも尚。
山賊達を斬り伏せた。自分は強い、これよりも尚、更に上なのだ、と言わんばかりに。
3人組の山賊達を倒して、勝鬨をあげるかの如く右手と刀を上げるネロ。そして。
意識を手離したネロであった。
ご覧頂きありがとうございました。難しい言いまわしや、似た言葉を上げまくる…凡才以下ですね申し訳ございませんでしたm(_ _)m。
またご覧頂ければ幸いです。
ありがとうございました。