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弐の稲荷

久々に更新できました。

書く時間を作るのは大変です。


感想・ご指摘お待ちしております。









「………………はぁ。」



「なんじゃ、なんじゃ。そのような気の抜けた返事は。」



「いや、確かにお前が最初にあった声の主ってのは分かったけど、お前が俺に対して偉そうに言う意味が理解できない。」



「そのようなこと。妾が今までお主がお参りしてきた稲荷のご神体だからに決まっておろう。」






……………。






……………。






「あーそりゃありがたいですね。ありがとうございます。ありがとうございますっと。」



「…………お主敬う気全くないじゃろ。テキトーに言ってる感が半端ないぞ。それにそこに妾はおらん。もうちょい左じゃ馬鹿者が。」



 目に見えない奴に対して敬う気なんてさっぱりないからてきとうに返事をしたら見事に気づかれてしまい、このざまだ。全く姿は見えないのに勘はいいようだ。というかそもそもこいつはNPCなのか?それにしては随分と話すし、見えないが表情も豊かな雰囲気がする。プレイヤーでこんな変なはじめ方が起きるわけないから、コイツは一体何なんだろう。




「妾はNPCではないぞ。それにプレイヤーでもない。」



「じゃあ、何なんだよお前は?NPCでもなくてプレイヤーでもないなんて、この二つ以外でこの世界の中に存在出来てるなんて、異常だ。」



「目の前にその人物がいるというのに異常とはほんに失礼な奴じゃなお主。」



「失礼でもいいよ。だって俺はお前のことが全然知らない状態だ。そして、俺の考えの上を行っているお前を異常と思ってしまうのも仕方がないじゃないか。」



「………………まぁ、言いたいことが分からない訳ではないしのぅ。」



 声の主はぶつくさ言いながら俺の周りをうろうろしている(多分、声の聞こえ方がそう聞こえるから)俺が随分な言い方をしかたら、機嫌を悪くしてしまったのだろか。



「なぁ、俺が悪かったから機嫌を直してくれよ。」



「?何を言っておる。妾は別に怒ってはいないぞ。ただ……………。」



「ただ?」



「自身のことをどう説明すればよいのか、うまく思いつかなくての。」



「そうか、ならまた今度でいいんじゃないか?なにせ俺はまだお前のことを見えていないし。」



「…………………それもそうじゃの。妾のことはお主が妾の姿を見てからという事にしようかの。」



「それで行こうや。俺もなるべく早くお前を見れるようにしないとな。」



「そうじゃの。あまり期待せずに待つとしよう。」


「……………そこは期待していると言ってほしいんだがなぁ。」



「期待はしたいが、お主の場合期待すると頑張らない気がしてな。」



「失礼な奴だなぁお前。ただでさえ姿が見えないっていうのに。」



「それとこれとは話が違う気がするし、妾の姿が見えないのは、単にお主の力量不足じゃ。」


 

「はいはい、わかりましたよ、精々精進しますよ。」



「それでよいのじゃ。………………だから、そこに妾はおらん。もうちと左じゃ戯けが。」


















…………というのが、一週間前から起きていたことで、前にも言ったけど、俺の階級は十まで上がっているので、しばらくは「気配察知」の練習に取り組んでいる。

 そんな俺にちょいちょいと何かしら声を掛けてくるのが、現状唯一俺の話し相手である見えない声の主だ。



 だが、この声の主が、今俺がしている瞑想を教えてくれた張本人であるので、俺はあいつのことを無視するという事は出来ない。



 一週間前、俺は声の主に対して、お前の姿が見えるようにすると言ったが、具体的になにをすればいいのか、分からなかった。それを見たアイツはため息を一つつくと俺にアドバイスをくれた。





「お主が妾のことを見えるようになるのに一番手っ取り早いのが今お主が持っているスキルの『気配察知』のレベルを上げることじゃ。何?『気配察知』のレベルはバトルじゃなきゃ上がらないじゃと?

 確かにバトルで上げる方法もあるが、お主には別の方法、所謂抜け道というのを教えてやろう。

 ん?何故俺に教えるかじゃと?それは今のところ妾と話せるのがお主しかいないからじゃ。妾も早く目を見て話したいしの。」




 そういって俺に瞑想で『気配察知』のレベルを上げるという事を教えてくれた。


 このことはナオユキには言っていない。餓鬼くさいかも知れないが、これは俺と声の主の秘密ってことにしたかった。

 

 ちなみにこのことを声の主に言うと、アイツはすぐに笑い出し、俺に対して「まるで女子の様な事を言う奴じゃのぅ」と言ったが、そのあとすぐに「共通の秘密というのは良いものじゃな。ありがとう。」と真面目に礼を言ってきたので、意外な気がした。

 口にしたら怒りそうなので、声にはしないが。




……………………………







……………………………






…………………………





 それからまた一週間が過ぎました。


 え?この一週間を何故飛ばしたかだって?

 


 別にこの一週間のことを話してもいいけど、特に大したことは起きなかったから、別に言わなくてもいいかなと俺が思っているだけ。だってやったことと言えば、とにかく神社での瞑想。これに尽きるから話しても大して面白いことがないんだよね。


 それ以外にやったことと言っても、稲荷参拝を毎日欠かさずやったりとか、一人でフィールド行って野犬とか小鬼倒して階級上げたりとかそんな事しかやってない。


 自分で言っておいて何だかほんとにボッチな生活だよ。これじゃあの狐に言われてもしょうがない。



 ちなみに狐ってのは俺と一番多くの時間を一緒にいるあの声の主のこと。少し前に正体を聞いたら、あっさりと教えてくれた。そんなあっさりと教えていいのかと聞いたが、別にそれは問題ないことだそうだ。


 狐曰く、コイツと話しているのは、現在『稲荷参拝』のクエストをやっている俺ぐらいだそうだ。

 ほかのプレイヤー達はこのクエストに興味がないそうで、俺がはじめた以降誰も参加者がいないらしい。このクエストをやれば狐のことを認識できるそうだが、現在俺以外誰もいないので、狐を認識できるのは俺だけで、こいつも俺と話す以外やることがなく暇なのだそうだ。



「しかし、何度も言うがお主は妾に会いに来る以外にすることがないのか?このところ毎日来ておるが」



「俺だって何度も言ってるだろ。これ以外にやることがないとは言ってないが、『気配察知』を早くマスターしたいんだよ。」



「マスターとはいっても、お主このスキルの上限レベルを知っておるのか?」



 狐の言葉に俺は一度瞑想をやめて考える。確かに狐の言うとおり俺はスキルの上限レベルを知らない。最初の説明部分にあったかもしれないが、それはしっかり読んでいない。


 俺が考え込んでいると、狐のため息が聞こえ、呆れたような声で話し始めた。



「スキルの上限はそのスキルの説明文の一番下に書かれておる。後で確認するがよい。」



「ありがとう。………………でもなんでお前がそんなことを知っているんだ?お前NPCだろう?」



「妾がいつNPCだと話した。お主が買勝手に想像するのは構わないが、おそらくお主の考えは外れるぞ。」



「なんでそんなに断言できるんだよ。というか早く正体を言え。」



「せっかちじゃのぅ。この前は後でもよいと言っておったのに。」




ヨヨヨと泣き真似をする声が聞こえる。これ以上話していても、コイツは何も話してくれないとこれまでの経験で理解しているので、俺は瞑想の練習を再開する。


 崩れた姿勢をキチンとした姿勢に直して、もう一度瞑想を始めようとしたら、目の前に新着メールのお知らせが出てきた。


 


 出鼻をくじかれたのであまりいい気分ではないが、取り合えず、メールを確認しようとして俺はメニュー画面から、新着メールを開いた。





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