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-『気配察知』が『気配把握』に変化しました。-



 瞑想を始めてからどれくらいの時間がたっただろうか、そんなメッセージが流れてきた。目を開けて表示されている画面を見て確認する。



『気配把握』

…『気配察知』の上位スキル。より素早く正確に敵対意志のある者を感じ取れる。また、自身に敵対意志のない相手でも隠れている姿を見ることが出来る。

『気配察知』とは違い自分より段位の高い相手にも一定の効果を発揮できるが、 自分より上位の隠密スキルを持つ相手には効果が薄い。上限Lv:50



 なるほど、これなら狐の事も見えるという事になるのだろう。

 今までの『気配察知』は敵対する相手しか反応しなかったから、狐は対象外だったかレベルが上限になっても見えなかったのか。それに自分よりも格上の相手にも効果が発揮できるのは大きい。このスキルだったらあの稀主相手でももう少しまともな戦いが出来たのだろうか。



「……まぁ、取りあえずはこれで狐が見えるって言う事で一先ず落ち着いたのかな」



 このまますぐに狐がいるであろう拝殿の方に戻ってもいいのだが、時々見に来ると言っていたので、その時まではまだレベル上げをしていてもいいだろう。

 なんせ1日もこの神社にいるのだから、時間はたくさんある。一度崩した姿勢を正して目を瞑る。



「…………凄いな『気配把握』」



 目を瞑っていてもで自分がいる辺りの様子を感じることが出来る。実際に目で見ているわけではないのではっきりとした景色は見えないが、自分のいる場所を上から見ている様な感じだ。

 今のレベルはまだ1だが、それでも今いる参道から入った空地から、拝殿辺りまでは凡その把握が出来る。

 その範囲にいる人たちもなんとなく分かる。参道に一人、拝殿前の広場に二人、そして拝殿の中に二人ほぼ同じ反応の形をした人たちがいる。


 ここまで同じ反応をする人がいるのかと思ったが、今この神社の中に自分以外のプレイヤーがいるわけはないので、この同じ反応はすべてNPCである巫女さんのだろう。そして巫女さん以外にいる反応が一つ。消去法で反応の正体が狐だとは分かるが、巫女さんと違い狐の反応は



「……デカいし、強い」



 反応の強さが巫女さんたちとは桁違いだ。まぁここの祭神だから当然と言えば当然かもしれないが、それにしても比べ物にならない。

 狐の反応は拝殿の前の広場を行ったり来たりしていたが、参道の方に向きを変えてこっちに向かってきた。近づいてくるに比例して感じる反応の強さも上がってくる。

 今までは感じなかったが、こんなに大きな反応をしていたとは驚きだ。狐がドンドン近くにやってくる。それにつれて感じる反応も大きくなっていく。今は参道につながる道に背を向けて座っているが、自分の背中に狐の反応が伝わってくる。足音も聞こえはじめ、しばらくすると止まった。どうやらすぐ後ろまで来ているようだ。



「……どうやら無事にスキルが変化したようじゃの」

「分かるのか?」

「どことなく見られている感じがあったからの」

「そんなことまで分かるのか」

「まぁ、神様じゃからの」



 その一言で片づけてしまうのは、何とも凄い理論だと思いながら、瞑想をやめて狐の方に向き直る。



「…………凄いな」

「初めて見る妾の姿はどうじゃ?」



 自信たっぷりに言う狐の姿は想像を超えていた。勝手なイメージで普通にいるような狐色の一般的な狐を想像していたが、目の前にいるのは体長が自分と同じくらいの大きさの純白の狐だった。その顔はどことなく自慢気だった。



「して、どうじゃ。妾を見た感想は?」

「……なんか想像していたのと全然違った」

「ほう、想像とはどんなものじゃ?」

「普通の狐をイメージしていたんだけど、まさか白狐だったなんて思ってもいなかった。瑞獣じゃないか」

「瑞獣とはよく知っておるな」



 頭の片隅にあった知識を言うと、感心したように返される。「上瑞だっけ?」と聞くと「それは九尾じゃな」と返された。記憶違いかなと思ったが「白狐は中瑞じゃ」と言われた。

 しかし、改めて見てもデカいな。



「して、どうじゃ。新しいスキルの具合は?」



 グルグルと周りを回りながら聞いてくる。なんか前にもこんな風に聞かれたことがあったように気がするが、その時とは違い姿が見えているので、なんだかプレッシャーみたいなものを感じる。



「凄く変わった。それに『気配察知』でお前が見えない意味も分かった」

「ほう、そうか」

「それに感じ取れる範囲が広くて驚いたよ。ここから拝殿の中にいる巫女さんまで位置が分かるんだもんな」

「そこまで分かるか。それほどとは驚きじゃ」



 驚いたと狐は言うが、顔にはある程度予想はしていたような表情が浮かんでいたし、どことなく満足そうな顔だ。しかし、狐の姿が見えるようにはなったが、実際に触れるのだろうか。


 ふと疑問が浮かんで、気になって目の前に揺れている尻尾を触ってみる。手に感じるのはふさふさとしていて、程よい弾力。本物に触れたことが無いのでどこまでリアルかは分からないが、ゲームでここまで感じることが出来るのかと感心する。



「……何をするかと思ったら、勝手に尻尾を触るとは良い度胸じゃ」



 なんとなく怒気を含んだ声に目を向けて見れば、怒った顔をした狐がいた。勝手に触るのは拙かっただろうか。「まったく、姿が見えるようになってすることがコレか」そう言いながら、狐はまた周りを回り始める。


 何やら唸っているので考え事でもしているみたいだ。その姿を目で追っているとやはり揺れる尻尾に目が行く。次にやったら本当に怒られそうだから手を出すことはしないが、目はつられてしまう。



「……そんなに気になるか、妾の尾は」



 呆れたように言われるが、如何ともしがたいので苦笑いしか出ない。溜め息一つ付いた狐は「付いて来い」と言って参道の方へ歩いて行った。



「これから何かするのか?」

「これから仕事を手伝ってもらうぞ」



 狐に付いていき、参道に出て拝殿の方に向かって歩く。聞くとそう返ってきた。



「それじゃあ俺が何をするのか決まったんだ」

「うむ、お主でも問題ない仕事があったのを思い出してな、巫女がやるよりは効率が良いじゃろうと思ってなお主に任せることにしたわ」

「何をするんだ?」

「来れば分かる」



 拝殿を通り過ぎ、そのまま本殿の方に行くかと思ったが、拝殿を過ぎると、横に逸れ、続いている道を歩いて行った。

 しばらくと言っても数分程度歩くと道の先から音が聞こえてきた。何の音かはよく分からないが、何かを割っていているような音に聞こえた。



「なぁ、まだ場所にはつかないのか?」

「もう少しじゃ。辛抱せい」



 そう、隣の狐と話していると道の終わりに着き、さっき瞑想をした広場よりはいくらか広い広場に到着した。広場では男性がまき割りをしていた。聞こえていた音の正体はどうやらアレの様だ。



「俺がするのは薪割りか?」

「そうじゃ」

「薪ってここで何に使うの?」

「現実で使用しているのと同じ用途じゃよ。参道の入り口の鳥居の脇や拝殿前にある篝火に使うんじゃよ」



 狐はそう言うが、まさかゲームの中でもここまでリアルにやっているとは思わなかった。



「薪を使わなくてもどうにか出来るんじゃないのか?」

「まぁ、出来なくはないが、こうやった方が雰囲気が出るじゃろ?」

「そりゃ、ないよりは」

「開発者はこういった所に拘りを持っておってな」



 呆れた様に狐は言うが、なんで狐がそんなことを知っているのか気になるところだ。でも、今聞いたら長くなりそうな気がしたので、あとにしておこうと思い、疑問をしまう。


 「行くぞ」と狐に言われ、薪割りをしている男性のもとへと向かう。近づき狐が声をかけると男性は手を止め狐と何か話していた。

 しかし、この男性は神官なのだろうか。神官ならばこんなところで薪割りなどしていていいのだろうか?男性と狐を見ながら考えていると、話が終わったのか狐がこちらに戻ってきていた。

 男性はこちらに軽く頭を下げた後、拝殿に向かう道を歩いて行った。



「さて、話をつけてきたぞ。薪割りはさっき奴が居った場所に行けば説明が見れるから、それでやってもらう」

「なぁ、その前に一ついいか?」

「なんじゃ?」

「さっきの人は神官か?」

「まぁ、正確には覡じゃな」

「覡?」

「一言でいえば巫女の男性版じゃ。正確に言えば、巫覡と言って、巫は女性、覡は男性を言うんじゃ」

「神官とは何が違うんだ?」


尋ねると狐は難しい顔をした。


「そう言われると難しいが、神官はもっと公的な性格が強くなるからのぉ」

「……長くなりそうだな」

「ややこしい部分じゃからの。時間がある時にでも話してやろう。今は薪割りを頼んだぞ」

「了解」



 狐は頷くと、来た道を戻って行った。その姿が見えなくなるまで見て、俺も薪割りのために場所へ向かうことにした。







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