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第五話 契約完了(諒視点)

第五話 契約完了(諒視点)


 わかっ……った…っ…


 僕は、声を振り絞った。

 すると、捻れていた腕がまたぎゅるると戻る。


「これ……これ、腕」


 僕は動揺でうまく言葉が紡げなくなっていた。

 痛かった、筈、だよな?

 手のひらをグーパーグーパーしてみる。


「あなた、バカなんですか?」


 動揺で上手く喋れない中、何とか言葉を紡いだのに、何者かわからないそいつは、そんな事を嘲笑う。


「先程から急に現れて……。鍵かけただろ僕! ああ?? 勝手に人んちに入り込むのは不法侵入、じゃなくって。急に人の腕を捻りあげうふうふ言っているあんたのほうが、バカですか?? てかなんなんだよっ!!? 出口はアチラ!! ここは僕の城だ!!!」


 だめだ。

 言った側から自分が子供の発想になっていく。

 それが分かるが止まらない。

 困った。

 落ち着け落ち着け、落ち着くんだ。

 今日は色々あった。

 色々とあって、疲れて、でも疲れ切ると気持ちの高揚がおさまらなかった。


 だから執筆作業を……。


「夢だ!!」


「あゝ、嫌だ嫌だ」


「そう嫌だこんな夢!!」


「だから、バカなんですか?」


「うるさいなっ!!」


 何だかわからないそいつとのやり取りで、ぜえぜえ息があがる。

 そう。

 まちがいなく変な青年が足元30cmくらいは浮いて立っているんだ。


 浮いて立っている?


 視線をソレの足から頭へと順に眺めた。


「こんにちは、こんばんは、そしてはじめまして、わたくし、ゴーストの、まぁ…浮遊霊。おっと同じですね、うふふ」


「どうやって入った」


「頭、大丈夫ですか?」


「良い加減にしろよ?」


「いえいえ、何度も説明しておりますのに、貴方が聞こうとなさらないから、大丈夫かな、と」


 ふう、やれやれといった顔をしたそいつが話し出した。


「兎に角、貴方とわたしは契約をしました。そこは覚えてらっしゃいますね?」


「致し方なくだ」


「しかし契約です」


 伏目がちにそいつ、ゴーストはまた話し始める。

 ところどころで、うふうふ言いながら。


「わたしは長くゴーストとして生きて、ん?死んできたわけです。もう、それはそれは長い時を。んふ。でもオシャレにはうるさいのですよ。今様スタイルは維持しております。このストレートジーンズの色味なんてウルトラナイスかと。うふ」


「今様とか死語だろ」


「死後ですから」


「で、なんだよ!!!」


「そうですそうです。コホン。つまり、ボクは貴方の思い出を、貴方はボクの物語を互いに交換しましょうというお約束が成立しましったっっ…」


 ブラボーとばかりに1人拍手を始めた。

 こいつ夜中に派手に拍手しないでくれ

 近所迷惑だから。


 いや、ゴーストだから拍手の音は聞こえないのか?

 いやいや、僕は聞こえているわけだが、それはどういうことだ?


「まだ認めきれませんか?」


「……」


「わかりました。特別ギフトです。一つだけ【物語】をお渡ししましょう。さぁさぁ、皆様、っと。あなた様…しっかり頭に焼き付けるのですよ?」


 ふっと体が軽くなったような重くなったような、踏ん張っているのか何かを掴み損ねたような、右が左で左が上、上が下からひだ……?

 そして僕は意識を手放した。



ーつづくー

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