第二章 鍛練とお伽噺
はい、たいが~すです。日を追うごとに内容を作るのが難しくなっていく…この作者めの才能は皆無です!
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは始まります。
竜也はアイシャのプロポーズを振ったその後…
竜也はネロに稽古をつけていた。あの後、アイシャが、今日はどうすると尋ねてきたので、自身の文字の習得とネロの鍛練をすると言っておいた。そしたらアイシャは訓練の様子を見ておきたいと返し、竜也の近くで訓練を眺めている。
その稽古にはネロだけでなく、フェンラルも参加?している。どちらかというと、遊んでいるように見えなくもないが…走り込みや実践訓練をしているのを見て真似をしている。
鍛練する本人であるネロは、木刀を持ったままで訓練をする。あらゆる状況でも剣を振れるようにするためだ。かくいう竜也も刀を持ったままで様々なことができる。後は構えと型をひたすら練習させる。これは経験を積むしかない。長い目で見た長期訓練とも言える。下手に実戦をやらせる訳にもいかないだろう。魔物相手となると別かもしれないが、それでも下地があるのと無いのと差は大きい。
教える合間に竜也は片手に木刀を片手に本を持って、勉強をする。文字を理解できていないままだと、これからにも支障が出かねない。銀級なら尚の事だろう。故に覚えている最中だ。のだが、その様子をアイシャが見て
「本当にそれで覚えるのか?竜也。…少し暗記テストをさせたら9割正解した程に出来ていたが。私が着きっきりで教える機会が無くなるでは無いか。」
と、驚愕とも呆れともつかないことを言っている。ちゃっかりした欲望も漏れていたが。
因みにギルドの中庭でやっているわけなので、自然と冒険者達に目立つ。ふと見ればフォーナムや他にもちらほらといる。よくよく見れば最初に会った冒険者達であるバタフライもいるようだ。
アイシャから聞いたのだが、現在ラズーロの町の最上級は銀級で、俺を含めて9人いるそうだ。そんな実力者の鍛練からは学ぶことがあると思ったのだろうか。冒険者達は依頼を受けずに鍛練の様子を詳しく見ている。
とはいえ、竜也の訓練は基礎を徹底して詰めているのと変わらない。それが如何にどのような状況でも発揮できるかに重きを置いた訓練故に、熟練者には参考にならないだろう。なら、熟練者達は何を見ているのか?
竜也の姿である。木刀を手足の様に捌き扱う。構えは本を持ちその内容を覚えているのにも関わらず一切崩れない。体軸が一切揺るがず隙も一切ない。無意識なのに完全だ。それはどれほど鍛練を積めば至れるのかすらわからない程の武の境地。
「やはり、格好いいだけじゃなかったわね。あんなレベルは何十年も積まないとまず無理よ。」
「本当に…恐るべし、ヒノモトね。あそこにいる武士と呼ばれる人達はあれが平均レベルなのかしら。」
遠くにいるバタフライから聞き逃せない単語が出てくる。武士がいるのか。それだけにあの店主の唐揚げ定食と相まって日本の文化がある可能性は濃厚だろう。しかし、バタフライはその口振りから詳しいことは知りえない様子だ。その詳細はやはりまだ保留にするしかない。
見ればネロは今走り込みを必死にしている。その横をいとも涼しげにフェンラルが並んで走っている。それだけならネロが体力が無いように聞こえるが、実際は全然違う。スキルと相まってアスリートの全力疾走並の速度で持久走をしているのだ。平然とついてくるフェンラルは流石狼と言うべきだろう。
それにしても、貧弱な身体付きのネロがこれ程の速度で持久走を行えるのだから、この世界の平均身体能力は相当なものだと言えるだろう。故に鍛練も修正が必須になってくる可能性が高い。なにせ、身体的な差が大きいのだから、身体能力に限って言えばもっと効率よく鍛えることも可能だろうからだ。
「ぜぇっ、はぁっ、まだまだです!」
と言いながら、ネロは想定を遥かに超えた速度で走っている。こうなってくると、自分の力とネロの力を再度確認しておく必要性が高い。勿論ある程度はわかるが、全力を把握しておきたい。
「ネロ。ノルマは出来た。だから少し変更する。次は持久走ではなく、全力疾走を見てみたい。俺もする、本気で走ってみよう。そら、いくぞ。」
本の半分のところにあるページまでの内容を全て覚えて閉じ、ネロに話し掛ける。ネロも頷いて返す。近くにいるアイシャに本を預けて。
大地を掴み、地を蹴り、推進力を生み出し、本気で風となる。その速度は盗賊達を討伐するときに出した速度を優に上回り、音速を容易く突破し…
コンマ一秒にも満たない刹那でギルドの庭の端まで到達する。余剰速度は無理矢理力で抑えきる。ほんの数秒間遅れてネロも到達した。
その様子にアイシャは驚いていなかったが、他の冒険者達は少し驚いていた。やはり、肉体強化系統のスキル持ちならばこれ位はできるのだろう。
竜也とネロは元の位置にこの世界の速度の駆け足で戻る。
「ふむ、やはり竜也は素晴らしい。スキルの恩恵を既に十二分に活かしている。この様子ならかつて存在していた勇者にも匹敵する実力に登り詰めることも可能ではないか?」
アイシャがよくある、お伽噺の様な存在の事を口にした。竜也はそのお伽噺に興味が湧く。
「勇者?そんな存在がいたのか。少しその勇者とやらを教えて欲しい。構わないか?」
アイシャは豊満な胸を張ってお伽噺を始める。
「ふむ、構わん。むしろどんどん頼るといい。…勇者はかつて魔王と呼ばれる災厄を倒した存在だ。お伽噺と言いたいかもしれないが、厳然たる事実としてどちらも居たらしい。30年以上も前の話でな。武を修め、魔法に精通し、スキルに恵まれた若き天才が魔人を従える王を討伐したのだ、という話なのだが、勇者は魔王を討ち取った後に魔王が最後にかけた呪いで死んだと言われている。」
お伽噺ならではの都合が良いのか悪いのかわからない展開に竜也は眉をひそめる。
「呪いを最後にかけられて死ぬ…?自身を生贄にした呪いか?…しかし、流石に話が出来すぎている気がしないでも無いが…まあ、自身とは何の関係も無いな。」
「伝承に伝わる存在程に強くなれるという期待を込めただけだよ。とはいえ、具体的な事は伝わっておらん。私が産まれてもいなかった時の事柄だったからな。」
都合の良い?展開と知らされない詳細。もし、この話が事実だとするならば。
「具体的な事は伝わっていない…存在自体は確定していると言うのなら、それは明らかに隠蔽でしかないな。確かに英雄豪傑は乱世には必須かもしれないが、終われば邪魔だ。良い治世には必要ないと見られたか、敵と見做されたか…よくある政治的手法ではあるな。」
「かもしれんな。とはいえ、結局は関係無いの一言に尽きるな。勇者とは結果を残した者が呼ばれる称号だ。何かしら通ずるものは無いだろう。それでは励んでくれ二人とも。私も竜也の心を落とす為に励もう。」
アイシャは色気と茶目っ気たっぷりに言っていることに竜也は苦笑いする。
しかし、勇者か。自分とは正反対の存在だな。もし、勇者が仮にいたのなら、ぶつかり合う存在になっていた可能性もあったな。
などと考えながら再びネロの鍛練監修と文字理解の為に本を開いて内容を覚える事を平行して同時に行う竜也であった。
ご覧頂きありがとうございました。お伽噺ってたくさんありましたね。現実には有り得ないお話、皆様はどのようなお話が好きなのでしょうか?作者はあまり見て無いのでございません…
またお楽しみ頂ければ幸いです。
ありがとうございました。