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-濁った硝子の向こう-
俺を取り巻くすべてはまるで靄に包まれたかのようにぼやけている。
いつからとかどうじて、何てことは気にならない。気づいたらそうだったのだから、もしかして生まれた時からそうなのかもしれない。
けれどそれは俺が周囲を見渡した時の情景ではなく、周囲が俺を見た時にそう感じるよう、作られた壁だ。袖振りあっただけの見知らぬ他人に俺という本質を見せることに対する嫌悪感を、俺は靄と同じころから感じていた。
煩わしい他。あいつを排斥しようとする、その他大勢。
何も知らないヒトガタたちに、俺は俺の真実を一片たりとも触れさせはしない。
今日もまた、蠅のようにたかってくるそれらをいなして、俺は俺の本質の待つ家路をたどる。
2009/03/19