俺の生きる意味
感動を与えられる人になりたいという思いから小説を書き始めました!かなめです。
前書きで長々と話すのもなんですので、どうぞブックマーク登録と評価、感想お願いします。しますぅ~。
あの日からレインは、部屋に引き籠るようになった。
俺は、今日もレインの部屋の窓を軽くたたいた。
「外の世界に行きたかったんじゃないのか?今日は晴れてるし絶好のお散歩日和だと思うぞ」
「……」
レインは、こちらを見ようともせずただ床を見るばかりで反応は無かった。
「おい!何とか言ったらどうなんだ?」
「いや!ごめんなさいごめんなさい。無理…無理無理!怖い…無理」
レインは自分を世界のすべてから守るかのように震えながら体を縮こまらせた。
俺には、この世界を怖がるレインに何もしてあげられない。
あの時の情景がよみがえる。
あの時もレインは怖がっていた。絶望していた。この世界に。
あの時も俺は何もしてあげられなかった。
昔から俺は変わらない。ただ命令だけに従う…それだけが俺の唯一の存在理由であり、生きる意味でもあった。
『俺は俺自身の無力さに失望した』
「またくる…」
「……」
俺は、静かに窓を閉じその場を後にした。
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命令が下った。
今回の仕事は、隣の街に住む貴族の排除。
俺たちのような組織は、数が少ない。それゆえ、隣国からも要請が来ることがある。俺たちの存在は、国のごく一部の者しか知られておらず、そのうえ、腕も確かなものであり都合がいいのだ。
もちろん、国同士のやり取りなので報酬も莫大な物である。そのおかげでこの国が活発であることにつながるのだが、そのことを知る者はこの国で王と俺たちの組織だけだろう。
俺は、銃を構え、照準をターゲットに合わせた。
俺は、淡々と冷徹にそして速やかにこなすだけだ。
今までもそしてこれからも変わらない。ミスは許されない。
ただ、集中しろ。
照準を合わせたまま、トリガーに指を添える。
『いや!ごめんなさいごめんなさい。無理…無理無理!怖い…無理』
撃つ瞬間、レインの姿が目に浮かび動揺した。そして、照準がずれ、そのまま撃ってしまった。
弾は、ターゲットの位置から少し横にずれ、着弾した。
そして、ターゲットは慌てるように部屋から出て行った。
まずい状況になった。こんなミスを俺がするなんて…このまま逃がせば、国の信用が落ちることになる。
なんとしてもここで排除しなければならない。
『うつろな表情をした彼女が脳裏をよぎる』
だめだ。集中しろ。
いそがないと手遅れになる。追いかけよう。
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屋敷の広間。
階段を上った上階から、俺を見下すようにターゲットはニヤニヤと見下ろしていた。
「誰の差し金かは知らんが。まんまと罠にはまりおって。お前を雇ったやつはとんだバカみたいだなぁ!」
ターゲットは、上階から俺にも聞こえるぐらいの高笑いをした。
そして、俺を囲むように隠れていた敵の護衛がぞろぞろと現れた。
「お前はここで終わりだ。自分の無力さに歯噛みしながら死んでしまえ」
無力さだと…?
そんなのとっくに気付いてる。
俺は、一人の女の子すら守れなかった。
そんな奴は、ここで死んでも仕方がないのではないか?
それでも…
「俺は、まだ何も成し遂げていない。あいつの為に何もしてやれていない。あいつは、まだあの暗い場所でひとりぼっちなんだ」
「何を言っている?」
俺は、強くこぶしを握り言葉を続けた。
「だから、俺があいつを外に連れ出す」
俺は、ナイフを構え、そして走り出した。
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敵は、あまりにも多かった。それでも、何とか凌いでは反撃を繰り返し耐えていた。
それでも、全ての方向をカバーできるわけでは無く、徐々に生傷も増え始めていた。
「最初の威勢だけはよかったが、所詮人間の限界とはそうゆうものだ!あわれだなぁ。命を懸けても守りたい人がいる。だが、結局!絶望の前では無力そのものだ!」
俺は、敵の攻撃の中、ふと考えた。
それは違うと。俺は知っている。
希望に満ち溢れた世界で笑う少女を。
ただただ嬉しそうに、楽しそうに、朗らかに笑う少女を。
俺は、思い出す。
『あ…甘い!!おいしぃぃ!!こんなの初めてだよ!!すごい!すごいよ!!』
初めて、リンゴを食べた君のことを。
君が笑ってくれるだけで、力が湧いてくる。
俺は、今にも斬りかかろうとしていた周りの兵士たちを瞬時に切り伏せた。
それでも、敵の数は多く、また防戦一方の状況が続いた。
本当に危ないと思うとき、君のことを思い出す。
君が笑う姿を。
『だめなんです!一緒に食べましょう!』
『いやです!私、今すーーっごく幸せなんです!』
『私、一人が幸せなんて不公平ですよ!できることなら…私をこんなに幸せにしてくれたあなたと一緒に幸せになりたいです!』
心臓がいつもよりも早く脈打つのを感じる。
君は、俺と一緒に幸せになる事を望んでくれた。
だから俺も君と一緒に幸せになる事を望むよ。
君のために…
『俺はここで死ぬわけにはいかない』
俺は、次々と周りにいる兵士を切り伏せる。
寸前のところで攻撃をかわし、反撃をし続けた。
俺は、その間も彼女との日々を思い出す。
『す、すごいです…!』
『あんまり綺麗に切れてませんね…ふふっ』
『わぁ~すごくきれい!』
『素敵!!』
『外に連れ出してください!ナイト様』
『だって、名前を教えてくれないんだもん!どんな名前で呼ぼうが私の勝手です!』
『どうしてですか~?』
『それでは、クロ!今日もどうぞよろしくお願いしますね』
驚いてくれる君も、拗ねる君も、意地悪な君も、笑ってくれる君も…
俺にとってはかけがえのないものになっていた。
大切な存在になっていた。
『俺は、君のために生きるよ』
攻撃速度を徐々に上げていく。自分が体感したことのない速さ。
心臓の脈打ちの速さが最高潮に達する。
敵が攻撃する前に倒れ、後ろで待機している敵も隙間を縫いながら次々に倒していく。
全てがゆっくりに見える世界の中、ただ君の笑顔だけが脳裏に焼き付いていた。
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昼時の街、人の少ない通り
「早く帰らないといけないのに…あまりにも血を流し過ぎた」
視界が歪み、ふらふらとした足取りで壁に手を着きながら歩いた。
早くあいつの元へ…俺があいつの為に何をしてあげられるのかは分からない。
それでも、傍にいるぐらいはしてやりたい。
その時、先ほどまで手に触れていた壁のごつごつした感触が変わった。
壁に目を向けるとそこには、一枚の色鮮やかな紙が貼ってあった。
『今夜、この国で年に一度の花火大会を実施します』
その紙には、たくさんの色の花火が背景を埋め尽くすほどに書かれていて、とても華やかで美しいと感じた。
「これをあいつに見せたら喜ぶだろうか…」
俺は、大きく息を吸い込み出来るだけ早く彼女のもとへ向かった。
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彼女の部屋の窓の前まで辿り着いた。
窓は、俺が最後に寄った時と同じく鍵が開いたまま閉じられていた。
ふと、部屋にいる彼女に目を向ける。
すると、彼女もこちらを向き、そして目と目が合う。
俺は、静かに窓を開ける。
あの時と同じように、絶望に打つひしがれた彼女を連れ出すように、手を差し伸べる。
あの時は、俺の手を取る前に倒れてしまった。信じてもらえなかった。
でも、もう一度だけ俺と一緒に。君と一緒に。
歩ませてほしい。
「君に見せたいものがある。だから、もう一度だけ。俺を信じてほしい」
痛みに今にも倒れそうな自分を堪え、必死に君だけを見つめた。
大詰めというところですかね?次回は、最終回になるかもしれないしならないかもしれない。
実は、もうすでに次回作について考えていまして…そちらの方は、この作品よりももっと長くなると思います。一応、初めての小説ということもあり、最初は短めで行こうということで、この作品だったわけです。
少しでも何かこの小説で感じるものがあれば幸いです。それでは、また次回のあとがきで~さいなら~