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どうしようもない男


ある時俺は運命的な出会いを果たした。


とあるレストランでウエイターをしていた彼女を見つけた時、直感的にこの人だ!!と思ったのだ。


可愛くてちょっと小柄な彼女は、以外と気配りもできていてまさに俺の理想の彼女といった感じで。


次の日さっそく花束を持って彼女にプロポーズを申し込みに行った。


結果は・・・まぁ、振られたわけだが。


それでも俺は諦めなかった。


何度も何度もしつこいくらい、でもなるべく彼女が不快にならない程度にアタックを続けた。


しかしいくら彼女にプロポーズをしても返事はなしのつぶて。


俺は客で、彼女は店員。


少しづつ態度は軟化してきているが、いまだにその垣根を越える事すら許してくれない。


いくら俺が結婚してくれと騒いでも、彼女が俺のことを名前で呼ぶことすらなかった。


それでもめげずにプロポーズし続けてそろそろ一カ月。


相も変わらず彼女は俺のことを『お客様』と呼んでいる。


そろそろ名前で呼んでほしいものだけど、そう言ったら彼女は少し悲しそうな顔をして言った。


「あなたは、お客様ですから」


その言葉に悲しくなった。


ひどくショックも受けて、その日は何もせずに帰ってしまった。


暫く落ち込んで、ちょっとだけ泣いて、彼女の明確な拒絶に沈んでいた時、ふと気がついた。


今まで相手の都合も聞かずに結婚してくれ結婚してくれとぶしつけに頼み込んでいたが、好きだとか、愛しているだとか、そんな風に自分の気持ちを告白したことなどただの一度もなかったという事を。


泣きながら友人の一人に相談したところ、ひどく呆れたように一度頭を叩かれた。


「バカだろお前。普通はまず自分の気持ちを伝えて、そんでもってお付き合いスタートだろうが。いきなり見ず知らずの男に結婚してくれって頼まれても困惑するだけだし、気持ちの一つも伝えないまま結果だけくれと言われても、ヘタしたら体目当てとか思われるぞ」


容赦ない言葉に全俺が泣いた。


もちろん、自分の馬鹿さ加減にだ。


とりあえず明日彼女に会いに行く前に可愛らしい花束を買っていこう。


そしてもう一度、今度はきちんと言うのだ。


「好きです。貴女のことを愛しているのです」


そう言ったのは出会ってから三か月目のよく晴れたある日のことだった。


彼女が待っていたのはプロポーズではなく愛の告白だった。


不安にしてごめんなさいと、平謝りしたのを今でも覚えている。



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