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リーセル・エルディー

その日は急に母親から正装をするよう指示があった。


使用人が慌ただしく動いているところを見るに来客が来たのだろう。

しかし、俺が呼ばれるのはなぜなのか。


「失礼します」


久々に顔を見た父親はひどくご機嫌だった。

とっておきのシャンパンを豪勢に開けているのをみるに、父にとってよほど嬉しいことに違いない。


「おお来たか!ここに座れ!」


そう指示されたのは席の隣には同い年くらいの令嬢がいる。

俺は指示されたまま席に着く。


「主役二人が揃ったな。それでは乾杯といこう!」


状況が全く読めていない。

主役とは一体何のだ?

俺が入ってきて揃ったと言うのだから、俺は主役の一人になると言うことか。

ならもう一人は?


「お待ちください」


隣にいた令嬢が父の乾杯を遮る。


「私、まだご挨拶もしていませんわ」


まずい。父は自分の楽しみを邪魔されることを最も嫌う。

フォローしなくては。

そう思ったが、令嬢の方が一足早かったようだ。


「初めまして、リーセル・エルディーと申します」

彼女は名乗ると俺に頭を下げた。

あまりに美しい所作だった為つい見惚れてしまう。


それは父も同じだったようで、機嫌を損ねることはなく笑顔で一連の動作を見送っていた。


俺も少し遅れてしまったもの、軽く自己紹介を済ませた。


「リュース・デミドールです。よろしく」


そう言って手の甲に軽くキスをする。

すると完璧に行なっていた所作が少し乱れた。


「それではお互い自己紹介も済んだことだし改めて乾杯といくか」

そういうと父は再び段をとった。


令嬢はまた伺います。と父に挨拶を済ませると屋敷を去っていった。

令嬢に関する説明はなく、仕事に関係のないことならと俺も令嬢について言及することはなかった。

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