壱の町→弐の稲荷
この一週間の間で俺の段位は四から十まで上がっていた。今まで野犬ばかり相手にしていた時とは違い、大変だがその分経験値も多く入っていたので、それほど辛いことではなかった。
それ以外の自分のこと以外で起こったことと言えば、どっかの人かは知らないが誰かが、壱の町の外の草原の主を倒して、次の町へと続く道を確立したらしい。これで次の町に行く方法が決まり新しい街へと人が流れていく。
このゲームはほかのVRMMOと同様にステージをクリアすると次のところへ進めるようになっている。そしていくつもあるステージをクリアしていきゲームをクリアするという形はほかのものと変わりはない。
ただ違う点と言えば、誰かが一度ステージのボスを倒し次のエリアへとつながると、誰でも次のエリアつまり町に行けるようになることだろう。
ボスを倒すと町の入口の隣に次の町に行くためのワープポイントが誕生し次の町の門へといけるようになる。勿論ワープしているので敵に襲われる心配はない。生産職に就いている人たちにとっては危険を冒すことなく次の町に行けるからありがたいものだろう。
生産職以外の人でも、自由に行き来できることになるからこのシステムは便利なものだろう。
ただ、ボスは一度倒したら終わりというわけではなく、ボスには何度でも挑戦することが出来る。ボスと戦いたいけど先に倒されてしまったという人が出ないようにするための運営側の考えらしい。だが、最初に戦った人の方が、経験値や手に入るアイテムなどがいいらしい。
この理由としては後から戦う人は攻略掲示板とかが使えるから最初の人たちよりも有利な状態で戦えるからというのが運営側の意見であり、これについては正しいと俺は思っている。最初の人はいきなり敵と戦うのだから戦いの中で敵のことを分析しないといけないのだから大変だろう。それに比べて後に戦う人はすでに情報があるのだからその分報酬とかがひかれるべきだろう。
そんなことでボスには何度でも挑むことが出来るので、俺も機会を見て挑戦しようかなと思っている。
…………まぁ、それにはもう少し段位を上げて装備も良くしないといけないのでまだ先のことになりそうな感じだ。
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それとは別に俺が以前から進めていた「稲荷参拝」のクエストだが、このついに「壱の稲荷」の参拝度が百%になり、「壱の稲荷」の参拝が終了した。そして報酬の「弐の稲荷」の境内への跳躍という事だがこれの意味は最初読んだときは意味が分からなかったが、これの意味は言ってしまえばそのままの意味で、「弐の稲荷」は名前に弐と着いているように「壱の町」の次の町「弐の町」にあるらしい(弐の町に行ったことがないので正しいかはわからないが、多分そうなのだろう。)
そしてさっき言った通り今の町の次の町に行くためには町の間にあるエリアのボスを倒さなくてはいけないのだが、この報酬を使えば何度でも「弐の町」の「弐の稲荷」に行くことが出来るのだ。このおかげで俺は弐の町への道が開かれる前にすでに弐の町に行っていたのだ。ただ、「弐の稲荷の境内内」だけなので「弐の町」の様子がどうであったかは知らない。ただ何となく「壱の町」に比べたら大きそうな感じがしたくらいだった。
そして「弐の稲荷」だが、「壱の稲荷」は竹藪の中にひっそりと建っている小さな稲荷だったが、それに比べると少しは大きくなっている。相変わらず竹藪の中にあるのだが、竹藪の中にあっても存在感があるというか、しっかりと建っている。参道も「壱の稲荷」に比べて幅も広く綺麗になっていて、これなら人も来そうな感じだった。
俺が神社に行くといつも聞こえていたあの声についてだが、俺が「弐の稲荷」について「壱の稲荷」に比べて大きいなぁと思いながら、神社の境内を観察しつつ歩き回りつつ、そういえばあの声は一体何なのだろうかと思っていると、俺の後ろの方から久々に聞く声が聞こえてきた。
「お主と会うのは暫くぶりになるが、相変わらず一人でおるの。」
声がしてその正体を探してあたりの見まわしている俺を見ているのかは分からないが(見えないの
で)その姿を面白がるように声は続ける。
「本来なら複数の友人などでプレイするこのゲームを一週間も一人でいてやることと言えば毎日神社へお参りに来る程度のお主を見ていると何だか他人事であるのに悲しくなってくるな。」
人が姿を見えていないことをいいことに散々なことを言っている、見えない奴に対しての苛立ちが自分の中で湧き上がってい来るのを感じながら、それでもここで声を上げたら自分のほかに誰もいない神社の中で一人大声を上げている変な奴になってしまうので、ここは我慢する。
「おや?お主妾の声が聞こえていないわけではあるまい。何故黙っておる。」
声はそのあとも俺が反応しないことに対して、「のぉのぉ、聞いておるか?」「いい加減反応してはどうなのだ。」と声を掛けてき続けていた。それが、かなりの間続いていたので、俺もいい加減うるさくなってきたので、どこにいるかは分からない声に対して返答した。
「何度も何度も耳元でうるさい。話しかけてくるなよ。それに俺はお前とあったことはないぞ。」
俺が反応したことに声の主は「ようやく、反応したか。聞こえているのならばさっさと返せばよいものを」と呟いた。
「さっきお主は妾とあったことはないと言っておったが、それは違う。お主は妾とは何度もあっておるぞ。」
「嘘をつけ。大体姿が見えない奴に対して、あったことがあるっていう自体不自然なのにこれ以上編ことを言うなよ。」
「そんなことはない。お主と妾はお主が神社に初めて来た時からあっているぞ。」
その言葉に俺は初めて神社に来た時に聞こえたこのことを思い出した。そして、そんな俺のことを見ているであろう。声の主は多分見えていたらやれやれと首を振っていただろう。そんな感じの空気を出していた。
「じゃあ、お前は俺が初めて『壱の稲荷』に来た時に聞こえた声なのか?」
「じゃからさっきそういったであろう。お主は耳が遠いのか?ゲームの世界に来て耳が遠いとは中々面白いやつじゃのう。」
「やかましいわ。それに耳はどこもおかしくはないし、この体に異常はない。」
俺が言い返すと、声の主は「やれやれ、からかいも通じぬ奴とはな。」とため息をついていたが、一つ「コホン」と咳をすると。
「よくぞ、『壱の稲荷』の参拝を済ませたのミコトよ。大儀であった。」
と偉そうに言ったのだった。