表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

第一話:「転生したら異世界の村でした」

暗い。視界は真っ暗で、音も聞こえない。ただ、無重力の中に漂っているような感覚だけがある。いったい自分はどこにいるのか、何が起こったのか、ぼんやりとした意識の中で思い出そうとする。


「えっと……何をしてたっけ……」


そんな時、ふと柔らかい光が目の前に浮かび上がる。その光が次第に強くなり、目が慣れてきたのか少しずつ周囲の様子が見えてくる。草の香りが鼻をくすぐり、かすかな風が頬を撫でていく。


「あれ……ここ、どこ?」


目を開けると、目の前には広がる緑の草原。青い空がどこまでも広がり、白い雲がゆっくりと流れている。まるでファンタジーの世界に迷い込んだかのような景色だ。頭を上げ、少し身体を動かそうとすると、妙に体が軽いことに気がつく。


「なんだか……体が違う?」


自分の手を見ると、小さくて柔らかな女の子の手が目に入った。驚いて身体を確認すると、自分はどうやら小柄な女の子に変わっていることがわかる。髪も自分が知っているものとは違い、ふわふわとした銀色の髪が肩まで伸びている。


「ま、まさか……転生ってやつ?」


混乱しながらも、状況を飲み込もうと考えを巡らせていると、後ろから声が聞こえた。


「おーい、大丈夫かい?」


振り向くと、そこには見慣れない異世界の住人らしき女の子が立っていた。背が少し高く、肌は透けるように青白く、瞳は大きな紫色でまるで宝石のように輝いている。特徴的なのは頭に小さな角が二本生えていることだ。


「あ、ありがとう……ここ、どこですか?」


「あんた、迷子かい?ここはエルナ村だよ。この辺じゃ私たちの種族が多く住んでるけど、あんたみたいな子は初めて見るね」


どうやらこの村は異種族が共存している場所のようだ。さっきの自分の姿を見て「TS転生」という言葉が浮かんできた。つまり、どうやら自分は異世界に転生して、しかも女の子として生まれ変わってしまったらしい。


「そういえば、名前はなんて言うの?」


「あ、名前は……えっと……」


突然の質問に、昔の名前が出そうになったが、この世界では違う名前を使ったほうがいいだろうと思い、少し考える。


「ルナ……って呼んでください」


「ルナか、いい名前だね。私はシア。この村の薬師をしてるんだ」


シアは優しく微笑んで、ルナに手を差し伸べた。


「村まで一緒に行こうか?ここに座り込んでてもしょうがないしさ」


ルナはシアの手を取り、ゆっくりと立ち上がると、一緒に村の方へ歩き出した。シアと話していると、彼女がこの村で生まれ育ったことや、村の人々がみな優しいこと、ここではさまざまな異種族が共存していることがわかってきた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


村に着くと、さまざまな種族の人々があちこちで談笑している様子が見えた。背が高くて筋肉質なドラゴン族の女性や、小さな翼を持った妖精族の子供たちまでいる。人々はシアを見るとにこやかに手を振り、ルナの姿を見ると「新しい子だね」と好奇心いっぱいの目で見つめてくる。


「ここが私の家さ。薬草やお茶でも飲んで一息つきなよ」


シアの家は小さな木造の家で、中は暖かく、木の香りが心地よい。ルナはシアに勧められるまま椅子に座り、出されたハーブティーを一口飲むと、体の中がほっと温まった。


「これ、おいしい……」


「ふふ、よかった。ルナが落ち着くまで、ここで暮らしてもいいよ」


「え……でも、いいんですか?」


「もちろんさ。困ってる人を見捨てるなんて、エルナ村の人はしないんだ」


シアの言葉に、ルナは心の底から安堵した。どうやらここでしばらく暮らしていけそうだし、このスローライフも悪くないかもしれない。



こうしてルナの異世界での新しい生活が始まった。さまざまな異種族の人々と交流しながら、のんびりとした村での日々を過ごしていく。そして、それがどんな小さな冒険と出会いをもたらしてくれるのか、ルナはまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ