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精霊に愛された娘  作者: 宵月氷雨
第一章
16/57

第12話【改】 宰相補佐官、苦労する

11/21 改稿しました。

今回長いです。切る場所が見当たらないのでそのまま投稿します。




 目の前の出来事を遠い世界のことのように眺めていたリヒトは、ばんばんという音にはっとした。


(と、止めなくては!)


 このままでは次期国王が死んでしまう。

 でも自分なんかより遥かに身分が高い彼らをどうやって止めればいいのだろう。割って入るという選択肢はない。

 どうしよう。

 そんな場合ではないというのに本気で考え込んでしまったリヒトの横を、誰かがすっとすり抜けた。

 翻る藍の衣。

 刹那、何かきらきらしたものが閃いた。

 ごつ、という鈍い音とともに、見目麗しい兄弟は頭を抱えて座り込む。

 うわ、またやったよーと半笑いでシーグレイの方を窺うと、彼は手に持ったものをくるりと回した。よく見ると、それは、鞘だ。おそらく短剣の。


(もしかして殴ったのって、あれ……?)


 ぎょっとしたリヒトの視線に気付いた――あるいはとっくに気付いていた――シーグレイが、口許に非の打ち所がない笑みを浮かべた。

 リヒトの背筋が冷たくなる。あれはやばい。

 あの笑顔は、非常に、ものすごく、やばい。

 この状況下でそろそろと兄弟から距離を取ったリヒトの行動を、誰が責められようか。

 おそらく宰相を知る者ならば、無言で肩を叩いてくれるに違いない。


 宰相がこの若さでそうと認められているのは、能力の他にもこういった点で優れているからだった。いざという時の度胸、大の大人をも黙らせる気迫、物怖じしない性格。

 いくら能力が高かろうと、気弱で不安そうな宰相になど誰も従わない。

 シーグレイはそれをちゃんとわかっている。ずっと前宰相である養父のやり方を傍で見てきたのだから。

 ――けれどその迫力は、たまに別の方向にも発揮されるのだ。

 平民出身と言われる(リヒトはたまに疑いたくなる)宰相が、腕を組んで王太子とその弟の二人を見下ろす。

 落ちた影に顔を上げた兄弟の顔から、さぁっと血の気が引いた。


「……私は忙しいんです」


 びくっと姿勢を正した二人は、切羽詰まった顔をした。まるで喉元に剣を突き付けられたような。


「アルフレッド、私は別に彼女の話なんてしなくてもいいんですよ。聞きたくないなら帰ってください」


 少し前と同じような台詞。

 どこまでも穏やかな声で紡がれたそれに、王太子が震え上がった。


「ユーリ、あなたもです。アルフレッドをどうしようと私は別に構いませんが、喧嘩なら外でやってください。迷惑です」


 冷や汗をかいてあたふたしている王太子とは違い、ユリウスの行動は速かった。

 正座して額を床に押し付けたのだ。


「ごめんなさい」


 一言。

 何の飾りもないただそれだけの謝罪は、どうやら効を奏したらしく、シーグレイはやっぱり笑顔で「いいですよ」と言った。

 宰相に土下座する王子。

 王子に土下座させる宰相。

 ……どっちが悪いんだろうと、リヒトは現実逃避気味に思った。

 憐れなのは取り残されたアルフレッドだった。

 ほっとしたように立ち上がったユリウスを見て逃げるように立ち上がりかけ、そして凍り付く。

 原因は言わずもがな、だ。


「アルフレッド、悪いことをしたらどうするんでしたっけ?」

(鬼だ……)

(後ろに鬼が見える……)


 アルフレッドはかわいそうなくらい震えていたが、そんなことで甘い顔をするシーグレイではなかった。

 一層光り輝く笑顔に、アルフレッドが体中の力を振り絞って言った。


「あ……謝る」

「そうですね。ユーリはそうしましたしね。――それで?」

「……ごめんなさい…」


 しおしおとうなだれたアルフレッドに満足そうに頷いて、シーグレイはようやく妙なプレッシャーを収めた。穏やかな笑顔に戻ってさっきまで座っていた椅子に腰掛ける。

 優雅にコップを取り上げるシーグレイに背を向けて、ユリウスはアルフレッドの傍に膝をついた。


「あの……ごめん、兄さん」

「いや、余が悪かったのだ……」


 こうして不毛な兄弟喧嘩に決着がついたのだった。












 テーブルを囲んだ一同の前には、先程シーグレイが二人を殴るのに使われた鞘を持つ短剣が置かれていた。

 柄も鞘も紫がかった紺色。紫紺色、という色だ。

 鞘には銀色で繊細な意匠がこらされているが、ごてごてしてはおらずすっきりとしている。まるで星が瞬く夜空のような短剣。

 そしてシーグレイの髪と瞳の色に、とてもよく似ていた。

 おそらく、それほど高価な物ではない。

 所々色が剥げているし、よく見ると銀の意匠にも拙さが窺える。

 それでも不思議な美しさを持つ短剣に、三人は見入っていた。


「――それはね、ティリエルにもらったものなんです」


 普段の穏やかさとはまた違った声で、シーグレイは言う。

 彼は唇を湿らすようにジュースを一口飲むと、コップを置かずに続けた。


「ユーリは繰り返しになりますが、私とティリエルの兄は腐れ縁で、お互いが五つの頃から知っています。ちょうど養父(ちち)に引き取られた頃に『お前も友達くらい欲しいだろう』と連れていかれまして」


 シーグレイは、前宰相ヴィンセントの養子だ。

 放浪癖のあったヴィンセントが、ある日どこからか「拾った」と連れ帰ってきたのがシーグレイだと聞いている。


「『お前と気が合いそうな奴がいるから』と言われて引き合わせられたのが彼――シュウランです。スカーレット家の長男で、上から二番目ですね。……確かに、私と彼はとても気が合いました。話をするのがとても楽しかった」


 シーグレイが静かに微笑む。

 警戒心剥き出しの彼を一目見て、シュウランは開口一番こう言ったのだ。


『君、せっかく綺麗な顔してるのにそんなにふさいだ表情じゃもったいないよ』


 使えるものは使わなきゃね、と五歳にして言ってのけたシュウラン、それを聞いて『こいつとは友達になれる』と思ったシーグレイ、同じく五歳。

 ヴィンセントは打ち解けた二人を見て、狙い通りのはずなのに「早まったか……」と後悔しそうになったとか。


「スカーレット伯爵家の方々はなかなか個性的でして。シュウランもいつも他人を喰ったような笑顔で何考えているのか全然わかりませんでしたし」


 黙って聞いていた三人は、それは宰相もだろう……と思ったが口にはしなかった。

 シュウランがシーグレイと仲良くなれた理由がよくわかる。


「ついでですから、彼の家族について少し話しておきましょうか」


 これから先必要になるでしょうし、とうそぶくシーグレイ。

 アルフレッドとユリウスがすっと目を細めたから、多分そういう意味なのだろうが、リヒトにはわからなかった。

 一伯爵家にそれほど気にしなければならない要素があるのだろうか。

 むしろ()の伯爵家が国政の場に人材を送り出したことは一度もないはずだ。かろうじて精霊関係で名前を聞くくらい。

 貴族にしては珍しいくらい国と距離を置いた家。

 ……どちらにせよ、自分はいない方が良さそうだ。


「あの、シーグレイ様」

「リヒト、とりあえず聞いていなさい。わからなくて構いませんから」


 穏やかだが、有無を言わさぬ瞳が立ち上がりかけたリヒトの動きを縫い留める。

 機先を制され、リヒトは黙って椅子に縮こまるしかなかった。

 どうあっても話を聞かせるつもりらしい。

 シーグレイは満足げに頷くと、長い指を顎に当ててふぅと息をついた。


「そうですね……ではまず長女から。シュウランの姉で一番上にあたります」

「あ、僕知ってるよ。リリアナ・スカーレットだよね?」


 はいっと手を挙げたのはユリウスだ。


「社交界デビュー初日から引く手数多の絶世の美姫、微笑み一つで国を落とすとまで言われるひとだよね」

「ええ、その通りです」

「将来有望と目される騎士、史上最年少で長官まで上り詰めた官吏、極上物件の大商人の息子、その他諸々の求婚も素気なく蹴って、侯爵家嫡男と婚約。そろそろ結婚だったはずだけど……」


 聞いていたシーグレイが、ちょっと驚いたように眉を動かした。


「そんなことまで知っていたんですか」

「情報収集は外交の基本だからね」


 彼の仕事場は外務省だ。

 アルフレッドの臣下に降ると示すためもあるが、単純にやりたいと申し出た仕事だった。

 ユリウスは得意げに胸を張る。

 一方でユリウスの言葉に当て嵌まる人物を一人ひとり思い浮かべていたリヒトは、「史上最年少の長官」のところで思わずあっと声を上げてしまった。


「まさか一時期財務省の仕事が滞ったのは……」


 シーグレイとユリウスが痛ましげに目を逸らし、そっと目頭を押さえる。

 リヒトは己れの推測が正しいことを悟った。

 世紀の天才とまで言われた彼も、さすがに色恋沙汰の上手な対処方法は知らなかったようである。

 そこまでになるリリアナの美貌がどれほどのものか興味が湧いたが、生憎拝む機会には恵まれていない。


『女神だよ! この世に女神がされたんだ! 白魚のような手、絹糸のごとき髪は蜂蜜色で、お声はまるで天上の音楽の(以下略)』


 ある日夜会から帰ってくるなりまくし立てた兄から聞いたくらいだが、兄があそこまで興奮するのは珍しいと思ったことは覚えている。


「傾国の、とついてもおかしくないような美貌です。あそこの四兄弟は皆綺麗な容姿をしていますが、彼女は別格ですね」


 さらに超がつくほど珍しいシーグレイの素直な称賛は、ますますリヒトの興味を誘った。


「見てみたいですねぇ」

「うむ、余も見たことがないのだ」

「いずれ機会はあると思うよ。それよりシーグレイ、それだけ?」

「ふふふ。ユーリは賢いですね」


 ぴく、とアルフレッドが反応した。わかりやすい。

 それに気付いているのに気付かぬフリをして、シーグレイは肩をすくめた。


「もちろん、ただ綺麗なだけのお姫様ではありません。四兄弟の中で役割を分けるなら、リリアナは諜報。彼女のもとにはありとあらゆる情報が集まります」


 そりゃあ男は貢ぐだろうなと思ったリヒトである。


「彼女の一言で一体何人のひとが動くんだろうね……」

「想像すると末恐ろしいぞ……」


 そこまで行くと、本気で国を傾けかけない。

 王子として王太子として、国を背負っていく役目を負った二人は身を震わせた。

 どんな賢君でも、些細な情報が届かないことが命取りになる場合があるのだ。

 だからこそ。

 顔を上げたリヒトは、シーグレイが自分を見ていたことに気が付いた。

 いつからかはわからないが、きっとついさっきではない。

 リヒトの瞳の奥を見透かすように、紫苑が細められた。

 まるで、よく出来ましたとでも言うかのように。


(き、気付いてよかった――っ!!)


 でなくば、今日の午後の仕事が二倍になっていたに違いない。

 ひっそりと冷や汗をかいたリヒトは、安堵に胸を撫で下ろす。


「そう、味方に付ければ心強いでしょうね」


 こつん、とシーグレイの指が机を打った。

 ぼそぼそと何事かを話し合っていた兄弟が、条件反射のようにシーグレイを顧みる。

 その顔に驚きはなかった。二人とも、とっくに気付いていたからだ。

 シーグレイは一つ頷いて、にっこり笑った。


「ただし彼女の逆鱗に触れたら終わりです」


 物騒な単語にいち早く反応したのはアルフレッドだ。


「終わり、って!?」

「全力で潰しにかかるでしょうね、貴方を」

「危険ではないかそれ!」

「大丈夫ですよ。逆鱗なんて、そう数の多いものではありません。ただ、彼女の逆鱗に触れるということは、もれなく彼女の兄妹の逆鱗にも触れるということですが」

「そ……っ、というか、何なのだその逆鱗って!」

「今は教えません」

「そんな怖い味方は嫌だ……」


 拗ねたように唇を尖らせたアルフレッドが、ふと息を呑んだ。


「――それでも、いつかは味方に引き入れてもらいます」


 味方に付けたら、ではなくて、付けなくてはいけないのだ。

 国のためにも、アルフレッドのためにも。

 そしてそれは宰相ではなく、王太子であり次期国王であるアルフレッドがやらなければならない仕事なのだ。

 眼鏡に光が反射して、その時のシーグレイの瞳は見えなかった。

 数拍、沈黙が部屋を支配する。


「………あ、」

「さて、次はシュウランですね。彼の役割は参謀」

「――頭の良い方なんですか?」


 向けられた視線の意味がわからないようでは、シーグレイの副官は務まらない。

 意図して自然に声を上げたリヒトは、口を開きかけた状態で固まったアルフレッドに少し罪悪感を覚えたが、必要なことなのだと自分に言い聞かせた。

 ……多分。


「えぇ。常に他人の一手先二手先を読んで動く男です。のみならず、彼は武術にも精通しています。単純な力比べなら国で五指に入るでしょう」

「……はい?」

「ちなみにリリアナはそれほどではありませんが、末の妹のルナリアの身体能力には目を瞠るものがありますし、ティリエルも朱雀隊の騎士と互角に戦えるくらいには強いですよ。ご両親が、必要だからと全員に最低限身につけさせたそうです。このくらい普通だとね」


 断じて普通じゃない、と誰もが思った。

 あまりにもキラキラしい家族である。


「ルナリアは……そうですね、姫でしょうか。守られることが仕事。ですが勘が鋭く、不思議と何かを悟っているような子です」


 語るシーグレイは、見たこともないような優しい顔をしていた。

 アルフレッドが何とも言えない顔をする。

 羨ましいような、悔しいような、そんな顔。

 シーグレイの手の中で、溶けた氷がからんと音を立てた。


「ティリエルは巫女ですね。神事を司る――この場合は精霊ですが」

「精霊ということは、【霊才者】ですか?」

「えぇ、とても強い力を持った霊才者ですよ。トルティージャの六国全ての王族を片っ端から当たっても、彼女ほどの力の持ち主には巡り会えないでしょうね」


 【精霊】。親しき隣人。

 トルティージャには、精霊が住んでいる。

 火を司るサラマンダー、水を司るウンディーネ、風を司るシルフ、土を司るノーム。

 精霊を知覚するには、才能がいる。

 わずかでも生まれ持てば、そこに「何かが在る」ことを感じ取れるのに対し、生まれ持たなかった者はその存在すら知ることができないもう一つの次元。同じ場所に在って、しかし決して行き交うことができない世界。

 彼ら精霊は、人間がコルミールと名付けたそこに住んでいる。

 そしてその才能を持つ者を総じて【霊才者】と呼ぶのだ。


 トルティージャに存在する六つの国の統治者(王家、もしくは王制でない国の場合それに準ずる者)は 皆、強大な力を持つ霊才者だ。

 遥かな昔からその力で持って加護を願い、祈りを捧げてきた彼ら。

 それを上回る才の持ち主なんて、聞いたこともなければ信じられもしなかった。

 リヒトは正面に座るユリウスと顔を見合わせた。

 ユリウスの顔に浮かぶのは、疑念、好奇心、それから恐れ。

 おそらく自分も、似たような顔をしているのだろう。


「王家に勝る力を有す霊才者、か……」


 ふいに隣から、囁くような声が聞こえた。アルフレッドだ。

 よく晴れた春の空と同じ色の瞳が、微かに陰りを帯びている。

 ユリウスが逡巡して、開きかけた口をつぐんだ。

 理由がわからなかった。


「――諸々の事情を鑑みて」


 カシャン、と澄んだ音がする。


「ティリエルだけは駄目ですよ、アルフレッド」


 机に置かれていた短剣の、柄と鞘とを持ったシーグレイが穏やかに笑った。

 あの音は、鞘に鍔を打ち付けた音だったらしい。

 おそらくシーグレイも、理由は知らないのだろう。

 応じて顔を上げたアルフレッドから、陰りは消えていた。

 沈んだだけかもしれないが、現段階では充分な成果だ。


(さすがシーグレイ様……)


 感心するリヒトの前で、全てを承知したシーグレイは何でもないことのように言った。


「それに彼女、王妃になりたいとは欠片も思っていないと思いますよ」


 ぽかんとアルフレッドの口が開いた。


「……何で来たんだ?」


 もっともな疑問である。

 アルフレッドのみならずさらに二対の視線を受けて、シーグレイはひょいと肩をすくめた。


「彼女だけではありませんよ。やむにやまれぬ事情で、という令嬢は何人かいます。ですがティリエルは、家族の悪乗りでしょうね」

「は?」

「城なんてそう行けるものじゃないんだから行っておいで、くらいは言いますからね」

「そんな理由なのか!?」

「あとは王太子を見極めておいで、とか」

「いきなり重いな!」

「万が一彼女を望んだら、家族全員全力で邪魔するでしょう」

「じゃあ何故寄越した!?」

「面白いから、でしょうか」

「余が本気で惚れたらどうする気なんだ!」

「私が何とかしろという無言の圧力です。その前に本人が断るでしょうし」


 恋愛感情でないにしても何らかの好意は持っているひと相手に酷い言い草だ、とリヒトは思った。

 ユリウスが苦笑いでアルフレッドの背を叩く。

 自分でもわかっていないような顔で、でもむすっとしているアルフレッドに、最高に良い笑顔を向けるシーグレイ。

 リヒトはものすごく嫌な予感がした。

 これ以上言わせない方がいい、と頭の中で警鐘が鳴り響く。

 ユリウスもそうだったのか、二人はほとんど同時に声を上げかけたが、


「シーグレイ……っ」

「やめてくださ――」


 あっさりと無視したシーグレイは、非情にもにっこり笑って止めを刺した。


「それにあの子、婚約者いますし」


 がちゃん、とコップが音を立てた。

 リヒトは無言で立ち上がると、零れたジュースを拭くために布を持ってきた。


「あぁ!? 兄さん何してるの! ていうか、シーグレイも!」

「芽が出ないうちに摘んでおいた方が、傷が浅くてすむでしょう?」

「この鬼!」

「何とでも言いなさい」


 テーブルを拭きながら二人の口論を聞いていたリヒトは、うなだれるアルフレッドを見て確かにシーグレイは正しいかもしれないと思った。

 早いうちの方が傷は浅い。

 だが。


「私は絶対にあの家族を怒らせたくないんです」

「シーグレイ、君、宰相でしょ!?」

「初恋は実らないものです」

「実ることもあるよ! 大事だよ初恋!」

「正直失ったところで痛くも痒くもありませんからね」

「鬼! 悪魔!」

(理由が酷い……)


 確かに鬼かもしれない、とちょっぴり思ってしまったリヒトであった。




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