第二章 猪狩りと第二の相棒
はい、たいが~すです。今回は猪狩りです。牡丹っていいですよね。美味しそうです。しかし、自分めはあんまり詳しく覚えておりません。なにせ、鳥頭ですので…
拙作ですがお楽しみ頂ければ幸いです。
それでは、始まります。
竜也は牙狼の子供を手懐けたのだが、こいつは本当に愛嬌がある。なにせ、ねだるようにこちらを向いてその刺々しく大きな尾をぶんぶんと嬉しそうに振っている。遊んで!という声が聞こえそうなくらいにだ。それをフォーナム達は少し怖がっていた。なので、気になって評価を聞いてみることにしたのだが…
「ランドウルフってそんなに襲い掛かってはこないんですが…襲い掛かられたならば死を覚悟しろ、と言われるくらいには危険ですよ。」
「例え子供でもランドウルフは手を出しちゃいけないんすよ。まず勝てないっす。そして、可愛いというよりかっこいい、じゃないっすか?」
「…普通あそこはお互いゆっくり離れる。関わらないのが正解。」
などと、先程のビッグボアとは正反対の答えが帰ってきた。竜也はそこからやはり、かなり感覚が世間一般とズレていることをハッキリと理解できた。強いと思っていた魔物はボーナスモンスターで、弱く可愛いと思っていた魔物は裏ボスという。
そんな、ギャップをひしひしと竜也は感じつつもランドウルフを見る。そういえば、名付けを忘れていたな。…そうだな。なら、
「そうだ、こいつの名前はフェンラルとするか。魔狼フェンリルと一字違いってことでな。」
「フェンラルですか。よろしくお願いしますね、フェンラル。」
ネロはすぐに仲間と認識を改めてランドウルフ改めフェンラルに挨拶する。それに続いてフォーナム達も挨拶をする。仲間ができて嬉しいのかフェンラルは少し高く吼える。
…恐らくこいつは独り子なのかもしれない。それにしてもフェンリルからもじるのはやり過ぎたかもしれんな。まあ、いいか。
竜也はそんなことを考えるもすぐに切り替える。フェンラルを仲間にしたのはいいが、元の目的の依頼が何も達成できていないからだ。
フェンラルをパーティーメンバーに加えて、森の中を進んでいく。勿論、前衛が後衛を庇いながらの状態を維持し続けるのを意識して。フェンラルもそれを察したのかすぐに先頭に立ち索敵しながら進んでいく。
そして、森の中で少し開けたところに出る前に全員が立ち止まり、岩や倒木などの障害物に身を隠しながら場所を見る。
そこには、猪の群れが居た。しかも、5~6頭程のものではない、20頭以上の巨大な群れ。中には瓜坊すら居る。瓜坊は対象ではないために逃すことにはなるだろうが。確かにこれだけ猪がいたら、採集の邪魔にもなるだろう。それどころか、採集する目的のものまで喰い尽くされてもおかしくはない。これは間引いてやる必要性が高い。
先ず牽制し、猪がこちらに突進してくるように仕向けるためにトリンドルが矢を放つ。木の弓矢だが、引き絞られて射られたそれは、的確にそして鋭く最奥の猪の目と鼻の先に突き刺さる。相当に難しい、ほんの少しの落下計算と精密射撃を混ぜた一矢をトリンドルは成功させる。それに猪達は驚き、こちらへと鬼気迫る勢いで突進してくる。
そして猪達はその突進のままにドンモがあらかじめ掘っておいた即興の落とし穴に落ちていく。即興というところがミソだ。瓜坊達はそんなに速く突進できない。故に落とし穴が猪で埋まるまでは瓜坊達が辿り着くことは無いのだ。浅くは無いが即興の為に深くもない落とし穴であるからこそ、生態系を完全に破壊せずに済む、というわけだ。
勿論、欠点がある。猪達はそんな即興程度の簡単な落とし穴では猪自身の膂力で抜け出してしまう。だが、落として捕らえることが目的ではない。駆除が目的なのだから、突進の勢いが殺されてもたついている時間を作り出すことこそが目的だ。猪達自身がお互いに突進し合ってすらいる。
そんなところに、タロスがロングソードを、ペルーナムが槍を振るいながら
「やあああああっ!」
「せやあああああっ!」
掛け声と共に猪達を攻撃していく。
斬撃。突き。斬り払い。袈裟斬り。斬り上げ。斬り下ろし。斬りかかり。シールドバッシュ。
突き。薙ぎ払い。三段突き。足払い。薙ぎ下ろし。突き上げ。突き落とし。突進突き。
見る見る内に猪達は狩られてゆく。猪達は鮮血を巻き上げ、骨を折り、悲鳴をあげて、そして息絶える。
竜也は一刀両断。ネロはタロスとペルーナムを見習い、我武者羅に。フェンラルは恐ろしい速度で喉元を噛み千切ったり、爪で切断。トリンドルは眉間に矢を射込む。
「雨槍!」
サヘルは水魔法で。ドンモは短刀で喉元や心臓を一突きに。そして、狩りは1分程度で終了を迎えた。
「洗浄!」
すぐにサヘルは魔法を詠唱し、身体や装備に付いた血を洗い流す。血の匂いを嗅ぎ付けて魔物が寄ってくるのを防ぎ、危険度を下げるためだ。
瓜坊達は惨劇を見て、逆側に逃げたようだった。ドンモは駆除の証拠として猪の牙を集めている。タロスとペルーナムは周りを警戒し、見張っている。魔物が現れたら対応できるように動いているのだ。ネロも竜也も周りを見張る。フェンラルは狩った猪を一匹頂戴して嬉しそうに旨そうに食べている。
剥ぎ取りの最中終始魔物の出現を警戒していたが、魔物は一匹たりとも現れなかった。それでふと竜也はフェンラルの呑気な様子を見てあることに気づき、それを皆に知らせる。
「フェンラルは確か食物連鎖の最上位に位置していたな。もしかしてそれを畏れて魔物が寄ってこないのではないか?」
確かビッグボアは死んだとしても低級の魔物は寄ってこない。それほどに厳格な食物連鎖があるのだ。今はフェンラルがいるから、猪の肉を喰いたくても喰いにこれないのだろう。周りの気配が遠ざかっている感じがするのだ。それにドンモも気づいて
「かなり、特別な状況ですね…よし、なら猪を持って帰りましょうか。ここの猪は旨いと評判なんですよ。なにせ豊かな森ですからね。とはいえ、本来は危険度に見合っていなかったのですが…今日は本当にツイてますね。」
と、言いながらテキパキと解体を進める。それを見て、タロスとペルーナムも解体に加わり、血抜きをすぐにし終えて解体していく。そして、計23頭の解体が終わり、ドンモとサヘルの収納袋にテキパキと仕舞われていく。サヘルが洗浄した後でしっかりと対象の駆除の証を確認する。しっかりと数量があることが確認できた。ホクホク顔のフォーナム達を見つつ、目的も達成したためにこれ以上長居する必要も無いので、また隊形を維持して警戒しながら引き上げていく。しかしフェンラルがいるからか、魔物との遭遇も無しに森を抜けることができた。
そして、森からラズーロの町まで歩いて帰る。その最中も特になにもなかった。あったとすれば、タロスが豪快に腹を鳴らし、タハハと照れ臭そうに笑っていたことぐらいだ。
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ラズーロの町に戻って、早速ギルドに報告に行く。町に入ってから、チラチラとフェンラルを見ている者が多数見受けられたが当然だろう。
ギルド内に入ると午後3時程。朝飯と昼飯は移動の合間に携帯食を歩いて食べてはいたのだが、やはり、腹に入れるのを目的にしていたせいか、竜也とフェンラル以外は腹を鳴らすという相当に間抜けな状態を作り出していた。
とはいえ、報告はしっかりしなければならないのでギルド職員に取り次ぐ。ギルド職員はフェンラルの方を見て、驚きを隠せないままに、アイシャを呼んで来た。アイシャは報告を聞く前にこちらのフェンラルを見て、少し驚いているようだ。そして、恐る恐る聞いてきた。
「…うむ、私の見間違えで無ければ幼体の牙狼が君達の後ろについてきているわけなのだが…どういうことか説明してくれるな?」
「ああ、フェンラルのことか。ビッグボアの肉をやったら喜んでついてきた。猪狩りも手伝ってくれた。しかもこいつのお陰で猪肉まで手に入ってな。一期一会とはやはりいいものだな。」
その竜也のあっけらかんとした答えにアイシャはほんの一瞬間だけ完全に呆けた。そして、徐々に笑いだす。
「…フフフフフ、ハハハハハ!まさか牙狼を懐柔してくるとは思わなかったよ!君は私が冒険者人生を諦める切っ掛けになった魔物を初めての依頼で懐柔するとはなぁ!面白すぎる!気に入った!ハハハハハ!」
アイシャは腹を抱えて膝まで叩いて笑っている。だが、それほどにこの魔物は、フェンラルは危険だったようだ。まあ、もう竜也の第二の相棒なのだが。
そして、依頼の報告で猪駆除の証を引き渡し、それぞれが2金貨30銀貨を受け取った。今回は大成功だなと思いつつ竜也はフェンラルを見る。これから頼りになるだろう、相棒を見つけられたことに最上級の嬉しさを感じる竜也だった。
ご覧頂きありがとうございました。因みにフェンラルの名付けなのですが実はフェンリルからもじったのではなく、自分めがモンハン初プレイの3rdで最初にお供にしたオトモの名前でございます。4も筆頭オトモの名前をフェンラルにしたりと何かと思い入れのある名前です。
またお楽しみ頂ければ幸いです。
ありがとうございました。