孔雀
物語、始動!
次の日、俺たちは次の町へ向かうため市場で昨日、目を付けていた物を買い込んでいた。
「ウィル~、ちょっと重いよ」
「我慢しろ、それでも大人か?」
「関係ない大人かどうかなんてっ!」
「じゃあ、それぐらいで重いとか言う奴は本当に冒険者かね?」
「うっ…。」
カイトの言う通りかも知れない。確かに、ちょっと買いすぎたかも…。
ドン
「あっ、すみません。」
「いえ、こちらこそ。」
あれ?今の人、どこかで…気のせいか…。どうかしてるよ、俺。
ゾワッ
「つっ……!?」
「どうかした、ウィル?」
「い…いや、なんでもない」
急に顔が青くなった俺に心配そうにこちらを見るカイト。
しかし、なんだ…異様な視線だ…。
「さて、宿に帰って支度すっか!」
俺は隠すように言った。
「そうだな。オレ、くたくただ」
俺たちは、宿に向かった。
しかし、その間も視線が途切れることはなかった。
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「ふぅーーっ。」
宿に入ったら視線は途切れ、緊張感がなくなった。思わず、ベットに倒れこむ。カイトは隣の部屋だ。
多分だけど、アレはぶつかった人のものだ。なんでだ? ただ、ぶつかっただけでこんな事になるものだろうか? 俺は必死に考えたが
「だあぁーーっ! やめだ! やめっ! 考えてもしょうがない!」
結論はでなかった。頭悪いしねぇ。まだ(前世を含めて)十一だし…。
俺は逃げるように支度を始めた。今日の昼過ぎには出るつもりだ。
『ピッ!』
「ああ、悪い。起こしたか…」
棚の上で寝ていた、ブラックバードのラック。名前は俺ではなく、カイトが付けた。この世界のネーミングセンスが気になる…。
『ピーっ』
「ああ、次の町に行くんだ」
『ピ! ピピピーーッ!』
「置いてかないよ。もう俺たち家族だからな」
『ピ、ピィ』
少し前に分かったんだが、どうやら魔物の言葉が大体分かるみたいだ。俺も魔物だからか?
最初に気づいたのは、あのぺトラの依頼の時、一角モグラが他の奴に鳴いた時だ。
俺はラックを撫でてやった。嬉しそうに目を細めてる。可愛いやつ。
オイシソ……おっと、あぶねぇ…。理性が飛ぶところだった…。
「ウィル~? 準備終わった?」
「まだだ」
「そっか、先に朝食、食べとくぜ」
「了解」
鞄に綺麗に詰め込む。時間はある。まだ、九時だ。
朝食食べ終わったらどうしようか。いち早く、出るか…。
「よしっ。準備終了。行くぞ、ラック朝食だ」
『ピッ!』
ラックは俺の後ろをトコトコついてくる。
階段を降りて、ホールに向かう。
「お! ウィル! ラック! こっちだ!」
まったくでかい声だ。まぁ、今日は何故か混んでいたから助かったが…。
俺はカイトの元へ向かう。ラックは歩いていたら、踏まれそうなので飛んで向かう。
「こりゃまた、大量に頼んでるな。お前にしては多すぎだろう」
「ふぉうか? ふぁって「飲み込んでから言え!」……ゴクンッ。だって、何日かこんな食事食べれないんだぜ? 今のうちに堪能するんだ!」
「バカだ…。食べ過ぎるなよ」
「ふぉう!」
「……ラック、俺たちも食べよう」
『ピッ』
その後、俺はいつも通りの食事をして、ラックはああ見えて、肉食なので豚肉を食べていた。
「…鳥なのに豚…ネズミとかじゃないんだ…。」
カイトはいつもの二倍は食べて、食べ終わった後は「う…動けん。」とか言ってた。大量に食べるからだ。
俺たちは部屋に荷物を取りに行った。また戻ってきてからカイトが腹痛いとか言うから、少し休憩した。
「大丈夫か、カイト」
「ダメ…うっ。痛いし、気持ち悪い」
「あんなに食べるからだ」
「ううっ、だって美味しいし…」
「……はぁ」
三十分経ち、ようやく落ち着いたみたいだ。
「よし、出るぞ。十一時だけど別にいいか」
俺たちは、宿を出て北門に向かった。
何故、北門なのかと言うと王都は北にあるらしい。この町ノーラは玄関口。この国の南門だな。いつか、この世界の地図が欲しいな。
「もうすぐ、北門だな!」
「そうだな、この町ともお別れだな。でもまぁ、いつか帰ってくるし」
「うん? ウィルの出身どこ?」
「南門をでて、真っ直ぐの村」
「そうなんだ。オレは、南西の村だ」
結構近いじゃん。いつか、遊びにいこうっと。
俺たちは、門番に軽く挨拶して、出て行った。出てすぐに森があった。一本の並木道っぽいな…。
「森だなぁ。いい匂いだ」
「確かになぁー」
ゾワッ!
「っ!!!!」
「ウィル…?」
『もしやと思ったけど本当にそうだとはね……』
前方から声がした。カイトは前を見る。
「誰だ!」
カイトが叫ぶ。相手は暗い森から、姿を現した。
『今回もドラゴンだと思ったんだけど狼だったのか。久しぶりだね、シャイ』
そこには、一羽の孔雀がいた。




