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壱の稲荷

今回キツネとの会話は二人の間だけの念話という形になっており、会話の表示も『』にしてあります。わかりにくいですがご確認ください。

「いい所なんだよ」


 と言ってサクヤさんが連れてきた場所はおそらくこのゲーム内で俺が一番よく知っている場所の「壱の稲荷」だった。自分の秘密の場所を教えたように笑っているサクヤさんごめんなさい。

 あなたより俺はこの場所をよく知っています。


「サクヤちゃん、この場所がお気に入りなのは分かったから、早くミコト君に相談所でのことを教えてあげないと。」

「ああ、そうだったね。失念していたよ。」


 そういって、二人はこっちを向いて、話し出す。


「まず、私たちが最初に言われたのがいきなりのログアウト不可能についての謝罪だったんだ。何にも事前連絡なしにことを運んでしまってすみませんでしたってね。」

「それはそうでしょうけど、これに対しての保障ってどうなるんですか?」

「このログアウトできない状態でたとえば、次の日に仕事で外せない用事とかがあった人とかに対してはこのゲーム本社からある程度の措置が取られるらしいけど、基本的に誓約書の範囲内だってさ。」

「誓約書?」

「ゲーム開始前に読まされなかった?やたら長いやつ」

「そういえばそんなものもあったような気がしますね。」

「…………きみ携帯端末のゲームとかする時そういった奴読まないで始める人でしょ。」

 

 リリンさんにジト目で言われてしまった。確かに俺はそういった事前の書類とかは読まないで始めるタイプだった。

 だってアレ別に読まなくても、普通に遊ぶ分には問題なかったし。

 リリンさんに言われて黙った俺を見てサクヤさんが口を開く。


「今回の事はさっき言った通りいきなりこの事で申し訳ないってのが相談所の人たちの最初の言葉だったんだけど、話の内容は大体三つの事で一つはさっき言ったログアウトによる損害について、これの内容もさっき言った通りで基本誓約書の範囲内で行うってことだから、詳しくは誓約書を見てほしいってさ。それでも分からないことがあれば、相談所に来てほしいってさ。」

「じゃあまずは誓約書を見ることから始めますかね。」

「それはそうだが、ミコト君は何か不都合なことがあるのかい?」

「詳しくは言えませんけど、ある事にはあるんですよ。」

「そうなのか、なら早いうちに読んで相談所に行くといいよ。」


 少し聞いただけでサクヤさんは聞くのをやめた。確かこういったゲームではプライベートなことを無闇に聞くのは禁止事項なんだっけ?ネチケットだったかな?


「そうします。それで、ほかの事は何なんですか?」

「ああ、二つ目は実験中の私たちプレイヤーの休む場所についての事だね。これはさっきここに来る途中で通った道にあった宿を利用することになっているんだ。宿はどの町にもあるらしいから、いちいち『壱の町』に戻ってから休むってことはしなくていいそうだよ。」

「それって新しい街に行くたびに新しい宿に泊まるってことですか?」


 毎回新しい場所で休むっていうのは中々に面倒だな。


「そうじゃないらしいよ。確か、宿に入る場所は各町にあるんだけど、一人のプレイヤーが使うことが出来る部屋は一つだけなんだって。」

「つまり、入り口がたくさんある家の思ってくれればいいらしい。所謂マイルームという奴だな。」

「はあ、でもなんか不思議ですね。『壱の町』でも『弐の町』で宿に入っても、同じ部屋に入れるなんて。」

「そういう事。まあ、ゲームだからこそ出来ることだけどね。」


 今起こっていることがまずゲームの中の話だし。データ上の事だから可能なのだけれども、何か不思議な感じ。


「それで三つ目の事は何なんですか?」

「三つ目はこの実験には直接関係のある事じゃないんだけど、ゲーム全体でのアップデートの事についてだね。」

「アップデートの内容は何ですか?」

「結構細かい部分があったから、あとで自分の目で確認してほしいな。」

「そうですか。」


 という事は後であの人がいっぱいいる相談所まで行かないといけない訳か。あの人ごみはあまり行きたくないな。現実でも人ごみは好きじゃなかったし……。


「相談所に行かなくても、大丈夫だよ。」

「どういう事ですか?」

「これも相談所で言われたことなんだけど、アップデートの内容については後で各プレイヤー宛に運営からアップデートの詳細が載ったメールが届くんだってさ。」

「これはアップデート内容が細かくて、相談所の人たちがいちいち説明するのが大変ってことで、メールって形になったんだって。」

「まあ、いちいち説明するのは大変ですからね。」

「まあ、相談所の人はストレートにそうとは言わなかったけれど、多分そうなんじゃないかな?」


 リリンさんが苦笑いしながら言っている。確かに細かいことを何回も言うのはそれだけで辛いし。


「そういうわけで後でミコト君もメールボックスを見て見るといいよ。多分運営から重要なお知らせってことでメールが来ているはずだから。」

「分かりました。そういえばそのシステムアップデートっていつから適応されるんですか?」

「うん?適応はさっきのお知らせが来た時から適応されているよ。」

「それじゃあアップデートの内容を知らずにプレイするんですか。それってなんかおかしくないですか?」


 俺の指摘にサクヤさん、リリンさんの二人がそういえばといった顔をする。


「確かにそれは不公平というか知らずのうちにルール違反とかしてそうだね。」

「でも、さっきの相談所の人はフィールドでのエンカウントの変更とかがメインって言っていたから、今はそんなに関係ないんじゃないかな?」


 三人で考え込むが、プレイヤーである俺たちが考えても分かることではないのでこの件は置いておくことにした。


「後で三人で相談所に行かないか?」


 サクヤさんからの提案に賛成してこの話はおしまいにした。


「ところでミコト君。久しぶりに私と決闘しないかい?」

「決闘ですか?」

「うん、久しぶりだしどれ位強くなっているか知りたいから。」


 うーん、サクヤさんがもの凄く楽しみな顔をしている。これは断ったらなんかとてつもない罪悪感が出てきそうだ。


「いいですよ。設定とかはこの前と同じで大丈夫ですか?」

「うん、それで大丈夫だよ。」

「了解です。………………ところでこんな神社の中で決闘してもいいんですかね?」

「うーん大丈夫なんじゃないかな?ヘルプの中には特に指定されている場所にここは入ってなかったし。」

『大丈夫じゃよ。問題はない、存分に戦うがよい』

「ならいいんですけど。(急に話しかけてくるな。二人はお前の事が見えてないみたいだから、余計な事を言うな。反応する俺が変人に見えてしまう。)」


 狐からの了解も得たし、問題はないのだろう。アイツ見えないけどこの神社の気にしていても仕方がないので、決闘の準備を進めていく。

今回も相手の体力を先にゼロにした方が勝ちというルールだ。そしてスキルの使用も可能という形。

 サクヤさんからの決闘申請のウィンドウの「是」をタッチして決闘の設定は完了………。

すると、いきなり警告音が鳴り、俺とサクヤさんの前にウィンドウが現れた


〔エラー:決闘を開始できません。お互いのプレイヤー情報を確認してください。〕


「「え?」」


 俺とサクヤさんの声が重なる。決闘が出来ない?



………………………。


……………………。


…………………。






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