お掃除♪
ウィルがDランククエストを受ける話です。まだ、続くけど…。
「さて、どうしようかな」
やっぱり、村とは違い人が多い。冒険者が装備している武器を見ていても飽きない。
でも、それより冒険者ギルドだ。お金貯めないと…。
俺は、ギルドまで歩き扉を開けた。
すると、一気に視線がこっちに向いた。いつもながらフードをしっかり被っているので顔は見られてないだろう。
俺は、視線を無視して依頼板の前へ向かった。
ふむふむ。いろいろ、有るんだな。それじゃあ、これいしようかな。
「すみません」
「はい。何でしょう?」
「この依頼を受けたいのですが」
「これは!…すみません、ランクは?」
「Fですけど」
「!……解りました。ギルドカードを」
「?」
俺は何故そんな事聞くのか疑問に感じながら、依頼を受けた。
受けた依頼は、掃除の手伝いのはずだが……。もう一度、確認すると、
依頼名:掃除の手伝い
ランク:D
内容:家や庭の掃除の手伝い。
襲ってくる魔物討伐。
ブルウルフ、一角モグラ、ぺトラ等など。
報酬:銀貨一枚。ぺトラが出た場合、銀貨五枚。
注意:ぺトラは、基本的に出現しません。
出現した場合、追い払うだけで結構ですが、ランクはAとなります。
「なっ!?」
なんだってええぇぇぇ!!?? ぺトラって魔物どんだけ強いんだよ! 追い払うのでAランクなんて! 討伐の場合、Sか? Sランクなのか!!?
「………しょうがないか…。掃除の意味、違うの混ざってるし…。討伐って…はぁ」
なるほど…これで、驚いてたのか…。納得だ…。
俺は、思い足取りで依頼場所まで行った。
すると、一軒しか立ってなく、煙突から煙が出ていた。周りは、右手に森。左手に草原というは牧場?牛とかいるし…。
扉の前まで行き、ノックをした。
コンコン
「はーっい!」
若い女性の声だ。扉が開き、前を向くがそこには誰もいないのか?マークを浮かべている。
「こっちです!」
俺が背が低すぎたんだろう。しょうがない…まだ見た目八歳だ。まぁ、前世も背の順一番目だったけど…。
「えっ? あ、ああごめんごめん! てっきり、依頼の人かと思ったけど違うみたいね。まってて、今持ってきてあげるから!」
「へっ? 何を?」
「え? ミルク貰いに来たんじゃないの?」
「……違います!! 依頼!」
「えっ? ええぇぇっーー!!」
数分後…。
「ごめんね。てっきり…」
「いいですよ…。怒ってませんから…」
「それで、本当に依頼を受けてきたの?」
「……はい」
少しムカついた…。そんなんじゃなければ、こないっての!!
「ランクは?」
「……F……」
「本当に大丈夫なの?」
ムカッ!!
「大丈夫で、すよ…」
「だ、大丈夫みたいね。じゃあ、お願いしようかな。家のお掃除からね」
「…はい」
俺達は、掃除を始めた。
この人名前をアリシアと言うらしい。ぴったり過ぎるな…。
まずは、掃き掃除。箒、使いにくい。竹箒って……竹あるんだ…。家全体を掃く。
次は、床拭き。家の隅々まで拭く。小さな埃が雑巾に絡め取られる。
その次が、外の掃除。裏手に庭があった。草むしりをして欲しいと言う事らしい。早速始めた。草を握りむしり取る。ホント、雑草だらけだなここ。
掃除が終わったから、お茶にしようとアリシアさんが言ってきた。
「そういえば、フード取らないの?」
「え?…あ、うん」
「へー。名前は?」
「ウィルっていいます」
「ウィルかぁ。女の子よね?」
「?…男ですけど…」
「えっ? そうなのっ?!」
「?? そうですけど?」
「はー、そうなんだ。」
雑談をしながら、コーヒーを飲む。カフェオレだ。ちょっと、甘めだな。でもおいしい。
この世界でもコーヒーがあることにびっくりだが…。砂糖は高いんじゃないのか? 確か、サトウキビからとれるんだっけ? ん? この世界にサトウキビってあるのか?
「それじゃあ、フード取ってよ」
「嫌です」
「いいじゃん」
「嫌です」
「いい「嫌です」……ケチッ」
急に話が変わるが、この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨。
銅貨が、百円。銀貨が、千円。金貨が一万円。というところだ。つまり、この世界の価値観は元の世界より低いってことになる。
この依頼だって家や庭の掃除に魔物討伐で銀貨一枚。つまり、千円だ。安い…。
宿は大体、銅貨一枚で泊まれる。これに関しては、少し戸惑いを受ける。だって、宿に泊まるのにあっちでは、風呂付ご飯つきで一万円以上かかる。なのに、こっちではそれが百円でいける。誰だって、戸惑うだろう。
あっちの世界を知っている者なら……。
「ん?ブルウルフの鳴き声だ…」
「えっ?そんなの私には聞こえないけど」
俺は急いで外に出た。数は十匹。だけど、ブルウルフの横を同じスピードで盛り上がっている。モグラだな。それにしても速い。
「一角モグラは、他の魔物と手を組むことがある賢い魔物よ。あのスピードで彫り続けてられるのは額にある角が回転して進んでるからなの」
なるほど、ドリルか。生き物かあれ。まあ、いっか。さっさと倒そう。コーヒー、まだ飲みきってないからな。
俺は、走り出した。
-アリシアサイド-
ウィル君は、魔物たちに向かって走り出した。
速い。子供の走る速さじゃない! そんなスピードでもフードが取れないのは惜しいな。顔見たいのに。
「はあぁっ!」
声とともに、タガーより少し長い綺麗な短剣を腰から引き抜いて、ブルウルフ達を一撃で倒していく。すべて、急所を貫いている。
その滑らかな、動作の剣技はまるで舞を待っているようで美しかった。
厄介なブルウルフ達の攻撃を意図もたやすく避ける。今のところ無傷だ。
「つっ!」
急に地面からウィル君に向かって飛び出してきた一角モグラ。
あの攻撃は威力が大きい。冒険者じゃなければ対抗できないだろう。
それを、ウィル君は右へ跳ね除け、体制を崩し宙に舞っている一角モグラを一刀両断する。
もう一匹の一角モグラは対抗できないとわかったのか、森へ戻っていく。
戦闘が終わり、ウィル君が戻ってくる。
息遣いは整っていてまるで小走りしたような呼吸だった。そこまで、体力を消費してないようだ。
「終わりましたよ。魔物の残骸どうします?」
「えっ? ウィル君に上げる。それでお金稼いでね」
「え? お金ないのばれてましたか?」
「Fランクなのに、Dランクの依頼を受けるのはお金が無い時だけよ」
「そうなんですか? 知りませんでした」
まだ、子供なのにこの冷静さ。普通は、このぐらいの歳の時はまだ親に甘える時なのに。
「ねぇ? ウィル君?」
「はい。なんでしょう?」
魔物の前で、報酬となる部位を剥いでいるウィル君に私は話しかけた。
「両親の許可を取って、冒険者してるの?」
この歳では誰も許さないだろう。怒鳴ってでも止める。全力で。
だって、命を懸けるのが冒険者だから。私は、胸の辺りの服を掴み握り締めた。
-アリシアサイドOUT-
「両親の許可を取って、冒険者をしてるの?」
そう言って、アリシアさんは自分の胸の辺りの服を掴んだ。
そんな行為をするのは、きっと大切な人が冒険者だったのだろう。危険なことだと、よく分かっているから質問した。
「両親はいません」
アリシアさんは、こっちを向いた。俺はなるべく笑顔で言った。
「正確にはいました。でも、離れ離れです。俺には二人の母親がいた。一人目とは、離れ離れになりもう会えない。二人目は、一週間前に死にました」
「…………」
アリシアさんは、また俯いた。いけないことを聞いたと思ったのだろう。
俺は、続けた。
「でも、帰る家が有るから悲しくないです」
正確には、家じゃなく森だけど…。でも俺は、あそこが好きだ。心が落ち着く。
俺は、精一杯の笑顔を作った。
「その二人がいたから、こうして今の俺がいる。それは、とても幸せな事です」
「…………」
「さっ、家に入りましょう。手がべたべたです。手を洗いたいです」
そう言って、俺はアリシアさんの横を通って歩いた。
「ごめんなさいね。変なことを聞いて…」
「いいですよ。本当の事ですから。それより、俺の顔見えてませんよね?」
「……見えたよ。ウィル君!」
「ええっ!? 顔、覚えられたくないのに!」
俺はちょっとショックを受けながら、アリシアさんの家に入った。横では、アリシアさんが笑っていた。
うん?何か、暗い。何故か、途中暗い!なぜ、こうなった?
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次回:ぺトラ出現 Sランク級の魔物が現れる!