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壱の町

 ドキドキしながらの2話目です。拙い文章ですが楽しんでいただけたら幸いです。



 目を開けたらそこは異世界だった。……………なんてどっかの小説に似た表現になってしまったけど、俺にはそれ以外に自分の気持ちを表現できなかった。

 


 だって考えてもみてくれよ。目を閉じる前は自分の部屋だったのに、次目を開けたら違う景色になってるんだぜ。これを驚かずにいられるかって話だ。



 まぁ、ゲームの世界に感動するのはこれくらいにして、俺は中尾を探すためにあたりを見回してみる。



 ここはゲームを始めたプレイヤー達が最初につく場所で「壱の町」というらしい。気分が清々しくなる程どストレート名称だがそんなことは置いておいて、見た目は時代劇に出てきそうなそこそこな規模の町って感じだ。

 俺が今いる広場から城門に向かって一本の道メインストリートがあり、そこから何本か横につながる道が存在している。道の脇には露店が存在していて、最初の町にしては中々ににぎわっているような気がする。



 また、俺がいる広場はログインしたら最初に出る場所らしく、結構な数の人がいるし、新しく現れたりしてきているし、俺みたいに誰かを探している人もいるみたいだ。

俺もさっきから中尾を探しているが見つかる気配がない。システム上顔は変えられないからすぐに見つかると思ったんだが見つからん。あたりを見回しつつ広場内を歩いていると



「うわっ!!」



 すぐ近くで上がった声と体に感じる衝撃であわてて前を向くと、どうやら前方不注意でほかの人にぶつかってしまったようだ。俺は急いで謝罪する。



「申し訳ない!俺が前を見ていなくて、大丈夫か?」

「ううん、大丈夫だよ。こっちもあまり前を見ていなかったからお互い様だよ。」



 そういって俺を見てきたのは俺と同年代くらいの女性だった。肩にかかるくらいの茶髪に少したれ目でどことなく小動物を連想してしまう可愛らしい容姿だ。…………………つーかこのゲームは顔の変更ができないからリアルでもこの顔ってことは中々の美人さんだ。しかしこんな美人だったらテレビに出ていてもおかしくはないよなぁ………。



「あのー。もしもーし、聞いてますか―?」



 おっと、少し考え事をしていて黙っていたら前の人に不審がられてしまった。俺はあわてて口を開く。



「ああ、聞いてる聞いてる。問題ない。」

「そう?ならいいんだけど。でもごめんね、ぶつかっちゃって。」

「いや、こちらこそ申し訳ない。何かお詫びでもしないといけないのに、まだこのゲーム始めたばかりだから、あんまものを持ってないから勘弁してくれ。」

「いや!お詫びなんていいよ!………なら代わりに名前教えてよ。」

「それなら構わないけど。………俺はミコト言って、職業は野武士。よろしく」

「あたしの名前はリリン。職業は見習い職人です。よろしくね。」



 俺らはお互いに自己紹介した後プレイヤーカードを交換して別れた。何でも彼女も友人を探していた途中らしい。ちなみに余談だが、カードを交換するとき、交換の仕方をゲーム初心者の俺が分かるわけもなく、リリンに教えてもらった。





 リリンと別れてからしばらく俺はまた広場をぶらぶらしながら中尾を探していた。相変わらずアイツは見つからず、俺はただ歩き続けているだけであった。俺が何か連絡をとる手段を知っていれば、違う行動をとれたかもしれないが、生憎さっきまでカードの交換のやり方すら知らなかったど素人だ。そんなことを知っているわけもない。だから俺は歩き続けるしかないわけで、かれこれログインしてからほとんど歩き続けているが一向に中尾は見つからず、俺の気力もそろそろ尽きてきたし、いい加減ここを歩くことにも飽きてきたので、違う場所に移動してみることにした。



 まぁ、今日会えなかったら現実世界の方で連絡を入れておけばいい。というか、なぜ最初から会う場所とかの連絡をしていなかったのだろう。そのことに気づいてちゃんと連絡しておけばこんなに歩くことはなかったはずだ。そのことに気が付きやる気がなくなりかけたが、気を取り直しアイツにはログアウトしてから連絡するとして、ここからはこの「壱の町」の散策と洒落込むことにした。





 広場から門へつながっている大通りは中々の賑わいだった。結構な人がいるし通りの両脇には店がたくさんとは言えないが並んでいる。どの店にもそれなりに活気がありそこそこ繁盛しているようだ。だが、出ている店はどれもNPCの店で、プレイヤーが出している店は一つもない。これはさっきリリンと話して知ったことなのだが、生産職の最初の職業の見習い系は店を持つことができないらしい。修行をして条件を満たし上位職になってからでないと店を開くことは無理なのだそうだ。まぁ最初の町だしプレイヤーが店を開くのはβテスターだったとしてもまだまだ先のことだろう。





 そんなわけで俺はNPCの店に入ってみる。これから先、いろいろと必要なものがあるかもしれないからここで買ってしまおうと思ったわけだ。いくら初心者の俺でもアイテム無しでモンスターと戦おうと思うアホではない。

 店の中はあまり人がいなく外と比べると静かだった。中には店主らしきNPCが一人いるだけで正直繁盛しているとは思えない。俺はそんな店の中を移動しながらアイテムを見て行った。ちなみにこのゲームはプレイを始めると最初から少しではあるが、お金を持っている(お金の単位は・キン・でプレイヤーが最初に持っている金額は二千キンだ)。俺は店主に回復薬を頼もうとすると店主は何も言わず回復薬を出してきた。



「まだ、俺何が欲しいか言ってないのに早いな」



俺がつぶやくとどうやら店主にも聞こえていたようでぼそりと返答してきた。



「初期装備の旅人さんが欲しいものと言ったらたいていこれだからな。」



旅人さんって………確かに野武士の初期装備は時代劇の旅人そのままだけどさ

そのお金を使って一番安い回復薬(一個百キン)を十個ほど飼買って店を出た。店主らしいNPCは一言「毎度」と言ったきり喋らなくなってしまった。




 取りあえず、最低限のアイテムは買ったので店を離れ、何か面白そうな場所はないか再び散策を開始することにした。…………なんだか本来のゲームの趣旨とはだいぶ違うことをやっている気がするが、俺が楽しめていればいいのかなと考えながら大通りを歩く。

大通りにはアイテムを売っている店のほかに食べ物を売っている店もある。この「久遠の風」もほかのVBMMOにもれず、ゲームの世界で食事ができるし、味とか触感も現実と何ら変わりはしないが、実際に食事をして栄養を取るわけではないので注意が必要だ。だがそれでも匂いとかは本物そっくりで、俺は匂いにつられて店の前まで来て店で売っているうどんを頼もうとしたが、そこで自分の持ち金があまり残っていないことに気が付き泣く泣くうどんをあきらめた。



 さて、大通りはこれくらいにして次は大通りから続いている脇道に行ってみる。脇道に入ってみると、そこは大通りとは違い静かな雰囲気が漂っていた。なんとなく京都の脇道に近い感じだ。ここには宿泊できる施設が多く並んでいた。値段ピンキリではあるが、数えても数十件近い数の宿がある。俺はその宿の中を通り過ぎる。ここで泊ることも可能だが、そこまでログインしているつもりはないし、あまり宿の需要はないと思うのだが……



………………。



………………。



………………。



 まぁ、俺が気にすることでもないのでそこら辺はスルーして先に進む。つーかこの先って何があるんだか。店と宿は見つけたし他の必要な店だって大方は大通りにあった。それ以外に何があるんだろうか。これで道を抜けた先は城壁でした。とかだったら嫌だなぁ。なんてつらつら思いながら取りあえず歩いていく。




 奥に行くにしたがってプレイヤーは誰もいなくなっていた。まぁ、それは当然のことなのであまり気にはしなかったが、ただNPCさえいなくなっていったのは少し気になった。家はあるが人気が全くない。まだシステム面でアップデートが終わっていないのかなぁ。とか思ったりしたが足を止める気にはならなかった。なぜならというか、ここまでくるプレイヤーはいないだろうと思い、どうせなら誰も知らない情報とかがあるかもしれないからここまできたら行けるところまで行ってやろうと思ったからだ。



……………。


……………。


……………。



 そうして歩いていくこと十五分くらいで今まで両側に建物しかなかった道がいきなり終わり目の前が開け俺の目に入ってきたのは竹藪の中にひっそりと建っていた神社だった。


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