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決着。そして別れ

今回は三人称視点。こっちの方が書きやすいと最近わかった。

「左に周って!」

「了解!」


 ウィルの言葉にカイトが反応して、キメラの左に周る。当然、キメラには行動が見えておりカイトへ攻撃を仕掛ける。

 しかし、背中辺りから来た激痛により悲鳴を上げながら倒れる。


「よし!」


 激痛の正体はウィルであり、キメラがカイトの方へ向いた瞬間に高く飛び、《スキル・ダークブロー》を短剣に纏わせ勢いよく背中に指したのだった。


「ナタリー! キメラを抑えることできる!?」

「出来るぞ! 《拘束せよレスト》!」


 周辺の地面から輝く鎖が出て、キメラに纏わりついた。キメラは、周りが見えておらず暴れだした。


『ギャァァア!!』

「うおっ、あぶね!」


 キメラの尻尾などがカイトにあたりそうになっていたが避ける。前まで、サーヴァントスネイクの前で尻餅ついてた人物とは思えなかった。

 一通り暴れたキメラは疲れたのか、大人しくなった。その内に、ウィルとカイトはナタリーの傍まで走った。


「ナタリー、サンキュ」

「いいんだ。私に出来るのはコレぐらいだからな」

「それにしても、何故カイトに懐かないんだ?」

「あっ、そういやそうだ」


 カイトは、動物(魔物も)に好かれる体質だったはずだ。なのに、このキメラはカイトに近寄ってこず、全体を相手している。三人でう~んと頭を捻るが分からない。


『グっ、グァァア!』


 拘束が解けかかっている。このままでは、また襲ってくるだろう。

 よし、とウィルはキメラの方を向いた。


「何するきだ? 今の私達では太刀打ちできないだろう!?」


 実力差が分かったのかナタリーは逃げるべきと思ったのだろう。

 心配そうな顔をするナタリーにウィルは微笑んだ。


「大丈夫。俺、強いし」


 どこか自身に溢れている言葉だった。この言葉をウィル以外が発していたら絶対無理だと思う自信がある。

 ウィルは、今まで被っていたフードを外してキメラに向き直った。


「これからは、俺が相手だ!」


『ガァァアアア!』


 魔法が解け、キメラは開放される。それと同時にウィルは走り出した。


「…あいつはエルフなのか? 髪が銀色だぞ?」

「…見た目で判断しない方がいいと思う」


 それだけ言うと、カイトは化け物と戦っている友人を見る。その姿は、勇ましく華麗だった。

 誰があの子をたった十一歳の少年だと思うのだろうか。誰があの子を前までは何も力を持たなかった只の一般人だと思うだろうか。

 カイトは、改めて自分の友人が誇りに思えた。最初に出会った頃は初めて友人が出来て嬉しかった。今では誰かに自慢したいほど誇れる友人になった。


「やっぱ、すげぇや…」


 そう小さく呟いた。




「なかなか、倒れないな…」


 ハァハァと息を切らしながら少し笑う。何分経過しただろうか…数えてはいなかった。

 ただ、元は狼だからだろうか、それとも前世では体を動かすのが楽しかったからだろうか…戦うのが少し楽しい気がした。

 そういえば、この世界にもスポーツはあるのだろうか。戦闘中にもかかわらずそんな考えが頭を過ぎった。


「そんなこと考えてる暇はないぞっと! 危なっ!」


 キメラが前足で攻撃してきた。間一髪でそれを避ける。


「やったな」


 ウィルは高く飛び、キメラの顔に短剣を走らせた。キメラは悲鳴を上げ、ウィルを睨みつける。


「その方が、カッコいいぞ」


 着地した瞬間に地面を蹴って、キメラの右側に周る。今度は反対側かとキメラは正面を右に向ける。

 しかし、そこにはウィルの姿は無くキメラは混乱した。


「《ダークブロー》」


 その声が聞こえた時にはすでに遅く、右後ろ足に痛みが走る。


「アキレス腱を切った、もう歩けないと思う」


 小四だった彼が何故、アキレス腱のことを知っているかというと疲労を忘れ運動しすぎて一度切れたことがあるからだ。それだけの運動好き。

 キメラは、カクンと足をまげて倒れた。戦いが終わったと思い、トコトコとウィルはカイトとナタリーに近づいていく。


「さすが、ウィル」

「うむ、私でも無理なキメラを倒すとは」

「ありがとう。仲間の仇を取ってくれて」

「うぉっ!? ジンさん、いつの間に!?」

「ん? ナタリーが回復してくれた」

「そうなんだ、でもナタリー回復魔法使えるんだ」

「使えるぞ?」


 いつの間にか復活したジンにも驚きだが、ナタリーが回復魔法を使えたのにも驚きだった。


「そういえば、ドドメささないのか?」

「うん。アイツ、怯えている感じだったからな。しばらくしたら、元に戻るだろう」

「……そうか」


 ウィルの回答に考え込むナタリー。 


「まぁ、無事で何よりだ……帰るぞ」


 ナタリーは一瞬ジンの顔を見てから、入り口に向かう。ジンもそれについて行った。

 その後ろ姿をウィルとカイトは見ながら歩く。


「ホントは、ドドメさして欲しかったんじゃなかったか…ウィル」

「そんな事、分かってる」

「なら、どうして?」

「ジンさんが、仇取ってくれてありがとうって言ってたから、もういいのかなって」

「え!? それだけ!? 絶対ジンさん分かってない! キメラが絶命したと思われてるぞ!」

「あはははっ……そうだろうね……ナタリーに言ったヤツは本当の事だけど…」

「…はぁ」


 カイトは頭を抱えながらウィルを見る。誇れて頼れる友人だが、こういう所が抜けているんだなと思ったカイトだった。


「看板、書き換えておかないと…また犠牲者がでるなぁ」


 などと、呟いているウィル。



 しばらくして、“迷いの森”入り口に出た。

 前を歩いていたナタリーとジンが振りかえる。


「今日は、すまなかった。巻き込んでしまって…」


 いきなりの頭を下げての謝罪。ジンも同時に下げた。その行為にカイトとウィルは笑う。


「別にいい。オレは何もしてないし」

「俺はがんばっイテッ!!」


 ウィルが威張ろうとしたらカイトに殴られた。最初の時と全然違う二人だ。

 クスクスとナタリーは笑う。ジンも笑った。


「ホントに二人は面白いな…私は会えてよかったと思ってる」

「それなら、オレ達と一緒に来ない?」

「……気持ちは嬉しいが、私にはジンがいる。コイツと旅がしたいんだ」

「そうか、残念。」


 ナタリーはカイトの申し出を苦笑しながら断った。それならとカイトは諦めた。


 日も傾いてきた頃。四人は別れた。


「ナタリー、元気で!」

「旅、楽しめよ~!」


「君らも元気で!」

「ウィル君、カイト君、ありがとう!」


 二人は、手を振りながら歩いていった。行き先はどこかは知らないがまた会えるだろう。そうウィルとカイトは確信していた。

 さて、とウィルはカイトを見る。


「俺らも行きますか」

「そうだな。今日は野宿か…」


 はぁとため息とつく。ウィルは微笑しながら、先を歩いた。


「俺は慣れてるから別にいいけど…カイトはなぁ」

「だっ大丈夫だって! 幽霊なんかいないって!」

「………カイト。お前、幽霊苦手なのか?」

「ハッ!」

「何だ、その言ってしまった!的な顔……まぁ、幽霊なんていないって…」


 ふぅと安堵の息を吐く。ウィルはただ、と続ける。


「ただ?」

「ただ、この世界にはアンデット系の魔物がいるじゃないか」

「そうだったぁ!」


 嫌だーー! と叫ぶカイトを見て、ニヤニヤするウィルだった。いつだって、人をからかうのは楽しいものです。



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