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シャロン嬢

半年がたったころだろうか、二人目の婚約者が屋敷を訪れた。

殺し屋と結婚させるには惜しいような。使用人を気にかけるよくできた人だった。

前回の婚約者を失ったのがよほど応えたのか、父親は婚約者を屋敷に住まわせるようになった。

「リュース様シャロン様を見かけませんでしたか?」

令嬢専属の使用人が俺に尋ねてきた。

俺が見ていないと答えると、使用人はありがとうございますと慌ただしく去っていった。



いつも通り仕事の詳細を聞き、父の執務室を出た。

すると中庭に今にも泣き出しそうなシャロン嬢の姿があった。

前回同様婚約者に関心はない。

そのため必要以上に婚約者と関わろうとは思わなかった。

「あの!」

どうやら彼女も俺に気づいたらしく、俺が去るよりも先に声をかけてきた。



「、、、ここどこですか?」

「、、、は?」


どうやら泣き出しそうなにしていたのはそれが原因だったらしい。

確かに、ここは親父の執務室へ行く以外は通ることはないため使用人も見つけにくかったのだろう。

直接泣きつかれた以上無碍にするわけにもいかず、案内をすることとなった。


「、、、ここの温室を右に行くと廊下へ出る。そうしたら次は左に、、、何をしている」

 

「!!すいません!お花が綺麗に咲いてて夢中になっちゃって」


そういい彼女は目の前にある温室へ駆け寄る。

弟が大好きだった温室。そこには思い入れがありすぎる。

だから見てしまわないようにここに来ることは避けていたのに。


「、、あのお花を何本か頂くことはできないでしょうか?」

彼女はそう尋ねてくる。

俺が、抑揚なくかまわないと告げると。

彼女はやった!と、喜んで何やら背を向けて何かを作り始める。

数分も経たないうちに彼女はできた!と声を上げた。

「じゃあ、俺はそろそろ」

お役御免だと思い。この場を去ろうとすると。

再びシャロン嬢から呼び止められる。

そして、これを宜しければと、案内のお礼にと花冠を差し出してきた。


その姿が果たせなかった思い出を呼び起こし胸を締め付ける。


「あ、あのすいません!私何か不敬を?」


「、、、なぜ謝る?」


「だってリュース様が、、、」


彼女は言い淀む。

彼女の視線は俺の頬に向けられていた。

その時はじめて頬を伝う温いものに気がつく。


「、、、君のせいじゃない。」


そう言うとシャロン嬢は頬を引き攣らせながら笑う。


「、、、何をしている」


「え、えっと、私のお母さんが。私が泣いている時は笑顔を見せて安心させてくれるんです。それが幸せのおまじないだよって。」


「だからリュース様も」

「「笑って」」


シャロン嬢の声と重なって弟の声がしたような気がした。

あぁ、きっとお前ならそう言うだろうな。


令嬢にありがとう。と礼を言う。

そう呟くと、シャロン嬢はきょとんとする


「楽しい思い出まで、悲しさで埋めてしまうのはもったいないよな」


そう言うと、彼女はぎこちなく笑って見せた。

その不器用さが何だか面白くて俺も笑えてくる。

こんなに泣いたのも笑ったのも弟を失ってから初めてのことだった。


自分は前に進めるようになったのか。

そう不意に思って、そう思った自分に驚いた。

大切な人を失ったのにそう思えるようになったのだと。

そしてそれは紛れもなく彼女のおかげだった。



そしてそれを気づかせてくれた彼女を意識するのにそう時間はかからなかった。

気づけば近くにいて誰よりも長く時間を過ごすようになった。

彼女とならこの先何があっても乗り越えていけるそう思った。

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