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第7章

 あまり「つきあっている」、「交際している」という意識もないままに、ロリは大体月イチペースでノア・キングとデートをし、翌年の六月、高校を卒業するまでの間――ふたりの距離が一番縮まったのが、遊園地の観覧車で手を繋いだ瞬間だったかもしれない。


 もしこれで、ロリのほうがノアに告白してつきあいはじめたのだとしたら、『これで本当につきあってるって言えるのかな』とか、『キスしようともしてこないだなんて、彼、わたしのこと本当に好きなのかしら』などと、くよくよ悩んだかもしれない。


 けれど、よく聞いてみると……ノアは緊張するとまず手のひらにべったりと汗が滲んでくるということで、「そんな手が伸びてきたらキモいだろうなと思って」と、もじもじしながら告白していたのである。その真実を知った瞬間、ロリは初めてノア・キングに対してきゅんとした。そして思った。(もしかして、こういう<好き>もあるのかもしれない)ということを……。


 この頃になると、マリもエリもノアに対して『あいつ、もしかして隠れホモかなんか?』とか、『寮で先輩に手篭めにされるか、輪姦されてトラウマでも抱えてんじゃないの?』とすら言うようになっていたが、ロリとしては(このまま、彼とつきあうというのでも全然いいかもしれない)と、ノアとの安全な交際に、だんだん安心感さえ見出すようになっていたのである。


 だから、自分の三月の誕生日に、ノアが素敵なお店を予約してくれたり、高価なプレゼントを用意してくれたことのお返しとして――ロリは六月二十七日のノアの誕生日に、高校卒業のお祝いもこめて万年筆をプレゼントしたことの他に、機を見て自分からキスのプレゼントをしたのだった。


「びっくりした?でも、これなら手を繋ぐのと違って、汗かかなくていいでしょ?」


 場所は、ノアが大学合格と同時、親から与えてもらったという高級マンションでのことだった。彼自身はあくまで卑屈に『二流の私立大学』という言い方をしていたが、ロリは一生懸命「すごくがんばってたじゃない!ほんと、すごいことだよ。それに、大学は名前よりもそこで何を学ぶかだってよく言うじゃん!」などと言っては、ノアのことを励ました。


 大学へ合格し、晴れて念願の一人暮らしを始めたノアだったが、ロリはその前まで彼が母親と暮らしていた豪邸へも遊びにいったことがあったから、ノアが何故将来に夢を持てず、『何かになろうとしても無意味だ』というように、やもすれば自堕落になりがちなのか、その理由がわかるような気がしていた。


『実の息子のことを考えるよりも、自分の欲望に熱中している母親』との間にあるのは、極めて表層的な親子関係であって、ノア曰く、「心配する振りを一応してはくれるが、本当には息子のことを思っていない」というのだろうか。ノアの母の周囲にはスポンジかこんにゃくか海綿のような、何かグニャグニャしたものが取り巻いていて、親子として<本当の会話>のようなものが成立しないらしい――というのは、ロリが傍から見ていてもよくわかることだったから。


 ロリにしても、ノアの母に屋敷で会ったのは、ほんの数回であったが、彼女が自分のことと、自分を満足させてくれるような男との関係についてしか興味を持たない女性らしい……ということについては、会うたびごとに感じられることだったからである。


『まあ、よくある話っちゃよくある話なわけでさ、一度、親父の家のほうに行ってみようかなと思ったこともあったけど、事情は向こうだって似たりよったりなわけで……オレんとこの寄宿学校じゃ、似たような境遇の奴ってのも少なくなかったりして、こっちが大人になるしかないってことなんだよな、ようするに。ただ、本当の愛情は与えないかわりの贖罪みたいなもんとして、金のほうは自由に使わせてくれたりするわけだから、そこらへんの特権ってえの?ガキみたいに『ママの愛がほしいんだ、ぼくは』なんてキモいこと言ってねえで、そんなもんより金の価値に目覚めて自由を満喫したほうがずっと楽しい十代ってことになる』


 ノアがそう言った時、ロリが思ったのは――(その割に彼はあまりいい十代を過ごせてなさそうだ)と直感的に感じたことだったろうか。とはいえ、自分にしても地味で平凡な学校生活を送っていたから、そうした意味でもノアの気持ちというのはよくわかるところがあったのである。


「も、もしかして今の、ロリの自分からしたファースト・キスだったりする?」


「う~ん。まあ、たぶんそうだよね。中学生の頃、女友達とちょっとキスしちゃったことあるけど、男の子としたのはノアが初めてだから……」


「ほんとに!?うわー、マジで嬉しいっ。二流大学とはいえ、勉強のほうもがんばってきて良かったあ。オレさあ、これから経営学とかみっちし勉強して、金儲けに詳しくなろうと思うんだ。それで、親父がオレを捨てた後ろめたさから、事業の金は都合してくれるっていうから、金稼いで、それでロリと結婚して、子供に囲まれた幸せな人生を送りたい」


「…………………」


 ロリがシャンパングラスをテーブルに置き、少しの間黙り込んだせいだろうか。繊細で、空気を読むのに長けたノアは、そのことを気にしたようだった。


「あ、もしかして、そういう夢のない男はつまんないってこと?う~ん。でも、そこの事業については、オレなりに夢つめこめるようにがんばりたいとは思ってるんだけど……」


「ち、ちがうよっ。わたしはね、ノアはなんでもノアの好きなとおり、自由にするのが一番って思うし。ただ、ファースト・キスって意味でいうと、おととし、キャンプ場でノアとしたのが最初だったんじゃないかなって、そう思って……」


「だよなー。そうだ、そうだ。オレ、嬉しすぎて一番大事なこと忘れてた。あの瞬間、オレ、なんかビビッと来てさ。なんでオレ、こんな可愛い子に気づかなかったんだろっていうことと……あ、もちろんショックではあったよ。あのあとロリ、天敵に追われる雪うさぎみたいに速攻走って逃げたろ?そんなにイヤだったんだなーと思ったら、周囲の手前、『こんなこと慣れてる』みたいな、平気な振りしてたけど、内心じゃ結構ガックリきてた」


「なんでそこ、雪うさぎ限定なの?」


 ロリにしても照れくさかったけれど、そう聞くことで顔が赤くなりそうになるのをなんとか誤魔化した。


「あ、なんかテレビで見たことあんだ。あれ、ナショジオかなんかだったかなあ。それか、イギリスのBBC系のネイチャー番組。雪うさぎって、夏は茶色っぽい毛なのが、冬には雪と同じく真っ白くなるだろ?あれって、雪と同化して敵から逃げやすくするためらしいけど……その姿がなんともいじましくってさ。雪みたいに真っ白くなっても、外敵に襲われる恐怖や不安には絶えず怯えてなくちゃなんないだろ?人間以外の自然の有り様見てると、『神さまって実はほんとにいるんじゃねえかな』って思ったりするよな。それぞれの動物に対して、そんなふうにして何かの不思議な特技を与えて生き延びさせるようにした上、自然界全体のバランスも不思議と保たれてるっていう意味でさ」


「うん。そうだね」


 ――その日、キス以上のことは何もなく、ノアはただ別れ際にこう言っていた。「さっきは軽い調子でサラッと言っちゃったけど、結婚とかそういうの、マジでオレ、本気だから」と……。


(わたし、たぶん今の自分の状況を『恵まれてる』と思って感謝すべきなのよね。ノアは思った以上に全然真面目な人だし、わたしのことも、わたしとの関係も大切にしてくれるし……)


 しかも、お金持ちの御曹司ですらある――自分にはもったいなさすぎる相手であるとして、もっと喜ぶべきだ……ロリは今までの間ずっと、一生懸命そう思い込もうとしてきた。けれど、(何かが違う)という違和感を拭いきれずにきたというのも事実だった。


(ノアのあの……『結婚して家庭を持ってマトモになりたい』願望っていうのはたぶん、お父さんやお母さんの乱れた性生活とか、そういうのを見てきたからむしろ『自分だけはああならないんだ』みたいな、そういうことっぽい気がするのよね。だから、相手がわたしじゃなくても、貞操観念がしっかりしてるヴァージンの子で、自分の存在を脅かさないタイプの女子だったら誰でもよかったんじゃないかなって、たまに思うことがあって……)


 ロリは家へ戻ってきてから、そんなことを思って溜息を着いた。誕生日にノアがプレゼントしてくれたペンダントを外し、アクセサリーボックスのほうへ仕舞い込む。もし、ロリがノアのことを心から本当に好きだったとしたら、そのペンダントにしても、(彼と一緒にいない間も、このペンダントを見てノアのこと思いだそう)とか、(このペンダントをつけてると、彼といない間も一緒にいるみたい)といったように思えたかもしれない。けれど、ロリがそのペンダントをつけるのは、ノアと会う時だけだった。そうしないと、なんだか相手に悪いような気がして……。


(まあ、わたしもノアと一緒で、性格のほうがちょっと卑屈だからなあ。わたしみたいのとつきあってくれるだけでも有難いと思わなきゃとか、そんなふうに思うところもあって、今の今までずるずるやってきちゃったけど……)


 結局のところ、司書の資格の取れる短大の<美術コース>をロリは専攻することに決め、そちらは推薦入学のほうが割と早い段階で決まっていた。ゆえに、受験勉強のほうに追われることはなかったわけだが、『自分の将来にとってこれが一番正しかったか』どうかはまだ未知数だった。ただ、母シャーロットに相談したところ、「ミネルヴァ短大で二年過ごして、そのあと大学へ行きたいということなら、また考えればいいじゃないの」という言葉に後押しされ、将来の具体的な就職先についてはそれほど深く考えず、自分が一番学びたいと感じる学科のほうを選んだわけだった。


(そうよねえ。ノアは聖アントニウス大のほうへ進学することになったわけだけど……今までずっと男子校で男の園だったのが、これからは共学ってことになるわけだもんね。サークルで合コンみたいなことがあって、『ごめん。実は他に好きな子ができたんだ』ってことも、ありえなくもなかったりするのかな……)


 そこまで考えてロリは、やはりノアの言った結婚云々話を、あまり重いものとして受けとめないことにした。というのも、マリからもエリからも「一体いつ頃、首から下を許すのか」といったことを、何度となく聞かれてばかりいたからだ。


『そんなこと言ったらエリ、エリだってクリスとどうするのよ!?』


 マリはスポーツ推薦枠により、そのまま聖マリアンヌ大へ進学することが決まっており、エリがユトレイシア大へ恋人のクリスと無事合格したことがわかった時――親友三人で、そのことを祝うために集まったことがあった。


 と言っても、ロリの部屋で、それぞれピザやハンバーガーやポテト、ケーキなどを持ち寄って祝ったという程度のことではあったのだが……。


『どうかなあ。わたしはね、クリスが待つっていうその限界まで待たせておくつもりなの。わたしもロリと同じくまだヴァージンだけど、男と女じゃ性周期が違うってことくらいは、ちゃんと知ってるつもりだもん』


『そうだよねえ。ルークもそこらへん、ヤリたい盛りなのはわかるけど、わたしもかなりとこ、抑えてもらってる感じだし』


 平静な顔をして、ちるるる、とストローからジュースを飲む友人ふたりを相手に、ロリは顔を赤くしていた。ロリもエリも、マリとルークの恋人同士としてのあれこれについて、それほど突っ込んだ質問をしたことはない。けれど、ロリにとっては……ルークのそのあたりのことをちらとでも想像してみるだに、いけない妄想をしているような気分になってくるのだった。


『ロリもさ、もしノアとこれから真剣に次のステップに進むとかなら、一応覚えといたほうがいいよ。べつにわたし、「これだから男ってイヤよねえ」とか、そんなくだらないことが言いたいわけじゃないの。単に、体の構造の違いとか、生理学的な問題なのよ、それは。女よりも男のほうが性周期が早くまわってくるっていうのは、それだけ体の中に――まあ、この場合精巣ってこと?そこに精子が蓄えられて、発射準備オッケーってことになったら、そりゃ当然自然の摂理として出したいわけじゃない。でも、女の場合、男の性周期の早さに合わせてたら、ヤリまくりの娼婦みたいになっちゃうんじゃない?自分のほうではそれほどの気分でもないのに相手につきあって……とか、ある程度は譲歩するけど、わたし、そんなことよりまだ大学時代は勉強のほうが大事って気がするしなあ』


『ふふん。理系女子のいかにもな分析ってとこ?だけどエリ、あんただってわかんないわよー?一度目覚めたら、クリスひとりじゃ全然間に合わなくなって、あんたのこと、生涯の運命の相手だなんて思い込んでるクリスのことも振っちゃって、次から次へと男を変える……とか、絶対ないとは言い切れないんじゃない?』


『ええっ!?マリ、勝手に話作るのやめてったら。わたし、これでも一応牧師の娘なんですからねっ。上のお姉さんは三人ともしとやかで貞淑なのに、一番下の子だけ性的素行がよろしくない……なんて評判が立って、父さんの顔に泥ぬったりするわけにはいかない身の上なんだから、こちとらっ』


『うんうん、わたしもエリはきっとクリスとベストカップルとして大学のほうも優秀な成績で卒業するんじゃないかって、そんな気がしてるよ。だから、あんたのことはなんにも心配してない。ただ、小学生の頃からいい子の優等生で、大学も恋人と一緒に国で一番と目されるところへ入学して――なんて、悪い意味で言うんじゃないけど、つまんなくないのかな、それで……って、ちょっとだけ思わなくもないっていうか』


 エリはマリと彼女の意見に対して軽く肩を竦めてみせた。そんなことはこれまでの人生で、何度となく考えてきたことだ、とでも言うように。


『それはね、もう牧師を父親に持ったりしたら、それこそ逃れられない運命ってことよ。ただ、クリスに関してはね、ちょっとだけ考えなくもない。だって、このままいったらわたしの人生、あまりにも予定調和すぎるじゃないっ!ここからもし逃れられるとしたら――それはもしかしたら男の力によってかもしれないとは、このわたしでも流石に夢みることはあるわ』


『えっ!?エリでもやっぱりそう?』


 ロリはポテトにケチャップをつけて、それを口へ放り込みつつ、何気にそう聞いた。


『そりゃそうでしょ。うちの上の姉さんは三人とも、うちの教会に通ってる品行方正な模範的クリスチャンと結婚してるのよ。それの何が悪いというわけじゃない……三人とも、それぞれそれなりに幸せそうでもあるしね。でも、父さんや母さんに孫抱かせるだなんだ、一通りの親孝行については姉さんたちがすでにやってくれてるわけだから、わたしはね、少しくらいは我が儘が許されていいんじゃないかって、そう思うところがあるの。たとえばね、ロリには悪いけど、あんたの彼氏のノアって、わたし自身は全然タイプとかじゃない。それでも、あのくらいお金に不自由しないって男がこのわたしにベタ惚れで、どっか外国にでも連れて逃げてくんないかなーみたいな、そういうことはやっぱ考えちゃうわよね。なんか、健全な乙女の現実逃避として』


 マリとロリはお互いに顔を見合わせると、ぷっと吹きだした。


『エリ、あんたの夢って随分お安いわね』


『うん。わたしでも普段、もっとすごいこと妄想してるよ』


『なーにーよーうっ。そこまで言うんだったらロリ、まずはあんたからその乙女の妄想とやらを白状しなさいよっ!あと、マリっ。あんたはルーク=レイとの情事ねっ。スポーツ選手同士って、そこらへん激しいってよく言うものっ』


『ダメだって、エリ。わたしの妄想なんて、口にだしたらイタすぎて聞いてらんないくらいの感じのものだもんっ。それより、リアルでちゃんと恋愛してるマリの話のほうがよっぽど説得力あるって』


『ああ、ようするにルークとのセックスのこと?まあ、一言でいえばあいつはただの野獣みたいなもんじゃない?あんまり我慢させといて、他の女にいかれてもなんか腹立つし、そこらへんはなんていうかこう……なんとなーく空気読んでヤッてる感じかなあ』


(わたしがマリで、つきあってるのがもしルークだったら……あんなふうに冷静では絶対いられないだろうな、きっと。なんでも相手の言うとおりにしなきゃみたいに思って、ただ盲目に恋愛に溺れちゃいそう。だから、やっぱりマリはすごいのよね。お互い、いい恋愛して、それがテニスとか、他のことにもいい影響の循環みたいのがあって、バランスも取れてて……)


 ロリはジュエリーボックスの中から、その昔誕生日プレゼントとしてルークからもらったことのある、銀色のブレスレットを取りだした。誕生石の小さなアクアマリンのついた可愛いブレスレット。彼にとってはあまりそう意味のないものだとわかってはいる。けれど、ロリは落ち込んだ時、元気のない時、やる気の欲しい時……いつでもその、宝物のブレスレットを手首につけて自分を励ました。そうすると、ルーク=レイがすぐ隣で『元気だしなよ』とか、『君は大丈夫だよ』と、優しく励ましてくれてるような、そんな気がして……。


 けれど、ロリにもノアという初彼を得て、初めてわかったことがある。きっと、<本当に心から愛する人との恋>というのは――それは、身も心も滅ぼすほどの、激しいものであるに違いない。それよりは、今ロリにはノアとの関係性において、色々冷静に判断することも出来、決して相手に夢中というわけでもない。『それで、本当に恋と言えるのか?』とか、『そんなの、相手にも失礼ではないか』という問題を除いたとすれば……もしかして、今の自分くらいのほうが、ほどよく恋愛中毒的なものからも距離を置けていてちょうどいいのかもしれない――ロリはそんなふうに自己分析しないでもなかった。


(そうそう。それに、エリじゃないけど、わたしもお遊びで短大に進学するわけじゃないから、これから二年の間、デートしてる暇なんてあるかどうかってくらい、勉強的な部分で忙しくなるのよね)


 ミネルヴァ大学付属短大は、高校時代のロリの成績としては、若干背伸びをして入学した形となる。また、面接時にも、<美術コース>の他に司書の資格取得のための単位をとるのは、夏休みにも講義を受けに来なくてはならなかったりと、結構大変だとの話を聞いた。けれど、ロリは面接官に対し、自分がいかに小さな頃から美術というものに心酔してきたか、また文学というものを愛してきたか――美術鑑賞も本を読むことも、自分にとっては魂の交歓行為に等しいということを力説し、それで合格したという経緯があることから、今からの二年間、しっかりみっちり勉学に励もうという心意気だけはあるつもりなのだ。


(でも、確かにそうだよね……相手のことが本当に好きだったら当然、きっと勉強なんて全然手につかなくなるだろうな。それに、まあまあ好きとか結構好きくらいの段階で、なんとなくノリや空気に流された場合でも、体の関係なんて持っちゃったら、きっとそのことばっかりっていうか、恋愛ばっかりに傾倒しちゃって、それ以外のことがダメになりそうな気もするし……)


 実はそうした意味でも、親友のエリが恋人クリスとの関係をどうするつもりなのか、ロリは興味があった。というのも、エリの場合は『あんな程度の奴にこのあたしが夢中?ふざけなさんな』といった態度で一見ありつつ――実はエリが結構クリスのことを好きだと、ロリにはわかっている。そのふたりが、キス以上の関係に進み、(エリは認めたがらないだろうけど、間違いなくふたりはラブラブだあ)みたいな空気を周囲に醸しだすようになったとしたら……ロリもいよいよ自分の進退について決断しなくてはならないような気がしている。


 そして、それは決してロリの場合、大親友のエリも次のステップへ進んで幸せそうだから、だったら自分も――といったことではなく、もしかしたらその逆の選択をすることになるかもしれないということが、目下のところロリにとって一番の悩みなのだった。




 >>続く。






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