風邪薬
息抜きに時雪。
私はバカだ。
バカだから風邪を引いてても学校にきてしまうのだ。
熱はある、でも今日は帰りに時人とスタバに行くから休みたくなんかない!!!
「私は元気…私は元気…私は元気…」
「アレ?雪おはよ〜!」
振り向くとカナがいた。
やばい、ばれないようにしなきゃ。
「おはよ、カナ。」
「雪、なんか体調悪そうだけど大丈夫?」
ばれたあああああ!!!
冷や汗がたらたらと流れ出す。
ただでさえなんとなく寒いというのに。
「…そ、そうかなあ?」
「保健室いったら?」
「いや、別に…あ、寝不足なのかも、うん!」
やばい、立ってるだけでクラクラする。
せめて人前で倒れたくはない。
「アレ?雪ちゃんだ、おはよう!」
聞き慣れた声。
なんて、今日は最悪な日だ。
「と、時人…」
誤魔化せない気がする。
「おはよう雪ちゃん、珍しいね?朝に会えるなんて。」
時人はすごく無邪気に笑う。
行くか悩んで出る時間が遅くなったのが理由だ。
「うん、おはよう!あ、今日放課後楽しみにしてるから!」
「うん、僕も楽しみ!」
カナは何か察したかのような顔をする。
ごめん、今日だけは…!
「私課題やらなきゃいけないから行くね〜」
そして気遣いを忘れない…
二人きりになってしまった。
カナと一緒に行けばよかった!
でも、時人とせっかく会えたから…
「じゃあ、私も行くね…」
「雪ちゃん待って。」
手を掴まれる。
唐突で心臓が跳ね上がる。
「どうしたの…?」
「雪ちゃんが行くのはこっちじゃない?」
ニコリと笑う。
指差したのは二年の教室。
いやいや、…いやいや!
私はすぐに気づいた。
二年の教室の方には、保健室がある!!
気づいてる、時人は気付いてる!!
「なんでよ、はなして。」
「ダメ…スタバはいつでも行けるでしょ…」
今日じゃないと嫌だ。
今日が良いんだ。
「いつでも行けたって、今日がいいの!」
「雪ちゃんと明日会えなくなる方が僕は嫌だよ。」
抵抗する手が止まる。
それと同時に熱が上がってきた。
「う、うぐぅ…」
「歩ける?相当辛いんでしょ?一緒に行こう。」
そのまま腰へと手をまわされた。
ぴったりとくっつく距離に尚更ドキドキする。
「時人、歩ける、自分で歩けるから…っ」
だんだん足に力が入らなくなってきた。
明らかにこれの原因は時人と近づいてるからだろう。
「だ、ダメでしょ、なんならおんぶ「それは無理!」
こんな学校にいるのにそんな恥ずかしいことなんてできない。
「じゃあ、あともうちょっとだからがんばって。」
いつもより何倍も添える手があたたかく感じた。
「先生お邪魔虫〜」
おじゃましますじゃないの…
「アレ?いない。」
保健室に入るも誰もいない。
「朝だし職員会議に行ってるんじゃ…」
時人は振り向きしまったという顔をし始める。
気づけよバカ。
「あ、と、とりあえずベッド寝て…あ、熱、熱はからなきゃ!」
「時人、落ち着こう。」
「落ち着けない!」
体温計を探しているのか、そこらへんをオロオロ見渡してる。
ちなみに体温計は私の目の前にある。
なんか、見てるのが可愛い。
「あああこっちかよ!!!」
一つとり私の方へとくる。
「はい、雪ちゃんボタン外して?」
「自分でできるわ。」
言うとは思ってたけど。
イタズラに手渡される前にボタンを開ける。
「わっ!本気で言ってないから!!」
そう言いながら後ずさり始める。
なんだ、今日はえらく可愛く感じるな。
「ほら、さして…」
「何処に!?」
まんざらでもない様子だ。
私は時人の手を掴みわきの方へ移動させた。
「ちょ、ちょっと、雪ちゃん、」
自然と距離が近くなる。
…
「ご、ごめん!」
手をはなしわきに体温計を自分でさす。
熱があって頭がおかしいのかもしれない。
「僕先生見てくるね?雪ちゃんのこと話したら来てくれるかもしれないし。」
「あっ…」
行っちゃうんだろうか。
…放課後一緒に行けないぶん、いたいのに。
「…」
時人は少し顔を染めながら隣に座って来た。
「…先生が来るまで、ね?」
素直に嬉しい。
学校で、朝に時人といれるのは初めてだ。
ピピッと音がなり、体温がはかり終わった。
…
「38°…」
「雪ちゃん、寝なきゃ。」
肩を掴まれそのまま押し倒される。
そうゆう意味はないとわかっててもドキドキしてしまう。
「っ…ズルイね、今の時間…」
時人はそのままベッドにのってくる。
「…え?」
待って、今ここでするの?
先生がきちゃうかもしれないのに??
「病人にはしないよ…」
そっとキスをされた。
「っぁ…」
どんどん体が熱くなっていく。
もっと欲しい。
頬に手を添えたとこで、チャイムが鳴った。
「…先生来ちゃうね。」
私でもわかるくらい恥ずかしそうにベッドからおりはじめる。
「熱、二度くらい上がってそう…」
時人はそのままベッドに座る。
先生がきても怪しまれないといいなあ。
「明日治ったらスタバ行こうね。」
頭を撫でられる。
気持ちいい。
「うん、治すね。」
「風邪が治る薬あげる。」
首に手を添えられそっと口が重なる。
力の抜けた舌がそのまま口の中へと入ってきた。
…ガチャッとドアがあく音が聞こえる。
口が離された。
時人がカーテンをよけ先生の方へといった。
「じゃ、雪ちゃんお大事に!!」
「うん、ありがと。」
そう言うと時人はさっさと帰ってしまった。
先生が何か言ってるのが全く耳に入ってこない。
「……死ぬ。」
真っ赤になってるのは風邪のせいって言い訳つくだろうか。
…いつもより特別なひと時となった。




