紙芝居に想いを馳せて
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…夢を見た……
私が幼いころの夢、忘れていた記憶、物心つく前の思い出。
私は小さい頃、お父様、お母様と一緒に外に出かけたことがある。
あの小高い丘の上で二人と一緒に街の景色を見た。
私は嬉しかった。楽しかった。
二人はとても優しそうに微笑んでいたから。
どうして忘れていたのだろう…
物心つく頃には、すでに私は部屋にいた。
外に出たことで思い出すきっかけになったのかもしれない。
記憶があいまいで、あまり思い出せないけれど、優しい両親に愛されて育った私。
私のことを心の底から愛してくれている。そんな優しい両親のはずなのに…
どうして…私は…
『外に出られないの…?』
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目を覚ます。
何かとても大事なことを忘れているような…
何かが思い出すのを妨げるような…
私は、一体何を忘れているの?
私は、遠くの空を眺めるようにそっと窓にふれた。
またあの人が来るのを灰色の世界で、ただ待っている。
外に出るきっかけをくれた人。私に彩られた世界を見せてくれた人。
「またもう一度、外に連れ出して…」
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コンコン
コンコン
私、いつの間にか眠っていたみたい…
眠り眼をこすって、音のする方に目を向ける。
そこには、黒い騎士の装束に身を包んだあの人がいた。
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「命令が下った。お前を外に連れ出す。嫌だったら断ってもいい」
命令…
確かにこの人の意思で私を連れ出すわけではないけれど、それでも私は心の底から嬉しいと感じた。
「外に連れ出してください!ナイト様」
「何だその呼び方は…」
ナイト様は、何とも嫌そうな表情で言った。
「だって、名前を教えてくれないんだもん!どんな名前で呼ぼうが私の勝手です!」
私は、ぷいっと頬を膨らませて意地を張った。
「その、なんだ…あぁ~分かった。悪かった。だが、ナイト様だけはやめてくれ」
「どうしてですか~?」
私は、ちょっと恥ずかしそうにする彼に意地悪をしてみた。
「は、恥ずかしいから…」
ボソッと何か聞こえた気がした。
「だぁぁ!とにかく、だめだ!それだけはだめだ!!」
彼は、大きな声でなかなか似合いそうな『ナイト様』を否定した。
「残念です…それでは、なんとお呼びしましょうか」
「…」
男は、腕を組みしばらく黙ったあと静かに言った。
「クロでいい」
「クロ様…」
「様はつけるな!」
クロは、すぐに訂正した。
「それでは、クロ!今日もどうぞよろしくお願いしますね」
「……あまり期待はするなよ」
クロは、静かにそう言って外の世界から私に手を差し伸べた。
私は、その手をそっと握り返し、たくさんの色で彩られた外の世界にもう一度足を踏み出した。
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午前中は、街のあらゆるところに訪れた。
まだ、明るい時間帯ではあるものの街は活気であふれていた。
「私、食べ歩き?というものを初めてしました!感動です!」
歩いて景色を楽しみながら、何かを食べる。
「一石二鳥です!」
「座って食べろ!」
「あっぷ!」
デコピンをされてしまいました。
「あの…私、一応これでも姫なのですが…」
「そうかそうか、それはわるかったなぁ~」
クロは、心込めてませんというように棒読みで返事した。
「むぅ~確かに私もマナー的に悪いと思ったので許します!今回だけですからね!あっぷ!」
「話が長い!」
まぁいいです。この食べ物を買ってくれたので許すとしましょう…
私は、広場の噴水前のベンチに腰掛けた。
それにしても、私の街はこんなにも綺麗で素敵だったのですね…
私…なんだか嬉しいです。
この街は、こんなに美しい街でした。
それならば、他の街はどうなのでしょうか…
この街のように明るい時間帯から活気のある街なのでしょうか…
それとも…また別の特色があるのでしょうか…
私……気になります!
「あの…クロ」
私は、もじもじとしながら話を切り出した。
「どうした?」
「私他の街にも行ってみたいです!」
「だめだ」
すぐに拒否された。
「どうしてですか!」
「それは命令違反だからだ」
命令違反…
「それは、クロに命令した方がおっしゃったのですか?」
「そうだ」
「その方は誰なのですか?」
どうして、クロに命令した方は私を外に連れ出そうとしたのか…
その命令した方が、誰か分かればなにかのきっかけになるかもしれない。
私が、外に出れなかった理由を知ることが出来るかもしれない。
「それは…」
「紙芝居の時間だよ!みんなおいで!!飴ももらえるよ!」
クロがその人の名前を言う直前、割り込むように声がした。
「紙芝居か…懐かしいな」
クロは、昔に想いを馳せるように静かに目を閉じていた。
確かに、クロに命令された方がいったい誰なのか…気になります。ですが…少なくとも、私が長い間焦がれていた外の世界に連れ出そうとした人です。悪い人ではないと…思います。
それに、その人のことはいつでも聞けますが、紙芝居はいましか見れないはずです!
「クロ!紙芝居…一緒に見ませんか?」
私は、クロに満面の笑顔で手を差し伸べた。
クロは静かにその手を握り返し、紙芝居の場所に向かった。
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「それでは、今から紙芝居を始めます。今回、お話しする物語はどんなお願い事も断れない一人の男の子の物語…」
その人は、カラフルな色で塗られたタイトルを外し一人の男の子が描かれた絵に変えた。
「楽しみですね!クロ!」
「…」
「…クロ?」
クロは、真剣にただじっと紙芝居に集中していた。どこか遠くの記憶を思い出すかのように。
【どんなお願い事も断れない一人の男の子の物語】
どこか遠くの国の物語…どんなお願い事も断れない男の子がいました。
ゴミ拾いや洗濯物、買い出しに犬の世話…どんな些細なお願いも引き受けました。そんなことを続けていると、次第にお願い事も難しいものになっていき、時間のかかるものになっていきました。
一人では、到底こなす事の出来ないお願い事もされるようになりました。
それでも、男の子は引き受けた以上最後までやらなければ、その人のためになれない。その人が幸せになるなら…とどんな大変なお願い事も一つづつこなしていきました。
そんな男の子の頑張りも空しく、お願い事もこなすたび難しいものになりました。
そんなある日のことです。
一人の女の子が男の子の目の前に現れました。
女の子は、どんな願い事も引き受けてしまう彼を見かねて男の子に言いました。
「このままお願い事を聞いていたら、あなたはいずれ壊れちゃうよ!」
それを聞いた男の子は、首を横に振りました。
「それは違うよ。僕は、僕の為にお願い事を引き受けてるんだよ。誰かが幸せになってくれるなら、僕は何でも引き受ける。そして、幸せな人を見て僕も幸せになりたいんだ」
女の子は、そんな言葉を聞いて悲しくなりました。
『それは、決して男の子の為にはならないと分かってしまったから』
そして、女の子は言いました。
「お願い事を聞いて、相手が幸せになったらあなたも幸せになるのなら、私もあなたにお願い事をしてもいいかな?」
男の子は、笑顔になりました。
「僕にできることは、お願い事を聞くぐらいだけど、それで君を幸せにできるなら僕はなんだってやるよ!」
その言葉を聞き、女の子は嬉しく頷き言葉を続けました。
「私のお願いは、あなたに無理をしてほしくない…ただそれだけよ。それさえ、叶えば私とーっても幸せ!」
それを聞いた男の子は、そのお願い事を引き受けました。
それからは、無理なお願い事は引き受けず無理のないお願い事だけを引き受けました。
次第にお願い事も男の子の無理のないようなものになっていきました。
その町に住む人々は、いつも元気にお願い事を聞いてくれる男の子のおかげで笑いの絶えない活気に満ち溢れました。
そんな幸せそうに笑う人たちを見て男の子は、とても楽しそうに笑うようになりました。
女の子は、いつも笑顔でいる男の子を見てとても幸せな気持ちになりましたとさ…めでたしめでたし…
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「よかったですね!紙芝居!結末が幸せで私嬉しいです。クロは、紙芝居どうでしたか?」
クロは、しばらく黙ったまま俯いていたが少しだけ顔をあげて言った。
「今日は、楽しかったか?」
「はい!とっても!」
私は、すぐにその問いに答えた。
「今日の思い出も全部私の宝物です。私、感謝してるんです。クロに!私を連れ出してくれたのは、命令だったけれど、それでも私をこんなに幸せな気持ちにしてくれたのは紛れもなくクロなんです。だから、私もっとクロとたくさんのものを見て、聞いて、知りたい!私の見てる世界がたくさんの色で満ち溢れる…。そんな世界を私……クロと一緒に見たいです!」
クロは、一瞬目を大きく広げたがすぐに顔を俯けて言った。
「見に行こうな…一緒に」
「はい!」
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部屋まで届けられた後、私は部屋で日記を書くことにした。
私が、私自身の思い出を忘れてしまわぬように。私の宝物として残るように。
私は、静かに窓の外を眺め今日のクロとの思い出を振り返って、静かにほほ笑んだ。
ふぅ~なんかすがすがしい気持ちです。何となくですよ?何となくです。