仕事
「……失礼します」
三回ノックをした後、重量感のある扉をゆっくりと引いた。
その瞬間ーーパン、と乾いた音が室内に響く。
遅れて段々と左頬に痺れが広がってきて、
殴られのだと気づいた。
「何をしていた!」
父親の怒声が耳をつんざく。
目の前には怒りでわなわなと身体を震わせる父の姿があった。
「……何も」
そう答えると、父は深く椅子に腰を沈め、こだわりのシガーを取り出し火をつけた。
たちまち煙が室内に満ち、独特な香りが鼻にまとわりつく。
「チッ……仕事だ」
父は煙を吐き出しながら短く告げると、目の前にある机に資料を投げた。
20代後半といったところだろうか、写真には若い男女が写っている。
「そいつらは組織に刃向かって察に情報を売りやがった」
父親はそう言い資料を握りしめる。
どうやら相当相手に気が立っているらしい。
「……方法は?」
「殺すな。上の連中は“遊ぶ”のが好きでな。今回も例によって可愛がりたいそうだ」
「……捕獲したら連絡をします」
そう言うと父は俺をギロリと睨み、
「しくじったら……分かるな?」
と告げた。
父は机の中から一枚の写真を取り出し俺の目の前でちらつかせる。
それには、生まれてまもない弟の姿があった。
俺は思わず歯を食いしばる。
自分の子供だと言うのに、父は弟のことを人質としか見ていない。
俺を動かすために。
「期限は明日の夜七時だ。失敗は許さない。いけ」
「……はい」
怒りを悟られぬように、短く返事をする。
そしてそのまま部屋を後にした。




