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翌朝になって、会計を済ませて宿屋を出ると、
1人が僕のところに来て、声をかけられた。
「やあ、あなたがノエルさんですね…昨日の魔法大会を見ていたんですが、ぜひうちのギルドで仕事を頼みたいんです」
突然の勧誘!!
僕には縁がなかったけど、昔の世界では企業側からスカウトが来るなんてことは滅多になくて、
こちらから面接をお願いして、その面接に受かって、初めてお仕事をさせていただく…って感じの扱いだった気がする。
そして、時々ニュースでは100社落とされたとか、
なんかそんなニュースを見て、厳しいんだなあ…と他人事のように眺めていたのだから、
こんなこと、よほどヤバい会社かそれじゃなかったらよほどの異例だろう。
「えっと? すみませんが話がよくわからないんですが」
「えっと、ですから昨日の魔法大会を見て、あなたの才能を引き抜きに来たわけなんですが…」
まあつまり、マリイの予言が当たっていたというわけだろう。
それにしても、大会の次の日に誰にもいってないのにこの場所がバレるとは想像以上に怖い。
「えっと、仕事内容は?」
「そりゃもう、魔物退治から人助けまで様々ですよ。 この仕事は登録制なんで、まあ、単発の仕事ですね…請け負っていただいた仕事をこなして、その報酬を与えるといった感じです」
「それじゃあ、好きな時に仕事ができるってこと?」
「はいっ、一応登録と、それから案件だけでも見ていただけると…」
うーん、まあ、登録したからといってデメリットがあるわけじゃ無いわけだから、
登録はしておこうかな…でも、こういうのはやはり一言相談するべきだろうか…
「ちなみに3日くらい前ですが、ボア村の近くにレッドオーガーが出現したという情報が入ってます」
「え? それなら早くなんとかしないといけないんじゃないんですか?」
「はいです、でも魔物も強いですから、人も集まらなくて…」
急いでランクを見るとB+と書いてある。
この前の火炎狼がBランクと考えれば、この世界ではかなり強い部類に入るだろう。
要するにこれの討伐も兼ねているというわけだろうか。
「いや、迷ってる暇はないよ…とりあえずそこに案内してもらっていいですか?」
「はいっ、ただいま!」
こうして僕の初仕事が始まったわけだけど
ランクBのモンスターでさえあんな見た目なのに、一人で大丈夫なんだろうかと不安になる。
レッドということはまた炎なんだろうか…
しかし緊張感がなさすぎる。
「ちなみに報酬って?」
「現金にして5000マニラになります」
「うえっ、5、5000マニラ!?」
「いや、相手を考えればかなり安いですよ…」
宿一晩10マニラ、僕が持たせてもらったお金が30マニラだから、
かなりの大金だろう。
これだけあれば、生前全くできなかった親孝行も出来るというものだ。
僕がこちらの世界に来る前のノエルは相当の怠け者だったようだし、
喜ぶ顔が見れると思うと、やる気が出てきた。
「さあ、ここがボア村です。 レッドオーガーはここから西に見える森を棲家にしているようですので、ご注意くださいねっ、それでは依頼が終わり次第、こちらの国営ギルドリア支部によってくださいねっ、それじゃあ、ご武運を」
「えっ、ちょっと、ここで終わり!?」
僕の声も虚しく、僕をギルドに勧誘した張本人は、そそくさと居なくなってしまった。
一人取り残される僕…
はあ、とりあえず、情報収集か? それとも、さっさと終わらせるか。
僕としては短期決戦が望ましいだろう、
長引けばお腹も空くし、リアまで帰れなくなる。
僕は早速、西の森に向かった。