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壱の稲荷



「決闘が出来ないってどう言う意味だ?」


 目の前に出ているエラーと表示された画面を見て考える。もしかしてさっき話していたアップデートにひっかかったのか?


「サクヤさんこれの意味わかりますか?」

「どうだろう。相談所で言われたことにひっかかっていることはないと思うんだけど…………。」


 サクヤさんも腕組みをして考えている。これは決闘の後行く予定だった相談所に早めに言った方がいいのかな。

 俺とサクヤさんがうなっている横でリリンさんが俺に質問してきた。


「ミコト君はこのゲームの攻略はどこまで進んだの?」

「攻略ですか?それならとくには進めていませんけど」


 そういった瞬間隣のサクヤさんが「謎は解けた!」みたいな顔をして訊ねてきた。


「ミコト君は草原の主、つまりエリア1のボスは倒したかい」

「草原ってこの壱の町と弐の町の間にあるあのエリアの事ですか?」

「そう。あのエリアの事だよ。」

「それならまだ倒してませんけど。」


 そういうと、二人は納得が言ったように安堵のため息をついた。

 二人は納得したみたいですけど、俺はまだ理解していないんで説明してほしい

な。


「あの、一体どういう意味なんですか?」

「ん?ああ、そうだね。これからキチンと説明するけど、結論だけ言えば私とミコト君は決闘が出来ないってことさ。」


 それは状況というか、さっき身を以て体験しましたけど、その理由が知りたいです。


「その理由って何なのですか?」


 俺の質問にサクヤさんとリリンさんは「少し長くなるから座って話そう」と言って近くの椅子に腰かける。


「まず、私とミコト君が決闘できないのはシステムトラブルとかが原因じゃないんだ。原因はむしろ私たちの方にあるんだよ。」

「原因が俺たちの方にあるってどういう意味ですか?」

「これはこのゲームが開始されて一週間くらいたった時にあるプレイヤーからの苦情というか、お願いがあったんだ。」

「お願いですか、それはどんな内容だったんですか?」

「決闘に関する苦情とお願いでね。そのプレイヤーはゲームを初めてすぐにほかのプレイヤーから決闘の誘いを受けて決闘したそうなんだ。だけど自分は初期装備で相手はそこそこの攻略組で、装備もいいものを着ていたからすぐに負けてしまった。そこでその負けてしまったプレイヤーはゲームの進行度に差があるプレイヤーが決闘するのは勝敗の結果が目に見えていて、一方的なものになってしまうから、決闘をする際はレベル等で制限を付けてくれないかというお願いを運営に出したそうなんだ。」


 確かに、レベル差のあるプレイヤーと戦うのは結果が目に見えているからな。

 このゲームには、決闘時にお金やアイテムの取引が強制ではないから一方的になくなるという事は無いけど。(設定で取引を許可することが出来るが、それを設定する権利はレベルの低いプレイヤーにあるという)決闘で負け続きというのも嫌な気分だし、確か負けが続くと何かしらのペナルティーがあるんだっけ?


「聞いた話だとあるらしいね。まだそれに該当した人がいたかどうかは分からないけど。」

「それで運営はどう対応したんですか?」

「対応は、ある程度のランクごとでないと決闘が出来ないようにするという事だったんだ。」

「その対応がさっき俺とサクヤさんが決闘できなかった理由になるんですか?」

「なるよ。この対応策のある程度のランクというのは私たちの階級で分けているわけではないんだ。」

「何でですかね。階級で分けた方が運営も簡単じゃないのかな。」

「階級が高い=強いというわけではないからね。階級が低くとも壱の町にいるよりは弐の町に行ってそのエリアで戦った方が経験値も高いしいい素材の手に入るから、装備の面で強くなれるしね。」

「それはそうですけど、それ以外でどう対応したんですか?」

「それが私たちが決闘出来なかった理由でね。ミコト君は草原の主を倒していないと言っただろう。」


 サクヤさんの言葉に頷く。


「このゲームでは決闘を制限するラインを、各層のボスを倒したかで決めることにしたんだ。つまりボスを倒していない人が決闘できるのは倒していない人たちとだけみたいな感じだね。」

「ボスを倒したかで決めるなら、俺がサクヤさんと決闘出来なかったのは」

「そう、私はすでに草原の主を倒しているんだ。だから、運営が設けた制限に引っ掛かってしまったんだ。」


 成る程、それが理由だったのか。確かにこのルールなら、ボスを倒した=ある程度の力を持っているといえるから、制限の基準にするのも理解できるな。


「サクヤさんはいつ頃主を倒したんですか?」

「一週間位前かな。リリンも一緒に倒したんだよ。」

「え!?リリンさんも一緒だったんですか。」

「そうだよ。私が突破したのが意外だった?」

「そりゃあ、そうですよ。だってリリンさんは生産系の職業じゃないですか。」

 

 俺の反応にリリンさんは「確かに、意外だよねぇ」と苦笑した。


「でも、生産系でもボスをクリアするのは重要なんだよ。」

「そうなんですか?結構リスクが高い気がしますか。」

「まぁリスクは高いけど、ボスの貴重な素材とかがノーコストで手にはいるからね。倒したプレイヤーが私たちに売るっていう手段で手に入れることが出来るけど、それじゃあコストがかかっちゃうしね。」

「成る程。」

「只リスクは高いから、コストとどっちを取るかは人それぞれだね。私みたいにサクヤちゃんみたいな戦闘系の職業の友達がいる人は直接採りに行く人が多いんじゃないかな?」


 そうなのか。二人はもう主を倒していたのか。


「今回の事は完全に俺の方が悪いですね。スミマセン」

「そんなこと無いよ。私たちも事前に確認しなかったし、ミコト君はアップデートの内容を知らなかったから、此方から伝えれば良かった。」


 サクヤさんが謝ってくれる。でもなんか申し訳ないな。


「一応決闘ができない理由は分かったけど、この後どうするの?」


 リリンさんが口にする。確かに決闘は出来なくなったからこれから相談所に行くという事になるのかな?


「うーん、これから相談所に行くのも悪くはないけど、ちょっと暗くなってきたし、それは明日にしないかい?」


 サクヤさんの指摘に辺りを見回すと確かに暗くなってきていた。メニュー画面で時間を確認すると確かに暗くなっていく時間だった。


「これから行ってもいいんだけど、ゲームの中とはいっても何があるか分からないから、暗くなってからの外出は避けた方がいいと思う。それに私たちはこれからここで生活するわけだからずっと起きっぱというわけにもいかないよ。」

「そうかな、サクヤちゃんは考え過ぎかもしれないよ。どうするミコト君。」


 リリンさんが意見を聞いてきた。リリンさんは今行ってしまおうという顔をしていた。


「サクヤさんの言うとおりに今日はここで解散にしておきませんか?」

「えーミコト君もそっち?」


 リリンさんが不満そうに言う。


「今日行った方が早く終わりますけど、サクヤさんが言った通りにゲームの中とはいえ何が起きるかわかりませんし、夜に女性が行動するのはあんまりよくないと思いますよ。」

「うーん、そうかな?」

「リリン、あんまり言ってミコト君を困らせちゃだめだよ。」

「でもサクヤちゃん今日行った方が明日出来ることが多いよ。」

「それはそうだけど、ミコト君は私たちの事を心配していってくれたんだよ。」

「……分かった。あんまり言って迷惑かけるのもあれだし、今日は帰ろうか。」

リリンさんの声でこの場はお開きになった。二人はこの後どうするのだろうか。

「ミコト君はこの後はどうするんだい?もう宿に行くのかい?」

「二人はどうするんですか?」

「私たちは今日はもう終わりにして宿に行くよ。途中でご飯でも食べようかなと思ってるけどね。」

「この世界でご飯って必要なんですかね?」


 この世界はゲームの世界、食事が必要とは思えないのだが、相談所で食事は取ってくださいとでも言われたのだろうか。俺は行ってないから分からないけど。


「相談所でも言われたよ。なるべく普段通りの生活をしてほしいってさ。この世界での食事の重要性はあまりないけど、それでも食べることによってある程度の楽しみが出来るように作ってあるんだって。」

「そうなんですか。」

「そういうわけだから私たちは行くね。ミコト君も一緒に食べるかい?」

「せっかくのお誘いですけど、夜になるまでまだ少し時間があるので、外に行って段位上げでもやってきます。早く主を倒さないといけないですしね。」

「そっか、気を付けてね。」


 サクヤさんとリリンさんは稲荷を出て行った。二人が行くのを見て一緒にご飯食べに行けばよかったなと思ってしまう。

 何せリアルじゃあんまり女性とご飯を食べる機会なかったし。二人がいなくなると、俺は「壱の稲荷」から「弐の稲荷」に移動する。移動した先には狐の気配があった。


「戻って来たか。あの二人はどうした?」

「あの二人なら今日はもう宿に戻るってさ。」

「ふむ、まあそろそろ夜になる。女子が動き回る時間ではないしの。」


 狐がこちらにやってくる(感じがする)。俺は境内にある竹藪の中に入って瞑想の準備をする。さっきは二人に段位上げをすると言ったが、今俺がやることと言ったらこれをするのが最優先だ。


「帰って来て早々やることがそれか、お主は相当暇なのかそれとも、さみしいのかどっちなのだろうな。」

「やかましい、気が散るから少し静かにしてくれ。」

「やれやれ、じゃがお主もう少しで『気配察知』が上限に達するぞ。」

「え?!まさかそんなに早く終わるわけないだろ。」

「嘘だと思うなら自分のステータスを見るのじゃ、妾が言っていることが真であるかが分かるぞ。」


 狐に言われるままにステータスのスキル一覧を見る。

 

 ・気配察知Lv48…周りの状況を察知する。Lvが高いほど広範囲になり正確に分かる(上限50)

・幹竹(割)Lv4…上段から振りかぶる攻撃。基本的だが極めると威力は絶大・

・横薙ぎLv3…横に水平に剣をふるう。使いこなせば攻撃なども切れる。

・連閃Lv3…刀で複数回敵を攻撃する。回数はレベルが上がると増える。


 思った以上に上がっていた。


「ホントだ。でもなんでこんなに早く。」

「それは妾が教えた瞑想のおかげじゃ。敵と戦うと同等の経験値が入るからな。」

「反則すぎだろこれ。でも瞑想がなんで。」

「それは妾も知らん。そういう風になっておるんじゃ。瞑想の事を詳しく知りたかったら現実世界の坊主にでも聞く方がいいじゃろ。」


 まあごもっともな意見だな


「それでお主よ、瞑想が終わったらどうするのじゃ、このままの調子ならすぐにでも瞑想は終わりそうじゃよ。」

「ああ、瞑想の次にやることは決めてあるよ。」


 狐の質問に一度崩してしまった瞑想の姿勢を戻しながら話す。これはさっきサクヤさんとリリンさんと話していた時から決めていた。


「ほう、して何をするつもりなのじゃ。」


 狐が興味ありといった感じの声で聴いてくる。俺は話したら瞑想するから静かにしてくれよと狐に注意しつつ言う。


「草原の主を倒しに行く。」













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