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第十二話:「目覚める力」

村の前線は、昼夜問わず迫り来る魔物たちとの激戦が続いていた。ルナたちは防衛線を守り抜くため奮闘しているものの、次々と押し寄せる魔物の数に圧倒されていた。


魔物は闇のような黒い体躯を持ち、獰猛な爪と鋭い牙が暗闇に光を放っている。彼らは人間の言葉を理解する様子もなく、ただ暴力的な欲望に駆られて村へと襲いかかってきていた。時折見える赤い瞳は、何かに支配されているかのようであり、その表情からは生き物としての感情が全く感じられない。それがただの群れではなく、何者かの意思に従って動いているように見えることが、村人たちをさらに恐怖に陥れていた。


ルナは前線で必死に魔法の結界を維持しつつ、魔物たちの攻撃をかわし続けていた。仲間たちもまた、それぞれの得意な技を駆使し、村を守るために戦っている。しかし、その激しい戦闘の中、ルナの頭にはある疑念がよぎっていた。


「この魔物たちは一体、何に操られているのだろう…?」


その疑問が心に浮かぶと同時に、彼女はふと「眠る力」の話を思い出した。伝説の戦士が語ったその言葉が、何かしらの意味を持っている気がしてならなかった。村のどこかに隠された強大な力が存在し、それが原因で魔物が引き寄せられているのではないか、と直感が働いたのだ。


その時、ルナのすぐ近くに大柄な魔物が現れた。通常の魔物とは一線を画す姿で、巨大な斧を手にし、鎧のような厚い皮膚を持っている。目は真紅に輝き、見る者を圧倒する威圧感を放っていた。


「ルナ、危ない!」ガルドが大声で叫ぶ。


ルナは咄嗟に身をかわし、その場を離れながら攻撃魔法を放った。しかし、魔物の鎧のような皮膚にはほとんどダメージが入らず、攻撃は弾かれてしまう。強力な結界で防いでいるとはいえ、この強靭な魔物が集団で襲ってきた場合、村を守り抜くのは容易ではない。


その魔物が吠え声を上げ、再びルナに襲いかかろうとしたその瞬間、リラが矢を放った。矢は魔物の目元に突き刺さり、一瞬の隙を作り出す。


「今よ、ルナ!」リラが叫ぶ。


ルナはその一瞬の隙を逃さず、再び魔法で攻撃を試みた。しかし、どれだけ力を注いでも、魔物は全く怯むことなく立ち上がる。異常なまでの耐久力に、ルナは焦りを感じずにはいられなかった。


その時、再び村の入り口に現れたのは、以前村を訪れた伝説の戦士であった。彼女は静かにルナたちの側へ歩み寄ると、彼女をじっと見つめ、まるで何かに気づいたかのように呟いた。


「お前がここに転生した理由、それはただ平和に暮らすためではない。ここには、異世界から来た者のみが触れることのできる“眠る力”があるのだ」


「異世界から来た者…?」ルナは彼女の言葉に戸惑いを覚えたが、その視線の先には確かな決意が宿っていた。


伝説の戦士はルナに近づき、そっと額に手をかざすと、柔らかな光がルナを包み込んだ。その瞬間、彼女の頭の中に遠い記憶がよみがえってくる。かつての世界での生活、そしてここに転生してからの時間。その記憶が鮮明になると同時に、彼女の中に眠っていた力が覚醒する感覚を覚えた。


現実の世界に意識が戻ったルナは、伝説の戦士と目を合わせ、その口から放たれた言葉に驚愕した。


「この村の守り手として、今こそその力を解き放ちなさい」


その瞬間、ルナの周囲にある魔力が強烈に高まり、青白い光が村全体を包み込むように広がっていった。彼女の中に眠っていた異世界からの力がついに解放され、村を覆う防御の結界が新たなエネルギーを得てさらに強固なものとなった。


押し寄せていた魔物たちは、その光に触れると次々と弾かれ、動きが鈍くなっていく。彼らは怯えたかのように後退し始め、一部の魔物は苦痛の叫び声を上げながら後ずさりしていった。赤い瞳が次々と消え、村を囲む光景は次第に静寂へと戻っていく。


ガルドが息を飲みながらその様子を見守り、リラもまた、呆然と立ち尽くしていた。二人とも、ルナが解き放った力に驚きを隠せない様子であった。


「ルナ…あなたは一体…?」


リラの震える声に、ルナは自分でも説明のつかない感覚を抱きながら微笑み返した。「私も、よくわからないんです。ただ、この地にいる意味が少しわかった気がします」


彼女が静かに呟くと、その青白い光が次第に消え、再び静かな夜が訪れた。しかし、その夜の星空には、以前よりも一際輝く星が一つ、村の上空に浮かんでいた。それはまるで、ルナの存在を象徴するかのように美しく輝き、村の未来を照らす光となっていた。


その後、村の人々はルナの力によって守られたことを知り、彼女を「異世界から来た守り手」として称えるようになった。




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