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「はい、314番 ノエルさんね。」



「えっと、お願いします」




僕はと言えば、受付を済ませて、

案内されるまま、待合室にいた。



周りは学生しかいなくて、

なんというか、やはり居ずらい空間だった。



気のせいか三人しかいないが、

みんな家柄がいいのか、立派な制服に、お高そうな杖も持っている。



そりゃ、この人数で一人だけこれでは、目立ってしまうのも仕方ないだろう。



それに対して僕はと言えば、ボロいマントに布の服、そして何故か青銅の剣…

いやね、こんなの目立つでしょう…




「あなたも参加者なの?」



そんなことを思っていると、早速物珍しそうに声をかけられてしまう。



「まあ、一応…?」



僕がそういうと、声をかけてきた深緑色の長髪を持った背の高い女性に

何故かため息をつかれてしまった。



「あのね、この魔法大会が一体どんなことをするかわかってる?」



「いや…その…」



「はっきり言っておくけど、この大会は遊びじゃないわよ。魔法使いたちが、自分の実力を証明するためのイベントなの。だからその、というかよく参加できたわね。 イベントの参加にも資格が必要なはずなのだけれど?」



そこまで言われて、僕も昨日までの浮かれていた気持ちが、急に萎んでいくような気がした。



そりゃそうだ、実際この人もこの学校の優等生なんだろう。



装備も、見た目も、何もかもが一流に見える…

僕は恥をかきに来ただけなのではないかと、冷静になってしまう。



「いや、それは…昨日この学校の人だと思うんですけど、金髪の、小さな女の人に声をかけられて…そのままその…成り行きでと言いますか…

魔法に対する憧れはあったんですけど、気づいたら参加してまして…はい…」



「えと、小さい?金髪の…本当にその人に?」



「はい…」




僕がそういうと、深緑色の髪をした彼女は、

僕の顔を何故か眺めてから、



「私はエル、あの方に誘われたというなら、容赦はしませんからね」



なんか急に空気が険しくなった気がした。



「えっ、あの人ってやっぱり凄い人だったの…?」



「〜〜〜〜っ!!!と、とにかく、今日の大会で怪我でもしないようにせいぜい祈っておきなさい」




そうそう言って、エルは怒ってどこかへと行ってしまった。




はあ、どうしよう。




そんなふうに途方に暮れていると、

司会の人なのか、可愛らしい女の子が、進行を進めてくれる。




「はい、それでは只今より、ハルモニア魔法学校の魔法大会を開催しますっ、つきましてはですね、選手の皆様には、是非とも各々の才能を遺憾なく発揮していただくために、3つの場を用意いたしました!

一つは魔法の披露宴でございます。  自分で鍛えた魔法を観客の方々に魅せる機会でございます。  そして二つ目は実践。 モンスター相手に実技で魅せてもらいます。  そして最後が共闘ですね、ちょっと強力な魔物に団結して戦っていただく大目玉でございます。  今回は、こちらのBランクのモンスターである火炎狼を相手にしていただきます。 一体これを相手にどこまで応戦できるのかは見ものでございます!!   」



司会の子の話を聞いていて、オイオイオイと思ったのは僕だけで、

周りの子達は誰一人として動揺もしていないあたり、やはりこの大会に僕は場違いだということがよくわかるだろう。



いくら大会といえ、まさかのコロシアムですか…いや、この世界危険すぎますってば。



「それでは、今年の挑戦者を紹介しますっ。  まずは我がハルモニア学園の生徒会長であり、主席でもあります、エルさんです!!」




ワーワー、という歓声と共に現れたのは、

まあつまり、エルだったわけだ。



エルはにこやかに笑ってから、

お高そうな杖を振ると、その振られた軌道に沿って地面が凍った。




「おお、すごいな…」




参加者の僕も本格的な魔法に興奮を隠せない。




「続いて、ハルモニア学園2年の秀才、キサラギさんです」




そう言って現れたのは、小柄な猫耳の女の子。



ぺこり、とお辞儀をすると、

俯いてそっぽを向いてしまう。



ふむ、この世界には獣人もいるのか…

いや、可愛いなあ…なんて思っていたら、キサラギと目が合う。




「?」



僕がぽかんとしていると、

キサラギが慌てて目を逸らした。



なんだったんだろう?




「そして、期待の1年、ハルキさんです〜〜〜イケメンです〜〜〜」



司会の子がテンション上げて推しているのは、まさに絵に描いたようなイケメンだった。



「よろしくねー」



そういうと、彼のスマイルで観客の女子生徒のテンションが最高潮に達する…

ああ、こういう人間に俺もなりたかったよ…




「そして今回は、まさかの参加者が居ます。  それが〜〜〜、この方。 ノエルさんです。 その格好からは想像できませんが、一体どんな活躍を見せてくれるんでしょうか、今から楽しみですねえー(棒)」




そしてみんなの視線が一斉に僕を見るわけだけれども、

残念ながらイケメンの後に紹介されても、悲しくなるだけだということはわかりきっていた。



「えっと、よろしくお願いしますっ」



必死に頭を下げてみたけれど、

そりゃ、あんなイケメンの後じゃ、ポカーン、に決まってるさ。



悲しくなんてないもんっ、ばーーーーかっ。



それに、大会っていう割に参加者が1学年一人って時点でおかしいよね?

もっといっぱいいるのかと思ってたよ。


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