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unKnown  作者: 縁側 熊男
序章 始まりの出会い
2/8

2 関わるべきではない世界

訳が分からなかった。


目の前にいるこの人が何を言っているのか全く理解できなかった。全く聞いたことのない自己紹介だった。まだ、目が覚めていないのだろうか。

いや、夢だと思うのはやめよう。現実だと思いたくないものはすでに見てる。頭も冴えてきている、と思う。

さっさと解読しよう。


えーっと、

”アノン殲滅部隊”とか言っているのと、あの化け物に襲い掛かっていたのは無関係ではないだろう。となると、あの化け物は”アノン”というのか。で、あの人はあの化け物を倒そうとしているのか。


……。


倒す!!?

いやいやいや、なにをしようとしているんだ”白銀の騎士団”とやらは!


あっ、私は襲われただけであの化け物を知らない。何か策でもあるのか。それに、今の発想は飛躍しすぎだな。 脅して追い払うっていう可能性もある。……。確かめるか。


興味がわいた。


 そうして、私は頭の中から現実に戻る。目の前には先ほどの女性が同じ体制でいた。

「ええっと…… 自己紹介がおかしかったか?」

そう反応するのが普通だろう。全く反応せず、思考していたのだから。このまま15分ぐらい動かなかったことがあると、あいつから聞いたことがあったか……。

「いえ、ありがとうございます あなたが助けてくれたんですよね」

「一応そうなるが、やり方を教えてくれた人は違う 私は… 情けないがそれに従っただけだ」

そのままではなかったものの、大体は考えた通りの返事だった。ここで自分の身体を見直してみると……、確かに。包帯の巻き方がかなり下手だった。気づかれないように巻きなおす。

「礼は別に言わなくてもいい とりあえず、今の状況を報告しておこう」そう言って彼女は時計を見せてきた。日付と現在時刻が映っているデジタル時計だ。見てみる。


19:35 4/16 

はぁ!?  えっ ちょっ はぁ!?

声にでなかったのは幸いだったが、私は飛び上がるように身体を起こした。


時刻訂正 おそらくあの後➡4月16日 午後7時35分  あれから2日後

ということになる。


つまり、私は2日(・・)も寝込んでいたのだ・・・。


 急に起き上がったせいで引いてきた痛みがぶり返す。それでも、2日も寝込んだというショックのほうが強い。学校は―――幸いにも入学式で休みだ。変な学校のスタイルが初めて役に立ったな……。あそこは、始業式をやってから入学式をするのだ。謎以外の何物でもない。

「まぁ、そういう反応か 頭はやられてなくてよかったな」

そう言って彼女は時計を置き、私の前に椅子を持ってきた。

驚いて少し本題を忘れていた。とりあえずいろいろ聞かないと。

「あの 少し聞いていいですか」

がっつかない。あくまで軽く聞いてみる。

「聞かなくても話すから寝とけ 包帯とれてきてるぞ」

(面倒臭い会話は無しですみそうだ。あと、包帯は誰のせいだよ。)

そう思いつつ包帯を再度巻きなおす。しかし、右手に巻いている包帯だけはやけに固い気がする。

「私が助けたからには、お前にある程度説明する義務がある 耳は大丈夫だな」

さっき寝とけと言われたが、今は包帯の巻き直しに忙しい。慣れてきたとはいえやはり身体は痛く、動きは鈍い。

「じゃあ話すからな 面倒だから一回だけだぞ」

(だから、こっちは忙しいんだって……。)

そう思う私に気づかず、彼女は話をする―――


 今から約70年前、首都東京のはずれに突然、謎の人型生物が現れた。その生物は無作為に破壊を行い、数十万人の死傷者を出したらしい。誰もその化け物を止めることはできなかったという。”物を発火させたり”、”重力の向きを変えたり”、”ビルを一瞬で崩したり”と、めちゃくちゃなことを動くことなく(・・・・・・)できたらしいが。その被害が東京だけでなく日本、あるいは世界にまで及ぶと考えた世界連合軍は、隣国から『核爆弾』という強力な爆弾をそこに落としたんだという。しかも、日本政府から(・・・・・・)頼んだらしい……。 

 「そこは後に『墓場』と呼ばれるようになったらしいが――――」

 「墓場⁉ それって、都市伝説じゃ……」

 「話を逸らすな めんどくさいから」

 『墓場』:神が人類を滅ぼすため、多くの人間が集まる場所に使者を送り大量虐殺したという地 その地には今でもたくさんの死体が山のように積み上がっているというが、そのような場所はいまだに見つかっていない だが、世界のどこかに存在する  という信憑性のかけらもない都市伝説。

 そんなものが存在するとは夢には思っていなかった。というか、存在したとしても、この日本に存在していいものではないはずだった。

 『核爆弾』は周囲にいた人間をも巻き込み、その生物を殺した。その遺体を回収した日本政府は、その細胞を調べ、こいつは何者なのか、なぜあんなことができたのかだとか、いろいろ調べたのだが、結果はわからずじまいだったと世界に報じられた。しかし、日本は他国に遺体を渡すことを頑なに拒んだ。遺体を使ってあることをしようとしていたからだ。


人類の夢の一つ ”死んだ人を生き返らせる”ていうな………


 詳しいことは言えないしそもそも知らねぇが、そんなことを裏で政府はやっていたのさ。そして20年前、偶然生み出してしまってしまったのが”あいつら”だ。私たちはあれを”正体不明、わからない”の”unknown”からとって”アノン”って呼んでいる。あいつらはまず、私たちみたいなやつでないと倒せない。日本(ここ)は平和だからな。普通に出くわして、逃げれるあるいは、勝てる奴はいないとみていい。


 「まっ、必要っぽいことは言ったし、これだけ言えばいいだろう」彼女は背もたれにもたれる。疲れるほど長い話はしていないはずだが。

 「あと、この話は結構な機密事項だからな 一般人に話すなよ」私も一般人なのだが……

 しかし、自分の”興味範囲内”の話であった。かなり面白い現象である。死者の蘇生に興味はないが、そういうことをできるかもしれないと考えた人間の発想が面白い。ところでだが、肝心の『白銀の騎士団』たるものについては一切語られていなかった。聞くか。

 「あなたたちは一体………」何者ですかという前に彼女は掌をこちらに向けた。「言うのが面倒だから省略した それに、そんなに急かさなくても後でわかる」 ……。 ”後で”?

 「で、こっからが本題だが……」彼女は立ち上がり、私の元にきて右手をつかみあげる。痛みはあまりなかった。「お前はそのアノンに右手をやられた まだ言ってなかったがこれはかなりひどいことなんだぞ」そう言いながら右手の包帯をとく。その右手には、大きくえぐれたような傷と……。



その傷口の周りには、何かがいた。 小さなミミズのようなものがうねうねしながら傷口の中で動いている。



 何もすることができなかった。本日二度目のパニックであった。我に返ったころには、右手の包帯はきつく巻かれていた。そして私は、また椅子に戻っていく彼女を呆然と目で追っている。右手は動かない。


 「みたところショックっぽいが、それはあの怪物の”細胞”だ」

 は?


 「それを取り除くのは現時点で不可能だ 今はそこでうねうねしてるだけだが、直に体内に入り内側からお前を侵食する まぁ、死ぬな」

こんな状況でも彼女の声は私に低く響く。私はまだ混乱から抜け出せない。

 「そこで(・・・)だ…… お前をうち(・・)に連れてく 生き残る可能性は確実に上がる」

その話に納得はできる。納得だけは……。彼女に言っていることは理解できる。しかし、私の頭は完全に凍結していたのだ。静かなパニック状態。身体は動かそうとすらできない。

 「無理やり連れて行くからな 断る権利はねぇぞ じゃ、私は疲れたし風呂借りるな 一人暮らし(・・・・・)でもシャワーぐらいはあるだろう」彼女は椅子から立ち上がり、リビングから出ていく。


 私が息をしたのはその10秒後だった。 大量の空気を吸い込む音がした。


 状況は呑み込めた。いきなり色々なことが一度に流れ込んできたにしてはきちんと理解できている。他人ごととしては(・・・・・・・・)。認識できないのはそれが自分の身に起こっていることだ。

 右腕の包帯を外す。やはり錯覚ではない。得体のしれない”何か”が傷口の上で動いている。この”何か”がどんなものかはさっき聞いた。とりあえずこのままだと死ぬらしい。どうすればいいかもさっき聞いた。とりあえず彼女についていけばいい。ただそれだけのこと。

 しかし、あくまでそれは他人ごとならばである。私にそんなことが起きているということに———何というか―――その———衝撃を受けたというのか……。

 とにかく、私の世界は大きく変わるのだ。


 ピンポーン


 そういう音がした。誰か来たな。そう思って私は立ち上がる。誰が来るかなんてのは考えるまでもない。問題は俺が消えるという事実をどう伝えるかだ……。いや、伝えるべきではないかも知れない。このまま何も言わずに去ってしまおうか。いや、あいつを一人で放置するのは……。

 そんなことを考えながら、私は玄関に立ち、ドアを開ける……。


 「おっ、龍牙 元気だったか? 全く連絡つかないから、少し心配したぞ!」



to be continued……


 



おまけ 峯川龍牙が状況的にツッコめなかったこと


「この右手の治療って、包帯巻いただけなんだな……」

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