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第二話 つまらない人形である僕は、(諒視点)

第二話 つまらない人形である僕は、(諒視点)


 健吾の言い付け通り外に出たが。

 意味なく外を歩くのは無意味で

 無意味だと考えるのもまた無意味。

 よって…などとつまらない言葉遊びをしながら平日の真っ昼間を29歳男が歩く。


 忙しなく歩いていく人並みに合わないゆっくりとした速さで歩き、ふらりと寄った有名コーヒー店で、


「コーヒートールで」


 と決まり文句でもあるのかと言わんばかりに同じものを頼んでいく列に並んでみた。


「高いコーヒーだ」


 順番が回ってきた時わかっていた情報とはいえ、呟いてしまう。

 実家でいた時に飲んでいたコーヒーは深みがあって香りもよく、美味かったが値段は知らん。

 だが、ひとり暮らしを始め、健吾が買ってくる安いインスタントコーヒーもまあまあ美味い。


 僕が呟いた言葉に対し、店員が


「今日は私が挽かせていただいたので自信を持って価値あるコーヒーを淹れさせていただきました。どちらになさいますか?」


 と元気よく声を返してきた。

 思った反応は「ちっ」みたいな愛想の悪い感じのヤツだったのに。


「じ、じゃあ、コーヒー、しょーと、を……」


 悲しいかな陰キャな自分を思い出してしまった。

 しかも微妙な世間への批判を、サイズをショートにするという小さいものに表して。

 盗み見た店員は僕より少しばかり若くて、よく見ると周りのスタッフとエプロンの色が違う。

 髪を綺麗にまとめた姿は、清潔感抜群。

 テキパキと動き、他のスタッフの問いかけにもにこやかに答える。

 ネームプレートにはバリスタの文字。

 あゝ、役持ちなんだなぁ。

 あんたら眩しすぎんだよ。


 はぁ〜……。


 全く無意味だ。

 ここに居るのが無意味だ。

 つまらない。つまらない。つまらない。

 窮屈で息が詰まる。

 小学部でのことを思い出してしまいそうだ。

 健吾が転校して来なかったら、僕はずっと何も感じず、何も得ず、人形として生きていっただろう。


 まぁ、本当に人形なんだけど。


 僕の父と母はいわゆる政略結婚である

 その上、互いを憎んでいる。

 人生を好きに生きられなかったと歪みあっている。

 こんな人生を歩むはずじゃなかった、と。


 だが。


 財閥には後継者を求められる。

 財閥の長は子をなさなくてはならない(実にくだらない)。

 そんな2人が選んだ道は、


 体外受精。


 僕は作られた

 まさに。

 必要だから

 ただそれだけ。


 必要とは言ったが、『跡継ぎ』が必要なのであって、『僕』は必要なかった。


 いつかは僕もそんな道、政略結婚がある可能性は大だ。

 跡継ぎ、にはなれない僕。

 役に立てない僕。

 『跡継ぎ』のフリした、只の道化師。

 その僕の代わりを作るために。


 僕には政略結婚があるだろう。


 ああ、くだらない、くだらない、くだらない。


 僕は、自分が信じた道を歩みたい。



ーつづくー

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