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 それは、いつもと同じ平日のお昼過ぎの喫茶happy(ハッピー)



 −−ガラガラガラ−−



 「(ウミ)ちゃーん!! 今日のオススメはー!?」



 ドアを開けると同時に本日のオススメを聞きながら入って来た男の人。


 年は60代半ばで、この店の御近所さんで常連客の一人だ。



 「いらっしゃい、しげさん。こんにちは」



 笑顔で挨拶をすると孫を見る様な優しい笑顔で挨拶が返ってくる。


 ここに来る人のほとんどは、ここで働いている看板娘の柚木(ユズキ)海こと私が目当て!! けっして自惚れじゃないよ!?


 「海ちゃんの笑顔を見ると元気をもらえる!!」と常連さんは言ってくれるし実際に連日、通って来てくれるから。うん。やっぱ、これは自惚れじゃないハズだ。


 ちなみに私も、たくさん笑顔と元気をもらってます。



 「今日のオススメは

 「水!!」」



 そして、それに答えたのは155cmの色白で肩より少し長い黒髪はポニーテールで今は一つに纏めている今年24歳の私。


 ----ではなくて190cm近くある大男の柚木大輔(ダイスケ)さん39歳。


 寡黙な上、無表情で存在感バリバリの見た目は大きくて、まるで熊みたいで少し恐い印象だけど実際は優しい、この店のマスター。


 名字は同じだけど夫婦じゃないし血の繋がりもありません。


 笑い声が聞こえてくるけれど、いつもの事なので何事もなかったかのように続を言う。



 「日替わりAがサバ味噌でBがしょうが焼きですよー」



 「じゃあ海ちゃんの愛情たっぷりのお水といつもの一つー!」



 「分かりました。いつものですね!? 愛情たっぷりのA一つー」



 前半は、しげさんに後半は嫌がると分かっていても大輔さんに言いながら、お水とオシボリを出したりしていると



 「い つ も のA一つ!!」



 「いつも」が特に強調された不機嫌そうな声が返ってくる。


 声の主は、もちろん大輔さんだ。


 すると更なる笑い声が聞こえてくる。


 実は数分前にも全く同じ会話をしていたのだが……。


 違うのは日替わりがAかBだけである。


 それらは、ここに来る常連さん達の楽しみの一つでもある。


 だからか、そんな遣り取りを気にする事なく手を動かす大輔さん。集中しないとダメだから……。


 実は大輔さんは【happy】のマスターをしているが料理の方の才能が全くと言っていいほどなかった。


 ちなみに飲料----特にコーヒーは絶品----はファンがいるほどだ。私も、その一人だよ。


 家族から禁止令が出ていたほどだから相当アレだったのだろうと簡単に想像できる。まあ、したくないけど……。


 だけど今は私が下ごしらえをした物を出せるまでになった。それまでの道のりは、いろいろと大変だったなぁ〜。


 それなのに「何故!? 経営しているのか?」と聞いた事があった。


 ----と言うか自慢気に話してくれた。


 答えは「愛する奥さん----桃花(モモカ)さん----の夢!!」だったからとの事。今でもラブラブな二人。


 それに元々この土地は大輔さんの父親----恭輔(キョウスケ)さん----の物で当時していたお店----お寿司屋さん----を辞める予定だったのを買い取ったらしい。


 それで、あっさり一流の会社を辞めたそうだ。誰も反対しなかったのだろうか?


 ちなみに恭輔さんは奥さんの未来(ミク)さんと【happy】の近くに施設【clover(クローバー)】を運営している。


 こちらは未来さんの夢だったそうだ。それに恭輔さんも(ミク)さんに甘いからね。


 実は未来さんは施設で育ったそうで場所は違うけど【clover】を引き継いだそうだ。何かしら恩返しがしたかったみたい。


 そんなこんなで今日も喫茶happyは通常営業中です。


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