表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/35

壱の町ー参

―参時間後―



 すっかり日も傾いてきて、辺りが暗くなってきたので俺は今日の狩りを終わりにすることにした。今日の成果はこんな感じだ



〔キャラクタープロフィール〕


名前 ミコト

職業 野武士

階級 4


能力

 体力 32

 気力 13

 筋力 20

 耐久 15

 呪力 3

 呪力耐久 9

 敏捷 10


装備

 武器 野太刀

 防具 旅人の道着一式

   (発動スキル 無し)


持ち物

 回復薬×6、野犬の毛皮×5、野犬の牙×4、薬草×10、木の実(正体不明)×6、キノコ(正体不明)×15、



………………あれから階級は1しか上がらなかった。まぁ、次ぎの階級に上がるまでが今までより多く経験値が必要ということだろう。それに戦っていたのは全部野犬だけだったし(ナオユキの話ではこの草原には野犬とあと2種類の敵が出るらしい)あまりいい経験値稼ぎにはならなったみたいだ。

 ただ、近接型の野武士だからだろうか、筋力の上りがほかの能力よりもいい伸び具合だったのが救いだ。筋力が上がったおかげで野犬はあまり苦労せず倒すことが出来るようになっていた…………………。まぁ、まだ野犬しか倒していないから偉そうなことは言えないんだけどね。

 アイテムの中にある野犬の毛皮や牙は野犬を倒しているうちにドロップしたものだ。最初のフィールドで手に入るものだからあまり高価なものではないと思うが、売ればいくらかの金になると思うので、町に帰ったら売ろうと思っている。

その次にある薬草とか木の実、キノコは野犬を探して草原をうろうろしていたらたまたま見つけた。薬草はそのまま食べても体力が少し回復した。……………ただし味はものすごく苦かったけど……………。木の実やキノコも途中で見つけたものだ。正体不明としか表示されていないので名前はおろか食べてもいいものなのか、危険なものなのかすらわからないので、取りあえずお金になると思って持ち帰る。

途中で何か新しい敵に会うことを期待していたが、特にそんなことはなく、ひたすら来た道を戻るだけだった。



……………………。



……………………。



……………………。



 門を潜り、壱の町に戻ると相変わらず大通りは人でにぎわっていた。(ただしこの中の半数以上はNPCだけれども、まぁ三分の一くらいはプレイヤーなんじゃないのかな。)人で賑わう通りを歩き、朝に行った店を探す。アイテムを売るだけだからどこの店でもいいのだが、なんとなく入ったことのある店がよくてわざわざ朝に行った店まで歩いた。

 店に入ると相変わらず客はいなくて、店の中には店主のNPCしかいなかった。今回は買い物ではないので、俺は真っ直ぐにカウンターに歩いていき、メニューを開きアイテムを取出して買い取ってほしいことを伝える。店主はやけに人間臭い動作でアイテムを一瞥して買い取り価格を提示する。俺は特に抗議する必要もないので(というよりも、買い取りの相場が分からない)了承し金を受け取る。買い取り価格は全部で900キンだった。

 買取が終了して店を後にしようとしたが一つ気になったことだ有るのでダメもとで店主に聞いてみる。



「さっき売った木の実とキノコはなんて名前なんだ?」

「……………木の実の方は五つがキレの実、一つがザンの実だ。キノコの方はすべて普通の食用キノコだ。」



 木の実については後で攻略サイトで調べるとしても、キノコはただのキノコだったのね。木の実の方に名前がついていただけに何だか残念な気がする。

 取りあえず聞きたいことも聞けたので、俺は礼を言って店を後にする。



さて、店から出たはいいもののこの後何かすることがあると言えばないと答えるしかない。今日一日でそこそこレベルだって上がったし(ほかのプレイヤーと比べるとどうかは知らないが)、まぁ初日にしては上々ではないのか。ほかのプレイヤーに今日一日の成果とかを聞いてみたいが、いきなり知らない奴に声をかけても変な奴と思われるだけなのでやめておこうと思いながら、当てもなく大通りを広場に向かって歩いていく。その際周りの奴の装備とかをチラリとみてみるが、基本的に初期装備の奴が多いようだ………………。まぁ俺には野武士の初期装備しか分からないのだけれども、それでも三人に一人の割合で職業が野武士の奴がいる。やっぱり近接戦にあこがれる人が多いのだろうか。

それに比べ、あまり数を見ないのが陰陽師だ。というより陰陽師と呪術師の違いがよくわからない。だって、二つとも同じような衣装なのだから。この二つの衣装は何か狩衣っぽいやつで二つの職業で違いがあると言えば正直言ってない。というかさっきも言ったように分からない。慣れた人や本人たちなら分かるのかもしれないが、少なくとも初見の俺には分からない。



…………………………。



…………………………。



…………………………。


 なんて呪術師か陰陽師かの違いなんて、俺にはどうでもいいのでこの話は置いておこう。それよりも大事なのはこれからどうするかである。このまま今日は終わりということも案としてあるが、それでは何か物足りない気がする。でもいい案は浮かんでこないしどうするか………………。



 なんて悩みながら歩いていたら前を見たことがある人が歩いていた。まぁ、俺の見たことある人なんてナオユキを除けば一人しかいないんだけどね。……………そうですねリリンさんですよ。相変わらず小動物みたいな雰囲気だしてるリリンさんが俺の前を歩いていた。せっかく見つけたので声でもかけて行こうかと思い声をかけようとしたら、先に向こうが気づいてくれて声をかけてきてくれた。



「やっほーミコト君、朝以来だね。」

「そうですね。リリンさんはあの後何していたんですか?」

「私?私はNPCの職人さんのところに行って弟子入りしようとしていたところなんだよ。」

「弟子入りしようとしていたって、なら今は時間悪かったりするんですか?」

「ううん、問題ないよ。弟子入りに必要な条件はそろったけど、今日はもう時間もあまりないから明日しようとしていたんだ。」



 なんて笑顔で言ってくるので俺もつられてしまう。それにしてもリリンさんが弟子入りするために必要という条件とは一体何なのだろうか。



「必要な条件はね、今日一日で草原で野犬を五匹狩ってくることだったんだ。」



何でもないように言ってくるが、生産職で野犬と戦うには中々に度胸が必要なのではないのだろうか。それを何でもないように言ってくるこの人の度胸はもの凄いというしかないのだろう。絶句している俺を不思議に思ったのかリリンさんは俺を下から覗き込んでくる。畜生可愛いじゃねぇか。

しかし、なぜ生産職の職人で野犬を倒すことが必要なのだろうか。その点をリリンさんに聞いてみると、何でも、リリンさんがなりたいのは武器職人だそうで、それに弟子入りするために野犬を狩る必要があるという。これも稲荷参拝と同じように、クエストの一種であるらしく、これをクリアすることで弟子入りに必要なアイテムが手に入るらしい。



「一日で野犬五匹とか大変でしたね。」

「そうだね。でも友達と一緒だったからそこまで大変じゃなかったよ。」

「友達と一緒でも大丈夫なクエストなんですか?」

「うんとね、友達に周囲を警戒してもらっているうちに私が野犬を一人で倒していったんだ。それに友達は職業が野武士だから『気配察知』のスキルのおかげでサクサクいったよ。」

「それはよかったですけどそれって一人でやったことにはならないんじゃないですかね?」



 俺が指摘するとリリンさんは困ったように笑い「やっぱりそう思う?」と呟く。本人もそう思っているのかと俺が思っているとリリンさんは苦笑いしながら



「やっぱりミコト君もそう思うよね。確かに私も思うけど、職人職って筋力とか戦闘系能力ってあまりないんだ。」

「そっか……………………。スイマセン。リリンさんの大変さも知らないで失礼なことを言ってしまって。」



 なんということだ。確かに彼女の言うとおり非戦闘系職の彼女では野犬一匹でも大変なのだ。それを五匹狩るというのは相当なものであるから信頼できる人に周りを守ってもらうとかをしなくては到底達成できるものではないのだろう。それを俺は自分基準で考えてしまい彼女の大変さを理解していなかった。俺がそのことで落ち込んでいるとリリンさんは俺を励ますように「でも確かにミコト君の言うとおりだから気にしないで」と言ってくれた。……………………ホントこの人いい人過ぎるだろう。



「いやでもほんとにスミマセン。リリンさんの大変さを知らないで勝手に言ってしまって。」

「ううん、私も最初はミコト君みたいに思ったけど、実際にやってみてこれは一人じゃ無理だって実感したよ。」



 そういうリリンさんの顔には疲労の色が見える。大変だったんだなぁと思いながらもう一度謝罪しようとするとリリンさんはそれを手で止め、代わりに自分の友達とあってほしいと言ってきた。

 何が変わりなのかはよくわからないが、この後は特にすることもない(というかやることを探していた状態)なので了承する。リリンさんの友達とは一体どんな人なのか、気になるな。

 リリンさんの話によると今連絡を付けたので、もう少ししたら広場に来てくれるそうだ。それまでは何か時間つぶしをしようとのことだ。だが、今まですることがなくてぶらぶらしていて、リリンさんに会って友達を紹介するよ。と言われたからここにいるのだが、ここにきてまた時間つぶしと言われてもなにも思い付かないからどうしようか……………。



………………………。



………………………。



………………………。



 仕方がないのでリリンさんと一緒にブラブラしようということになった。何かを買うわけでもなくただ大通りを歩く。隣のリリンさんはあちこちの店の商品などを見て楽しそうにしているが、俺はただリリンさんの横をついていっているだけだ。別に店の商品を見るようなこともしない。なぜなら、というか俺はこういう買い物の仕方が苦手で、目的もなく店を渡り歩くことが苦手である。苦手ではあるが隣にいるリリンさんに嫌な思いだけはさせないように気を付ける。

 そうして二人で歩くことしばらくして、リリンさんがそろそろ広場に行ってもいいと思うから広場に行こうと言ってきた。その意見に特に反対することもないので、俺はリリンさんに続いて広場に向かおうとしたとき、丁度脇にあるうどん屋が目に入った。



……………………。



……………………。



……………………。



「しまった!!忘れていた!!」

「何っ!?どうかしたの!?」



 いきなり近くで叫ばれたリリンさんが驚いて俺の方を見る。まぁ驚かしてしまったのは誤るが、うどん屋で今日やるべきことを思い出した。何かと言えば「稲荷参拝」のクエストである。一日二回まで参拝が出来るのであと一回やろうと思っていてすっかり忘れていた。

 俺は急いでリリンさんにクエストのことを伝え、先に広場に言っていてほしいことを伝えると、リリンさんは快く承諾してくれて、先に広場へ向かってくれた。その時に友達にも俺が遅れることを伝えてくれるという。全くもってありがたいことだ。俺はリリンさんにはいくら感謝してもし過ぎることはないな、と思いながら彼女と別れ、来た道を戻り稲荷へと続く脇道へ急いだ。



……………………。



……………………。



……………………。



 走ってきたのでそれほど時間がかからずに稲荷へと着くことが出来た。走って来たのに全然息が切れていないことにここが現実の世界ではないことを実感しつつ、本殿へ向かう。今回のお祈り事は何にするかと考えたが、別に何か特別なことがあるわけでもないので前回と変わらず、「プレイ中に悪いことが起きないように」にした。今回もお供え物を持ってきていないが、時間がなかったからしょうがない。次の時こそ忘れずに持ってくるとしよう。

 お供え物はないが、一応お参りを済ませ急いでリリンさんたちが待っている広場へ向かう。帰り道は前回のように狐の鳴き声のようなものは聞こえなかった。だが、その代わりと言ってはなんだが、鳥居を出る時に後ろから声をかけられた。



「こんな人が来ないところへお主は二度も来るか。物好きであるな。」



 声に反応して後ろを振り向くと誰もいなかった。だけど人の声が聞こえたのだが、気のせいだったのだろうか。しかしそれにしてはやけにはっきりしていたのだが………………。



……………………。



……………………。



 取りあえずこのことは置いておくとして、今は急いて広場に向かうことが最優先だから俺は、足早に稲荷を後にした。ちなみに「稲荷参拝」の進行度は「壱の稲荷」の達成度が二四%に上がっていた。これは一律同じ進行度合いではないようだ。




 走りながら広場に向かうと、そこにはリリンさんともう一人女性がいた。その人はリリンさに比べてみると背が高く(もしかしたら俺より高いかもしれない)、リリンさんがほんわかした人ならその人はキリっとした人で、可愛いより奇麗という言葉が似合いそうな人だ。勿論容姿もずば抜けている。というかこのゲームの女性は全員美人なのかと思ってしまう(まだあった人は二人だが)。



 俺が速度を落としてリリンさんたちに向かって歩いていると、向こうの方から気が付いてくれて手を振っていた。

 俺はそれにこたえるように急いで二人のもとに向かうと。それを待ちかねたようにリリンさんが話しかけてきた。



「ミコト君早かったね。」

「ええ、思いのほか早く済んだんで急いできました。」

「そっか、じゃあ紹介するね。私の友達のサクヤちゃん。サクヤちゃんこっちは今日の朝に知り合ったミコト君なんだ。」



 サクヤと呼ばれた人は俺を見ると二コリを笑みを浮かべて手を差し伸べてきた。握手も求められているとわかり、俺もサクヤさんの手を握ると、サクヤさんから話しかけてきた。



「初めまして、サクヤです。リリンちゃんとは昔からの知り合いで一緒にこのゲームをやっているんだ。よろしく。」

「こちらこそ、俺はミコト今日からゲームを始めた初心者ですがお願いします。」



 お互いの握手が終わると、リリンさんが話しかけてきて、その隣でサクヤさんは何か考え事をしていたが、何か決めたように頷くと俺に話しかけてきた。



「ミコト君、一つお願いがあるのだけれどもいいかな?」



初対面の人にお願いするとは、と疑問に思いながらも「構わない」というとサクヤさんは真面目な顔で言ってきた。



「私と勝負してくれないか。」



………………………。



………………………。



………………………。



……………………………はい?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ