手紙ー壱の町
久々に更新できました。書くのに時間を割くのが大変でした。
「「…………………………………」」
最初にあったのは、俺と狐両方の沈黙だった。新しいシステムの実装と言われても、正直ピンとこないものだ。そもそも、いつ実装されるとかが本日としか書いてないので、今日の何時ごろからなのかが知りたい。
この手紙を受け取った時点からもうその新システムが始動しているのだろうか。正直、この手紙だけでは分からないことが多いので、一度ナオユキとかに聞いてみるのがよいのだろう。
そのことを隣にいる狐に言おうと、俺は体を狐の方に向けて声を掛けようとしたが、狐の雰囲気は普段とあまり変わらないものだった。
こっちはいきなりログアウト不可能という事にまだ、現実味がなくて軽くフリーズしているというのに、この狐が出している空気はこのことに対して全く興味がないというばかりのものだった。
最初に比べたら、俺も随分と気配を感じられるようになってきたんぁ。なんてどうでもいいことが頭に浮かんだが、それはひとまずおいておいて、俺は狐(がいるであろう空間)に声を掛けた。
「なぁ、このことについてどう思う?俺としてはさっぱりな状況なんだけど。」
「さっぱりなら、手紙に書いてあった通り相談所に行けばいいじゃろ。妾に聞かれても答えられぬ質問じゃよ。」
まぁ、確かにこの狐の言うとおり、「壱の町」にある相談所に行くのが、一番確実な情報を得られるので、行ってみるのがいいんだろうな。
いつまでも、ここに居ても得られる情報は無いんだし。
「用が済んだら、きちんとここに戻ってくるのじゃぞ。」
「………………なんで俺がここに戻ってこないといけないんだよ。」
「いや、別にここ以外にお主に行く場所があるのであれば、そこに行けばよいのじゃろうが、お主ほかに行く場所あるか?」
「………………行ってくる。」
「うむ。気を付けるのじゃぞ。変な人に声を掛けられてもついていくなよ。」
「行かねえよ!!」
俺が、ここ以外に行くところがないと知っていてあえて訪ねてくるあたりあの狐は性格が悪い。しかも堪えられなくなっていた時アイツ絶対笑ってた。今はまだ姿が見えないからそんな感じがするだけだが、十中八九笑っていた。
最後に言ったことは俺を何歳だと思ってんだ。あの送り出し方。お前は俺の母親かよ!
「ああ、そうじゃった。一つ言い忘れておったわ。」
「なんだよ。」
わざわざ呼び止めることだろうから、何か重要なことなのだろうか?
「ちゃんと帰りに妾への貢物を買ってくるのじゃぞ。」
「言う事はそれかよっ!」
「?それ以外に何がある。今日の分の物を貰っていないだろう。あ、今回はそばが食べたいから、そばにするのじゃぞ。」
「はいはい。(嫌がらせでたぬきそば買ってきたら、そうなるんだろな)。」
「念のため言っておくが、きつねそばじゃぞ。たぬきそばなんぞ買ってきたらどうなるかわかっておろうな。」
「分かったよ、うどんでもそばでも、ラーメンでもお揚げが乗っていればいいんだろ!」
「待て。ラーメンにそれは許されん。」
「やかましいわ!ちゃんと買ってくるから心配するなよ!」
狐の「買ってこなければお仕置きじゃぞ~」という声に送られながら俺は「壱の町」に向かった。
久々に来た「壱の町」はほとんどのプレイヤーが次の町に進んだ今では想像もできないくらい人で賑わっていた。おそらくこの人だかりは俺と同じく手紙について聞きに来たプレイヤー達なのだろう。
この人だかりの向こうに手紙にあった相談所があると思うのだが、これをかき分けて行く自信はないし、やったら周りからもの凄い反感を食らう事確実なので、おとなしく列に並び自分の順番を待つことにしよう。
「あれ、ミコト君じゃん。久しぶりだね。」
さて並ぶかと思った矢先に横から声を掛けられる。誰だと思って声の方を振り返ると
「リリンさんにサクヤさん。確かに久しぶりですね。」
俺の数少ないフレンドのリリンさんとサクヤさんが二人そろって立っていた。
「ミコト君はどうしてここに…………てってもしかして手紙にあった相談所に行こうとしてた?」
「ええ、そうです。あの手紙だけじゃ分からないことがあったんで、相談所があるっていうから聞きに行こうと思って。」
「そうなのか、私たちはさっき行ってきたばかりなんだ。良ければ私たちの方から教えようか?あそこで聞くのはまだ時間がかかるようだから。」
願ってもない話だ。正直あの列に並ぶのは骨が折れそうだったから、二人のお誘いはありがたかった。
「ぜひお願いします。」
「決まりだ。ここから少しいた先に落ち着ける場所がある。そこで話すとしよう。」
二人に先導されて俺はサクヤさんが言う落ち着ける場所へ向かった。
大通りから一本脇に入り、たくさんの宿がある道を通る
「この宿はこれから重要になっていくんだって、運営の人が言ってたよ。」
通り過ぎる時にリリンさんが教えてくれた。この宿が必要になるってことはおそらくログアウト不可能と何か関係があるのだろうか。
宿のある道をさらに歩く、元々人の気配が少なかった場所からさらに人の少ない方に歩いていく。
しかし、この道どこかで通ってみたことあるんだけどな。
俺は考えながら歩いていると、前のサクヤさんたちが止まった。つられて俺も顔を上げると
「さあ、ついたよ。ここで話し合おう。」
「…………………ここでですか?」
「そうだよ。この前見つけて、人があまり来ないんだけど、すごく綺麗な場所だから気に入っているんだ。」
サクヤさんが嬉しそうに話している場所は俺も良く知っている「壱の稲荷」だった。通りで途中の道を知っているわけだよ。だって俺も通った道だもん。
「ん?なんじゃ随分と早い帰りじゃな。言ったものは買ってきたか?」
俺の気配を感じたのか狐がこっちの稲荷へとやってくる。サクヤさんたちには見えていないのだろうか?
あとごめんね。こんなに稲荷へ戻ってくるとは思っていなかったから、まだきつねそば買ってきてないんだ。
読んでいただきありがとうございました。




