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第17話「ムチと天下一緊縛会3」

「一体どうなってるのよ!!」

 準決勝前の休憩時間、私は控室のテーブルを両手でドンと叩いた。

 問題は先鋒と次鋒だ。やる気がない。いや、やる気はあるのだろう。縛られるやる気イコール負けるやる気が。

 だが、その当事者のクリスとエドワードはまるで聞いてない風の態度だった。態度悪っ…。

「聞いてるのっ!?」

「「聞いてますよー」」

 聴く気のない聞いてますよ、だ。

 私の怒りのボルテージがさらに上がる。

「戦ってるのは私とニコルとエリザベスばっかりじゃない!二人とも戦う気はあるのって聞いてるの!」

「やる気は…あるぜ…物凄く、な」

 やる気っていうかやられる気だろう!

「キャンドル、私がどんなに他の人間の縄で縛られたとしても、君のムチが一番だよ」

 クリス、何そのいい事言った様な感じは。ようは勝つ気がないのは変わらないんでしょ?

 しかも、なんか浮気者っぽい台詞吐いてるし。サイテーだわ。この二人。


 そして、休憩時間は終わり準決勝に入る。

 両チーム、闘技ステージの横に並ぶ。


「さあさあ!ついに準決勝がやってまいりました!勝ち上がったのはキャンドルチーム。対するチームはカウ・ぼーいずチーム!このチームもかなりの実力を備えていると聞いております!まさに死闘が演じられるでしょう。実に楽しみな準決勝です!」

 わああ、と歓声が上がる。


 私は必死で「3人で全勝しないと…3人で全勝しないと…」と必死で考えていた時にふとクリスとエドワードの方を見ると、二人が肩から両腕をだらんと下げて、明らかにやる気のない顔をしている。

 えっ、どういう事?と思っていると、突然

「この試合、相手のカウ・ぼーいずチームに一本勝ちはありませんよ」

 ダリルが話しかけてきた。いつの間に観客席からこっちに!?

「ど、どういう事?一本勝ちがないって」

「カウ・ぼーいずチームはあの見た目とその名の通り、カウボーイのチームです。使う武器は輪っかを作った縄一つ。これでは輪っかで相手を縛る事しか出来ずに、華麗な縛りで一本を取る勝ち方は出来ない。となると、カウ・ボーイズチームが勝つ方法はノックアウトか場外勝ちの二つしかないんですよ」

 …なんか初めてダリルが役に立った気がする。

 はっ!!!そういうことか!!

 クリスもエドワードもそれをわかっているからやる気がないんだ!

 ダメだこの二人…。本当に役に立たない…。


「さあ!準決勝先鋒戦はクリス選手対エド選手!どうなるのか!それでは、試合開始!」


「雑魚先鋒が!瞬殺してやる!」

 エド選手がやる気のなさげなクリスに向かって縄を投げつける!

 だが、紙一重でそれをかわすクリス。

 えっ!?

「ふぅ…君にノックアウトされる気は毛頭ないんでね…。王族の高貴な勝ち方ってのを君に見せてさしあげよう」

 そう言って、クリスは相手不在のまま左腕をまっすぐ伸ばし、右手を腰のあたり輪を作る様に置くと、社交ダンスのスタンダードを踊り出した。

「な、なんだ?いきなり踊り出しやがって!舐めるな!」

 カウ・ぼーいずのエド選手が縄を繰り出す。

 だが、クリスは踊りながらなわをかみひとえでかわす。

 かわす。

 かわす。

「おーーっと、クリス選手、踊りながらエド選手の縄を交わし続けます!まさに加齢の一言!そして交わしながら相手に徐々に近づいてます!それでも交わし続けます!」


「くっ、く、来るな!」

 エド選手は縄をくりだすが、それでも踊る様にかわすクリス。


「はっ!」

 エド選手は気がついたら、クリスの腕の中にいた。

 クリスは互いの左手を握り合ったままエド選手を対面へ放り出す。

 二人は左手がまっすぐにピンと繋がったままとなり、クリスとエド選手の右腕は華麗に伸びたまま斜め45度を向いている。

 クリスはその状態から相手を回転させながら自分の方に引き寄せる。

「う、うわああああああ」

 エド選手は回転しながらクリスの方へ向かうと、クリスの強烈なパンチがエド選手の腹部へのめり込む!

 エド選手はそのまま場外へと飛んでいった!

 場外へ飛んでいったエド選手を審判が確認に行く。

「クリス選手、場外勝ち&ノックアウト勝ちのダブル勝利です!」

 わああと歓声が上がる。


 つ、強過ぎる。

 クリスはエド選手が倒れている側のギリギリのステージ脇まで歩き、こう言った。

「私は縛「られる」ためにここに来ているんでね、ノックアウト勝ちや場外勝ちされるつもりは毛頭ないんだ。悪いね、勝たせてもらったよ」

 縛「られる」ってなんだよ!

 結局負けるって事じゃん!

 今みたいにやる気出してよ!!!


 クリスは私たちの元へ帰ってくる。

 一応準備をしていたエドワードのところへ行く。

「あとは頼んだぞ、エドワード」

「あーあ…やる気ねぇ…」

 明らかにやる気のなさそうなエドワードだ。

 まさかやる気なくて自ら場外負けとかしないだろうな?と心配になる。


「さあさあ、先鋒戦は1回戦2回戦とはまるで違うクリス選手の華麗なる圧勝で終わりました。次鋒戦はどうなるのでしょうか?次鋒戦はエドワード選手とコットン選手です!実に楽しみな戦いななりそうです」


「ちっ、先鋒は負けたが、お前ならなんとかなりそうだ。勝つぜ、ザ・コ」

 コットン選手がエドワードを侮蔑する。

「あ゛!?」

 エドワードの顔つきが急に鋭くなった。

「舐めてんな、おまえ。ザコはどっちかはっきりさせてやるよ」

 や、やった!エドワードがやる気だした!

 エドワードがコットン選手にダッシュしようとしたその瞬間、

「おっと、すまんすまん。ちょっと待ってくれ」

 コットン選手が突然しゃがんで靴の紐を結び直している。

 エドワードがそのまま近づくと、

「試合中に靴紐を結び直すとはずいぶん余裕だな」

 と笑う。

「油断しているのは…そっちの方だ!」

 コットン選手は靴の踵にあるスイッチを押すと、突然靴の先に隠しナイフが現れた。

 そして覗き込む様に見ていたエドワードの頭部にコットン選手はナイフを蹴り込む。

 だが、冷めた目でそれを見ながらエドワードはコットン選手の足とすれ違う様に拳を振り下ろす!

 コットン選手のナイフはエドワードの顔のスレスレを通り過ぎ、カウンターとして放ったエドワードの拳はコットン選手ではなく、ステージの地面を叩く。と同時に石で作られているステージに拳で出来た穴が空く。

「舐めてるのはテメーだろうが。そんなセコイ隠し武器に俺がやられるかよ」

 コットン選手はエドワードのあまりの拳の威力に身体中をガタガタと震わせている。

「ま、まいった。降参だ」

 青ざめながら降参を告げるコットン選手。

「コットン選手、降参を宣言!エドワード選手の勝ちとなります!」


 ガッツポーズをしながら私たちの元へ帰還するエドワード。クリスとハイタッチする。

 そのやる気を最初から見せてよ!!と私は思わずにはいられなかった。


「強い!あまりにも強いエドワード選手!1回戦2回戦のあの体たらくは一体なんだったのか!キャンドルチーム、ここへ来てまさに優勝候補といえる力を見せつけております!

 さあ、次は中堅戦、キャンドルチームの中堅ニコル選手は1回戦2回戦ともに非常に鋭い実力を見せつけております!ここでキャンドルチームの決勝進出が決まってしまうのか!それではいってみましょう!中堅戦!ニコル選手対ジョニー選手!試合開始!」


 ジョニー選手は先手必勝で縄を繰り出す!

 間一髪でかわすニコル。

 その一撃を見たニコルは両足でステップを踏み始めた。

(毛色が違うとはいえ、流石に準決勝。これまでの相手とは違う。全力で行かなければ!)

 さらにジョニー選手は縄を繰り出す!

 ギリギリでかわすニコル。

 さらにジョニーは縄を繰り出す!

(これはかわしきれない!)

 そう思ったニコルは左手腕を縦にして縄の軌道を逸らした。腕に痛みが走る。

 刹那、ニコルは背中にゾクッとした悪寒を感じた。

 スローモーションの様にジョニー選手の顔を見ると、ジョニー選手の顔はニヤリと笑っている。

 ニコルが逸らしたと思っていた縄をジョニー選手はクイッと引っ張る。

 すると、ニコルの腕を支点にして縄がニコルの後方へ回り込み、縄の輪っかがニコルを捉えようとしていた。

(まずい!このままでは輪っかに捕まって場外負けにされる!)

 ニコルは残った右腕でクナイを取り出し、一本縄と輪っかの結び目にクナイを投げつける。輪っかの軌道が変わり、ニコルの頭上スレスレを通り過ぎる。

(クナイでも切れないのか、この縄は!)

 驚愕するニコル。


「やるじゃねぇか、さすが優勝候補と言ったらところか。実力は伯仲だな。だが、もうこちらは一敗もできないんでね。勝たせてもらうよ」

「それはこちらも同じ事。負けるつもりなんて毛頭ないですよ。勝ちはもらいます」


(この相手に守勢に回り続けてもそのうち捕まる!)


 ニコルは攻勢に出る事にした。

 縄を投げつける。ジョニーはピント張った縄で軌道を逸らす。

 ニコルはまた縄を投げつける。今度は至近距離で。

 しかしそれをかわすジョニー選手。

 しかしそれは布石で、ジョニー選手がかわした先にニコルは隠しクナイを放った。

 が、それをなんとかギリギリでかわすジョニー選手。顔に一本の薄い線が走る。

 再度距離を取る2人。流れてきた血を拭うジョニー選手。


「フゥ、さすがにやるじゃねぇか。これは長期戦になりそうだな」

「ハァハァ、そうですね」

 お互いを睨み合うニコルとジョニー選手。


 ジリジリとした間合いの詰め合いから最初に動いたのはニコルだった。


 が!その瞬間ニコルの右膝がガクンと下がる。

「! ここだ!」

 ジョニー選手は縄を放つと、その先端にある輪っかがニコルの左足を掴む。


「しまっ…!」


 ジョニー選手はそのまま自分を中心にニコルの身体をグルグル回すと、場外へと叩きつけた!


「ぐふっ!」

 地面に叩きつけられるニコル。


「勝負あり!中堅戦はジョニー選手の場外勝ちです!」


 一体何が!?と混乱するニコル、先ほど自分の膝が下がったところをみると、そこには先ほどの次鋒戦でエドワードが床にあけた穴があった。


 チームへ戻るニコル。

「す、すみません。姉様。不覚を取りました」

「大丈夫よ、ニコル!あなたはよくやったわ」

 いつもは甘えるニコルだが、何も言わずにそのまま控室の方へと行った。

 ニコルの目にはうっすらと涙があった。


「さあさあ、白熱した準決勝も副将戦!エリザベス選手とドク選手の対戦となります。果たしてこの対決、どうなるのか!」


 エリザベスは少し震えていた。

 私が心配そうに見ていると、

「わかってます。私とあの相手では実力差がある事は。でも、負けるわけにはいかない。キャンドル様を失望させる事が何より私が嫌な事ですもの。キャンドル様、心配しないでくださいまし。私は買って見せます」

 と健気な表情を見せるエリザベス。

 私もこれ以上エリザベスに声をかけるのをためらった。


「それでは、準決勝副将戦、エリザベス選手対ドク選手、試合開始!」


 数分が経った頃だろうか。数時間にも思える時間だった。

 エリザベスは今、膝を地面について息を荒くしている。身体中はボロボロだ。

 エリザベスは持てる全ての技を繰り出したのだが、その全てを軽く交わされ、かわされた瞬間、縄でしたたかに叩かれていた。

 エド選手は縛ろうと思えばいつでもエリザベスを縛れるだろうに、わざとそれをしないで楽しんでいる様子ですらある。

(エリザベス頑張って! あなたならできる!)と何度も声をかけかけた。

 だが、余りにも実力差のかけ離れた相手にその言葉は空虚でしかなかった。


「あーあ、もういっかなー。お前しぶと過ぎ」

「当然ですわ、勝つつもりですもの」

「おーおー、勝つつもりときたもんだ。ここまでやって実力差がわからないほどバカなのか?それとも…そっちの方面の趣味か?」

 エリザベスは唇をぐっと噛む。

「それでも…それでも私は負けるわけにはいかないの…勝つわ!」

 エリザベスは立ち上がり、最後の力を振り絞ってダイヤモンドダストを繰り出そうとした。

「遅い」

 一言エド選手がそういうと、いつの間にかすでにエリザベスはカウボーイ用の縄の輪っかで上半身を縛られていた。

「じゃあ、ハッキリと負けを認めさせてやるよ」

 エド選手はエリザベスの顔を平手打ちする。

 よろめくエリザベスは一本交代する。

 さらに平手打ちをするエド選手。

 エリザベスはその度に後退していき、闘技ステージの際まで来ていた。

「ほれ、あと一歩で場外負けだ。せめて参りましたくらい言えよ?ほら、言ってみろよ」

 エリザベスは腫れた顔でしっかり相手を見据え、参ったを言わなかった。

「おーおー、根性がある事で。ほーらよっ」

 エド選手はエリザベスの腹部に蹴りを入れる。

 エリザベスはそのままステージから落ちる。


「決着です!内容はカウ・ぼーいずチームエド選手の圧勝!エド選手の場外勝ちです!」

 歓声が上がる。


 エリザベスはふらつきながらキャンドルの元へ戻る。

 キャンドルはふらつくエリザベスを受け止めて抱きしめた。

「ごめんなさい、キャンドル様。あなたの期待に応えられなくて」

「そんな事は今はどうでもいいの!」

「でも、私は勝つと約束してあなたとの約束を果たせませんでした。弟子失格ですわ」

「そんなことないわ!あなたは最後まであの相手に心まで屈さなかった。あなたの心の強さは私が見届けたわ!あなたは決して弱くなかった!」

 エリザベスはそのまま黙り込んでしまった。

「顔…洗ってきますわ」

 エリザベスはそのまま控室へと去っていった。

 だが、カウ・ぼーいずチームの副将のエド選手はまだステージから去らずにステージに残っていた。

 そして、キャンドルチームのそばまでやってきた。

「案の定、うちの大将の言ってた通りだな。キャンドルチームの足手まといはあの副将だって、な。中途半端に実力だけ身につけやがって。大会に相応しくないんだよ、あの女は。今頃身の程知れて良かったって俺に感謝してるだろうよ。ワハハハハ」

 エド選手は踵を返し、自分のチームの元へ去っていった。


「それでは大将戦を始めます!両大将、ステージの中央へ!」


「姉様頑張って!」

 控室から戻っていたニコルの言葉にも

「キャンドル様頑張って」

 というダリルの言葉にもキャンドルは反応しなかった。

 ずっと下を向いている。


「それでは、キャンドルチーム対カウ・ぼーいずチームの大将戦、キャンドル選手対ワイアット選手の試合を開始します!それでは……試合開始!!!」

 わあっと歓声が上がる。

 それでもキャンドルは下を向いたままだった。

 それをみてワイアット選手がキャンドルに話しかける。

「あれぇ?さっきの試合でビビっちゃったかな?おまえんとこの副将、弱かったもんなぁ。さっきのヘボよりマシかと期待したんだが、おまえもさっきの奴と同じヘボなのか?」

「……」

「何とか言えよ、さっさとその腰のムチをはず……」


 瞬間、ワイアット選手の視界が上に上がった。


 一瞬、ワイアット選手は何がどうなったかわからなかった。

 だが、その直後、額に痛みを感じる。

 いつの間にか額にムチを当てられていたようだ。

「なっ……?」

 視線をまっすぐに戻すワイアット選手。

「て、てめぇ、いつのまに…」

 言い終わるか終わらないかの瞬間、今度は右手に痛みが走った。

 ワイアット選手が右手を見ると、今度は持っていたはずの縄が無くなっている。縄はいつの間にか場外へと飛ばされていた。

「み、見えねぇ…いつの間に…!」

 次の瞬間ワイアット選手の両膝に痛みが走る。思わずワイアット選手は両膝を地面についてしまう。


「頭が高いわ。あなたはそうやって両膝ついて私にひざまずきなさい」

 ワイアット選手を見下ろしながら、初めてキャンドルが口を開いたかと思うと、

「Diamond Dust」

 一瞬のうちにワイアット選手は菱形が連なる形で全身を縛られ、両手両足を海老反りの形を拘束され、宙に吊るされる。

「いっぽ…」

 審判がそう言いかけた瞬間、ワイアット選手の罠はいつの間にか解かれていた。

「Turtle Head!」

 今度は亀の甲羅のような形で縛られるワイアット。

「いっぽ…」

 審判が一本といいかけると、またしてもワイアット選手にかけられていた縄は解かれていた。

「THE ZEN!」

「Shrimp Attack!」


「す、すごい姉様は酔わないと全ての奥義を使えなかったはずなのに!」

 ニコルが驚愕する。

 クリスとエドワードは顔を紅潮させて目はハートマークになっている。


「Reversal Shrimp Attack!」


「ついに覚醒したか、キャンドル…」

 来賓室から見る父であるJ.J.エバンスこと、トライアングルホース・クイットネスが呟いた。


「The Club of Crab!」


 四つん這いのまま拘束されたワイアットはすでにボロボロだった。


「い、一本!キャンドル選手の勝ち!キャンドルチームの勝ちです!」


 歓声が上がる。

「な、なんという強さでしょうキャンドル選手!私もいくつ技が仕掛けられたのか目で追えない程の速さでした!素晴らしい!素晴らしい選手です、キャンドル選手!」

 さらに歓声が大きくなる。


 縄を解かれたワイアット選手はぼろぼろとなり、その場に倒れ、担架で運ばれていった。

「エリザベスを侮辱したその罪、償ってもらったわよ」


 キャンドルはそのまま味方のいる方向へ帰った。

「さすがです姉様。姉様こそが最高のムチ使いです!」

「さすがですわ、キャンドル様」

「エリザベス…戻っていたのね」

「ええ。キャンドル様の勝つ姿を見逃したくなくて……でも私が足を引っ張ったばかりにごめんなさい」

「いいのよ、エリザベス」

 私はエリザベスを抱きしめた。

「あなたのおかげで奥義のほとんどを繰り出す事ができるようになったの。この勝利はあなたのものよ」

「キャンドル様…!」

 エリザベスはその時初めて涙を皆の前で見せた。


「キャンドル!」

「キャンドル!」


「「俺たちをさっきの全ての奥義で縛ってくれ!!!」」


 クリスとエドワードがお腹をみせた犬の格好でスタンバっている。


「いい?エリザベス。本当の足手まといというのは、『ああいうの』を指すのよ」

「わかりましたキャンドル様!絶対に『ああ』はなりませんことよ!」


「おめでとうキャンドル、そしてチームメイトの皆さん」

 突然声がした。

 声がした方向を見ると、ブラウンのスーツにでっぷりと太った体型に白髪と白髭を備えた壮年のオトコ♂がいた。お父さんだ。


「ええ、お父様のお望み通り、勝ち上がってやったわよ」

「キャンドル、君には緊縛における天賦の才がある」

「いらないわよ!そんなの!」

「だが、才能があるのは事実だよ。次はその才能を本当の意味で本物にする」

「ど、どういう意味?」

「決勝戦の女王様チームは私自らが鍛えた最高峰の緊縛チームだ。本当に楽しみだよ。君たちがどれだけ戦えるのか、を」


「「キャンドル!早く縛ってくれ!」」


 お前らはとりあえず黙れ!



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