ブラックバード
この青年、カイトは不思議な奴。
町までの道なりはカイトの一方的な喋りで終わった。まぁ、何度か魔物に襲撃?された。
原因はカイトだ。本当に魔物や動物に好かれるらしい。老若男女問わず…。
来る度、蹴りをプレゼントしてやった。
「ウィルって本当に強いな! 本当に子供か?」
「そういうお前こそ、大人か?」
俺は子供のわりに落ち着いていて、カイトは大人のわりに騒がしい。正反対だ。
「着いた、宿屋」
「おっ! いいじゃん! いい感じじゃん!」
いちいち、うるさい。
カランカラン
「あっ、お帰りです!…そちらの方は?」
ウエイトレスのお姉さんが話しかけてきた。
「さっき知り合いまして、この人も泊まることは出来ますか?」
「はいっ、可能で~す。料金さえお支払いしていただけば」
ですよね~。そうだ、討伐部位のを換金できれば大丈夫か…も……?
「後で、いいですか?」
「はい、いいですよ~」
俺は、宿を出て冒険者ギルドへ向かった。
なんやかんやしていたので、時刻は午前六時ちょっと過ぎ。ギルドは六時に開くから大丈夫だろう…多分。
「ウィル、どこ行くんだ?」
カイトが後を着いてきながらのんびりとした口調で質問する。
「冒険者ギルド! さっきのデカ蛇の素材を換金してもらうの!」
「なるほど! つまり、俺の分の宿代が無いわけだ!」
見かけによらず、頭の回る奴だ。
少しムカついたから、スタスタスタと早足で歩いて、ギルドに着く。
扉を開け、なぜか六時五分だってのに冒険者が少ない以外は変わってない中を一直線にカウンターへ向かって、歩く。
昨日と同じ人が受付嬢だった。
「おはようございます。今日はどうされましたか?」
「換金して欲しいんです」
俺はそう言って、デカ蛇の一部をカウンターに置く。背が低いから、少しカイトに手伝ってもらった。
「!……これは…どこで?」
「え?」
受付嬢にそんな事を聞かれた。何やら、真剣な顔をしている。
俺はそんな事を気にせずに答えた。
「町をでて少しの森で見つけました。」
倒したのではなく、見つけた。そう言ったのは、何やら良い予感がしないからだ…。
-受付嬢sido-
私は、この町ノーラで受付嬢をして四年。
もう、仕事になれて後輩から慕われるようになってきた。ちょっとやそっとでは驚かなくなってきたんだけど…最近はよく驚かされる。…一人の少年によって。
八歳ぐらいと思われる少年。この歳は、まだ親元にいる年齢。冒険者などさせるはずがないけど…例外ならある。親がいないか育児放棄された子達が冒険者をすることもある。でも、稀にしかない…。
「ちょっといいですか?」
今日も、少年が来た。こんな朝早くから。
でも、少年の後ろには青年が立っていた。お兄さんだろうか?親がいなくても兄弟はいる可能性がある。きっと兄なんだろう。私はそう思った。
そして、私はいつものセリフを言う。
「おはようございます。今日はどうされましたか?」
「換金して欲しいんです」
少年はそう言って、何かの素材をカウンターに置く。
一角モグラでも狩ってきたのだろうかと思ってけど、違った。
私は、それを見て固まった。驚きすぎてとか恐怖して硬直するとはこういう事なんだろう。
少年が出してきたのは、Cクラスでも上位の魔物。サーヴァントスネークの討伐部位だった。
「…これは…どこで?」
「え?」
この魔物は名の通り、Bクラス以上の知能持った魔物に飼われたがる性質を持つ大蛇だ。そのため、この大蛇は上級モンスターの傍にしかいない。
たとえ、Aランク冒険者だとしても大型モンスターを二匹とも倒せるわけない。
それとも、この大蛇がはぐれならいけるかも知れないがCランク以下の冒険者は無理。
でも、この少年はどうだろうか…?しかし、私の考えと裏腹に少年は答えた。
「町を出て少しの森で見つけました」
その言葉を聞いて、私はホッとした。倒したじゃなく、見つけたと言ったのだから。
それなら、息絶えたサーヴァントスネークを見つけたのだろう。そうに違いない。危うく、私の常識が崩れる所だった。
-受付嬢sido out-
「そうですか。では、ギルドカードをこちらへ」
「はい」
受付嬢は何事も無かったように元の口調にもどった。
貰ったのは、銀貨四枚。結構もらった。ラッキーだな。
俺は帰ろうと思ったが、遣り残したことがあった。パーティ登録だ。
「すみません。この人とパーティを組みたいのですが」
「それなら、御二人のギルドカートを提示してください。パーティ名は何にしますか?」
考えてなかった。名前なくてもいいな…。
「決めてないんで、そのまま登録してください。」
「分かりました。」
そういうと受付嬢はカードを二枚同時に色の違う水晶にあてた後、渡してきた。
「登録完了しました」
「ありがとうございます」
俺たちは、ギルドを出て朝食をとりに宿へ向かった。歩いてる中、カイトが話しかけてきた。
「ウィル、そのお金で防具とか買わないのか?」
「いらない。邪魔になるだけ」
「オレたち、冒険者にしては軽装備すぎるぞ」
「そうだけど、俺の服は変化の時に付いてくる物だ。多分、その他なら元に戻る時には脱げるからな」
「そうなんだ。じゃあ、オレ買いたい物があるから銀貨一枚くれ」
そう言ってカイトは手を出してきた。その行為に、はあーと溜息をつきながら銀貨を渡す。
「あんがと! んじゃ、また宿で!」
「ああ。分かった」
カイトと別れたあと、俺は宿へ戻り朝食を取った。小麦パンとスープだけという、なんとも食べたりない食事だった。
食べ終わり、市場へと向かった。明日にはこの町を出ようと思う。そんなに長く滞在する必要もないからな。次の町へ向かうための食料の下見だ。
長く持ちそうなのが結構ある。美味しそうなのから、食べれるのか怪しいものまで様々だ。
「あ、ウィル~!」
呼ばれ、顔を上げるとそこにはカイトが走ってきた。手には黒い何かを持っている。
傍まで付くと、その黒いのを顔の前に突き出してきた。
『ピッ!』
「なっ、なんだそれ?」
「かわいいだろ~! 買ったんだ!」
「は? 買った?まさか、買いたいものって……。」
「そう! このブラックバードだ!」
名前、そのまま…。でも確か、ブラックバードって…。
「雷魔法使えるんじゃ…」
「そうだが、まだ幼鳥だから使えないし。成長になったら移動用に使える優れた動物!銀貨一枚は高いからなぁ。前から欲しかったんだ」
「それで、幼鳥なのか?ウサギぐらいじゃないか…」
「成長したら、荷馬車用の馬ぐらいになるな」
「結構でかい…な。はぁ…まあいい。世話は交代してしよう」
「ホントか!?」
「じゃ、宿に戻るぞ」
その後、宿のおかみさんに怒られました…。「公共の場に危ないものを持ってきてはいけない。」だそうだ…。それなら、剣とかはどうなんだよ。
まったく、客に説教する店ってなんだよ。
ブラックバード:雷魔法が使えて馬ぐらいの大きさの魔物。だが、おとなしい性格で人間達からは、動物扱い。たまにしか店に並ばず、銀貨一枚と高い。幼鳥の時から育てれば、人懐こい性格になる。全身黒い体毛の持ち主。だけど、クチバシは黄色く丸い。カラスに似ているが、愛らしい目をしている。人気の動物。




