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マール・ブライス

ちょっとグロ注意。想像しなければ、大丈夫です。

 ナタリーと別れて二日目の朝。カイトに揺さぶられ、目が覚めた。


『ぅん? おはよう…カイト』

「まったく…ここが人がいない場所だからいいけど、他のところでその格好じゃ殺されるぞ?」


 カイトは呆れ顔で言ってきた。朝っぱらから縁起でもないこと言うなよ。

 俺は薄ら笑いしながら、起き上がる。ふわぁ~と欠伸をして、背を伸ばした。それから、朝食を作っているカイトを通り越して、森に向かう。久しぶりに生肉が食べたい気分だ。


「ウィル、味は何味がいい? ってあれ? ウィル?」


 カイトが振り返った時には、もうウィルはいなかった。またぁ? と溜め息をついて調理に戻る。




 その頃、俺は森を歩いていた。少し深い森だが、木々の間を通ってくる光は心地よかった。


『何故か…森は落ち着くよなぁ…。なんでだろう? 本能?』


 気分はよく、鼻歌交じりにニコニコしながら歩いた。今思うと、そのときの俺は少し気持ち悪い。

 話が変わるが、昨日異変が起きた。前まで狼の体が成長するのに対し、変化したときの体は成長しなかった。まぁ、当たり前なんだが…実は言うと俺はそれ以外に変化できない。

 だけど、最近になって見た目が変化が生じた。八歳ぐらいだったのが今では十三歳ぐらいだ。とんでもない急成長。さすがのカイトも超ビックリしていた。


『まぁ…まだ子供だけど…幼児じゃないよなぁ』


 俺の精神年齢は、十二に近い。だけど…この世界に来てから、性格変わったように思える。


『あ! ウサギ発見!!』


 ガサガサという音を立てて、茶色のウサギが出てきた。俺はすぐさま、食らいつく。歯から新鮮な血が喉に流れてくる。

 息の根を止めて地面に下ろす。一度、口周りの血を舌で拭き取ってからウサギに齧り付く。死に経てなので、美味しい。


『ご馳走様』


 大人のウサギをペロリと平らげた。


『さて、朝食食べたし…カイトのところへ帰ろ』


 方向転換して、森を出ようとしたところに声がかかった。


「あ、ウィルだ」


 カイトだった。何やら、大きな籠を背中に抱えている。


「偶然だな~」

『カイト? なんでいるの?』

「いやぁ…食材、足んなくなってさぁ…それで」


 ああ、なるほど、と感心して溜め息をつく。俺に言えばよかったのに…。

 カイトはまぁ、迷子にはなってなかったんだな、と言って座り込む。俺もその隣に座る。


『迷子にはならないし、俺を誰だと思ってる』

「子供?」

『なぜ、疑問系…』


 しばらく話し合っていたが、会話は途中で止まる。

 ドサッという音がしたので、そちらを向くと一人の女の子がいた。年齢は、十六ぐらいだろうか? 金に近い茶髪で三つ網をした子だった。


「なっ……! あっ……」


 こちらを、震えた手で指してきた。どうしたんだろうかと、俺は立ち上がり近づいた。顔を覗き込むと恐怖と驚きと喜びが混じった変な表情をしていた。

 カイトも立ち上がり、少女の顔を見る。因みにカイトは十七ぐらいで、背が高い。背中に乗せたら死ぬ。


「きゃぁぁあああ! 何コレ!!? ちょーー可愛い!!」


 今生二回目の変人とのご対面だ。




 先ほどの少女は、マール・ブライスと言うらしい。エルフと人間のハーフで、この森にある集落で暮らしているらしい。


「それで、マールちゃんはどうしてココに?」

「チャン付けはやめてよね。私、これでも十六だから」


 強く睨まれたカイトは一瞬怯んだが、気を取り直して同じ質問をした。


「マールはどうしてココに?」

「薬草を積んでたの。私は雑用係だから」


 俺を撫でながら話すマール。その顔は少し暗かった。


「雑用?」

「うん。私は、さっきも言ったとおりハーフエルフなんだ」

「それがどうかしたのか?」


 いつもの事ながら、カイトはあまり察しがよくない。そのことに呆れながら、マールの代わりに俺が答えた。


『マールの居る集落が、恐らくエルフだけなんだろう』

「わ! 喋った!」

「魔物だからね」


 マールは、突然喋った俺を驚いて見る。カイトは苦笑いしながら、話を続ける。


「それで、本当なのか? エルフだけって」

「うん。私だけなんだぁ、人間の血が混じってるのは……そんな私をみんなは意味嫌い、雑用を押し付ける……」


 先ほどの元気とは裏腹に、しゅんと暗い顔をする。その間も、俺を撫でる手は休めない。


「でもね…こんな私でも、手を差し伸べてくれた人いたんだぁ…」

「へぇ。誰?」

「村長の娘。私の唯一の親友でね、周りの目も気にしなかった。非難の言葉を浴びても、物が飛んできても。それにね、村長を慕っている人たちも優しいんだよ……だけど」


 マールは、俺の頭に顔を埋めた。俺は後ろにいるマールを見てみると、マールは小刻みに震えていた。


「五日前に…友達が寝込んじゃって…病気なんだって。その子以外、村長の跡継ぎがいないの。みんな死んでもらっては困るって言って、みんな大騒ぎ。それで、こうして薬草を取りにきたってわけ…」


 マールが黙り、沈黙が流れる。それに耐え切れなくなったのか、カイトが口を開いた。


「そうなんだ…じゃぁ、オレたちも手伝うよ。薬草取り」

「え?」

『じゃぁ、俺も』


 マールは勢いよく顔を上げた。その顔には、驚きと喜びが混じっている。さっきの顔と同じような顔だ。


「ありがとう。それと、ごめんね。見ず知らずの人に話すことじゃないのに…」

「見ず知らずの人じゃない!」


 カイトは、にんまりと笑う。あー、この展開読めた。このお人好しめ…。


「えっ」

「だって、オレ等が友達じゃん! なっウィル!?」

『……まぁ、そうだな。お前が勝手に決めただけだけど…』

「そんなことないぞ…寂しいヤツだなぁ」

『うるさい。黙れ』

「ひで!!」


 カイトと俺が言い合っていると、傍から見ていたマールは笑い出した。


「どうしたんだろう?」

『頭でも打ったんじゃないか?』

「お前…何気にひどいな…」


 マールは一頻りに笑い終わるとごめんごめん、と言って手を振った。その顔は、さっきまでの暗い顔ではなかった。


「いやぁ…こんなこと、言われたの初めてなの」


 いや、それで笑うのは少しおかしい。

 マールは立ち上がり、ありがと、と言った。それから、ニカっと笑って来た。嫌な予感がする。


「じゃぁ、手伝ってくれるって言ってくれたしね。この紙に書いている薬草取ってきて」

「『ゲッ! 何コレ!?』」


 渡されたメモには、びっしりと薬草の名前や欲しい数が書かれていた。こんなの今日中に集まるだろうか?

 俺の心を読んだのか、マールは期限は明後日まで! と言ってきた。


「ええ!? 困る! それは困る!」

「何で?」

「だってさ! オレ等、ヴェールに行くんだ」

「それが?」

「それがって……」

『カイト、諦めろ。お前が引き受けたんだぞ』


 俺は、マールを見て固まっているカイトの肩にポンと手を置く。カイトは、ぐるりと首を回転させこちらを向いた。


「いや、お前も手伝うよな? そう言ってたしな?」

『? 言ってないぞ?』

「嘘付け!! 五十行ぐらい前で、じゃぁ俺も、って言ってたじゃねぇか!!」

『ギクッ! ……言ってないもん』

「……今、あからさまに、ギクッってしてたよな?」


 俺は、それを聞いた瞬間にダッシュで逃げた。後ろから、すぐさまカイトが追いかけてきている。


「待てぇええ!! 犬っコロ!!」

『俺は犬じゃねぇ!! 狼だ!!』

「どっちも一緒だ!!」


 この追いかけっこは、一時間ほど続いた。勝ったのは当然、俺だ。



これ以上、長く出来ない。すみません……自分の限界を知ってしまいました。いや、マジで。

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