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白痴の黒  作者: 忌神外
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50話 女神との決別2

 日は昇り、私とエストリーは今回も二人きりで朝食を取る。ふと思うが、フィオナさんはどうしてるんだろうな? 昨日のこともあったし、大丈夫なんだろうか? 割とこういう部分がああなる原因の一つなのではないだろうか。 しかし、付きっ切りという訳にもいかないしな。ままならない。


「ソトガミ、昨日はよく眠れて?」


「まあ、一応は。訳あって、寝るのは少しだけ遅くなりましたが」


「そう、私は早く寝たわ。そして、夢も見たわ。内容はそうね。待ち合わせをしたのにも関わらず、いつまで経っても待ち合わせ相手が現れない夢だったわ。貴方はどうだったかしら?」


 怒ってらっしゃる。エストリーの様子は普段と変わらないが、怒ってらっしゃる。まあ、私が悪い。向こうからしてみれば、普通にすっぽかされたのだから、不服があるに決まっている。そして、やはり、エストリーはあの夢に、あの空間に囚われてしまったのだ。


「私はまあ、何というか、待ち合わせ先に向かおうとしたら、怖い人に絡まれる夢を見てしまったもので、その途中で目覚めてしまいました」


 しかし、どうしたものか。私は呼び出された場合を除き、あの夢に行くか行かないか、選ぶことができるようだが、エストリーには、そんなものは存在しないのかもしれない。であれば、私もあそこには行くしかないだろう。


「……そう、なら、いいわ」


 フードの男なら、そこら辺、何とかできたりしないだろうか? だが、それに対して、何を要求されるかわかったもんじゃないし、また、女神側でないという確証が持てていない以上、迂闊に頼るのも避けたい。フィオナ擬きも同様だ。というか、あいつは役に立つのか?特に女神を前にして、逃げた前科がある以上、信頼できない。


「すみませんね」


「何故、私に謝るのかしら?」


 まあ、それでも、女神とエストリーは決定的に折り合いが悪いことが把握した以上、頼れるのはあれとフィオナ擬きか。うーん、まあ、交渉はするか。もしくは最悪、エストリーにしてもらおう。また、女神に補足されている可能性がある訳だしな。


「まあ、それもそうでしたね。ところで、エストリー、本日は何か予定はありますか?」


 そういえば、今日はゲアルさんのところに行くのだが、それはそれとして、エストリーとも話す時間を作らねばならない。とりあえず、エストリーはとにかく、最優先で確保しなければ。


「貴方についていくわ」


「はい?」


「ゲアル殿の工房に行くのでしょう? なら、私も行くわ。あの書置きを残したのは私だもの」


 確かにそうだった。ああ、良かった。とりあえず、ある程度、盗み聞きを恐れず、二人で会話する時間は作れそうだ。


「ああ、わかりました。ただ、お願いがあります」


「お願い? 貴方、今度は何をさせる気?」


「ああ、いや、そんなに大したことではないのですが、とりあえずは来るのはエストリーだけでお願いします。誰も連れて来ないでください」


「……はぁ、また、何かあるわね? 言っておくのだけど、星ならもう見飽きたわよ?」


 ほ、ああ、そういうことか。まあ、それに関しては同意見だ。でも、真っ暗な夜空はそれはそれで不吉だ。だから、別の例えを模索してみようか?


「そうですか。でも、一生に一度あるかないかの星なら見てみたくないですか?」


 例えば、何だ?


「貴方、今度は一体、……まったく仕方がないわね、わかったわよ。元々、誰かを連れてくるつもりもなかったのだけれど。ヴァルスフィア側の付き添いは付かないようにするわ。それでいいのでしょう?」


「すみませんね、ありがとうございます。ところで、話は変わりますが、エストリー、少し疑問に思ったのですが、エストリーが普段、ヴァルスフィアで食べる食事って、例えば、朝食も毎回、こんな感じですか?」


 うーん、何だろうな?


「流石にもう少し質素よ。これはアルセド殿によるもてなしの一つと考えるのが妥当ね」


「そうですか。割合で言うと、どの程度ですか?」


 雨とかか? 問題が降ってくる。晴れている方が心地良い。大して、ひねりはないが、……って、こんなんどうでもいいな。


「7割ぐらいね。貴方のことだから、純粋な疑問なのでしょうね。だから、見逃してあげるけれど、普通、そういうことは聞かないものよ」


「それはまあ、確かにそうですね。すみません」


「別に、謝る必要はないわ。今に始まったことじゃないもの。でも、勘違いされたくないのなら、時と場所、そして、相手は考える事ね。例えば、貴方と私が出会った時のことは覚えていて?」


「え? まあ、はい、そりゃ、覚えていますよ」


 エストリーと出会った時のことなら、正直、やらかしまくっていて、どれのことを言われるのか、想像もつかない。というか、エストリーとはまだ出会ったばかりなのに、こんな濃い時間を過ごすことになるとは……。


「あれなんて、一番、最悪だと思うわ。ヴァルスフィア領主である父と次期領主である私に対して、貴方はヴァルスフィアの家臣達がいる前で、ヴァルスフィアの言葉で、まるで、ヴァルスフィアなんて、取るに足らない国だと、思われる言動をしたのだから」


 自分が思っていた以上にとんでもないことをしでかしていたのに気づかされる。あれから、ドタバタし過ぎていて、そこまで思い返す余裕などなかったのだが、改めて言われるとそうだ。これ、戦国時代とかなら、打ち首とかそういったことになってそうだしな。


「……確かにそれは本当にすみませんでした。そういう意図はなかったのですが」


 とりあえず、まずい。まずはそれについて、エストリーの誤解を早急に解かねばならない。でなければ、エストリー確保の道が閉ざされてしまう。


「知っているわよ。でも、その時は私も貴方の事情なんて知らなかったし、ただ、父や国を侮辱されたのだと思ったわ。ソトガミ、フィオナに感謝するのね? 彼女がいなかったら、私、貴方を切り捨てていたもの。……本当に」


 さりげなく、怖いことを言う。だが、まあ、それに関しては仰る通りのことをしているので、切り捨てられても文句は言えない、切り捨てられたくはないが。ある意味で戦国の人なのだ、エストリーも。


「……それに関しては今ここで、改めて、謝罪させてください」


「必要ないわ。もう、貴方の事情は知り得ているのだから」


「いえ、それでも、失礼なことをしました。大変申し訳ありませんでした」


 立ち上がり、エストリーに頭を下げる。


「早く頭をあげなさい。見られたら、どう説明するつもりなのかしら?」


「まあ、確かにそれはそう、ですね」


「今はもう、気にしていないわ。だから、座りなさい。1人立っているのも不自然よ」


「あはは、確かにそうですね。でも、まあ、実際、立ちながら食べるのも嫌いなわけではないですが」


「そう、なら、夜は立ちながら食べてもいいわ?」


「いや、まあ、座って食べる方が楽だと思いますよ」


「私もそう思うわ。……座らないのかしら?」


「ああ、はい」


 着席し、再び、食べ始める。しかし、飯がある程度美味しいというのは救いだ。本当に。これで毎日、絶世の味なんて出されていたら、食事で精神が変調しかねない。だから、ある意味で、いや、普通に幸運だったな。作ってくれた人に感謝しかない。




「とりあえず、待ち合わせはまた、あそこでいいですか?」


「ええ」


「じゃあ、はい。それで」


 朝食を取り終え、自室に戻る。とりあえず、ゲアルさんには金銭を渡すか、働こう。可能であれば、働きたい。今は少しでも多くゲヘナに繋がりを作っておきたい。とりあえず、身軽で汚れてもいいようにしとくか。後は何だろうな。ああ、夜についてもだ。一体、誰と会わされるのやら、話しやすい人であればいいんだが。まあ、とりあえず、パパっと、準備して向かうか。


 そんなことを思いながら、自室に戻ると、部屋の前に見慣れた人物がいることに気づく。


 フィオナさんだ。どうも、私を待っているようだ。


「……!ソトガミさん!」


 少女もこちらに気が付いたらしく、駆け寄ってきた。


「フィオナ、おはようございます。あの、どうしました? 何か、用事ですか?」


「おはようございます。……えと、あのっ、ソトガミさ、ソトガミ様、ご機嫌はいかがでいらっしゃいますか!?」


 様!? いらっしゃいますか!? 何だ、急に? 私の聞き取り機能がおかしくなったとでもいうのか?


「フィオナ……? あ、あの、どうしたんですか、急に。私の勘違いでなければ、急に畏まったように思えるのですが、私、何かしました?」


「い、いえ、違うんです。これは、その、ソ、ソトガミさんがゲヘナの国で偉い人だから……、こうしなきゃ駄目、ですよね……? 私、ソトガミさんの側にいたいんです! だから、その、えと、ソトガミさんにお願いがあって来ました」


 お願い? 一体何を頼まれるのだろうか? 不安などすでに色々が、またしても、急に不安要素が出てきた。


「お願いとは?」


 頼む。とりあえずは一緒に出掛けたい以外であってくれ。もし、それを言われても、今は断るしかないのだ。しかし、もし、それで昨日のようなことになった場合、注目を集め、今日の計画が頓挫してしまう可能性もあるのだ。いや、だからこそ、もし言われてもうまい事、躱す言い訳を考えねばなるまい。


「私をソトガミさんの召使にしてください!」


「……はい?」


「私をソトガミさんの召使にしてください!」


 召使? 誰の? 私の? ……何故? 一緒に居たいから? ということなのか? 何故? 一緒に居たいからか? うん、二回目だな。


「あの、急にどうしたんですか? 理由をお聞かせいただいても?」


「は、はい!あの、私、ソトガミさんと一緒に居たいんです!」


「はい」


「でも、その、ソトガミさんは、ゲヘナの偉い人で」


「まあ、はい」


 本心では否定したいが。


「だから、私なんかが、ソトガミさんの側にいるにはもうこれしかないんです!」


「なるほど」


「だから、お願いです! 私を召使にしてください! 私、何でもやります! ソトガミさんのためなら、どんな仕事でもします! だから、私を側に置いていただけませんか……?」


「…………」


 ……どうしよう。めっちゃ頭下げてる。


 というか、そもそも、これ、私の一存で決められるものなのか?


 ああ、でも、アルセドさん達にはフィオナさんも条件に含めてるしなぁ。そういえば、そうだ。そう考えると、別に召使になんてならなくても、生活は共にする。まあ、ゲヘナに残っている場合は、の話だが。


「お願いします! 何でもします! だから、お願いします!」


 おお! これはまずい。とりあえず、落ち着かせなければ。


「フィオナ、とりあえずは大丈夫ですから、一旦、落ち着きましょう。声、抑えていただけると」


 彼女の肩を抑え、宥める。


「す、すみません……。あの、ありがとうございますっ。わたし、これから、召使として、精一杯頑張りますっ!」


「ええっと、フィオナ、これはお伝えしていなかったことなのですが、実のところ、別に召使にならなくても、フィオナとは一緒に居れるようにアルセドさんにはお願いしていてですね、すでに了承も取っています。 なので、……ああ、ちょっと待ってください。誤解を生む発言でしたね。ええっと、一緒に居るというのはですね、その、同じ屋敷に住むということです。アルセドさんに屋敷を用意してもらえるみたいで、ですね、そこで暫定、一緒に生活するということになっていまして。その、事情があって、事前に相談とかは出来なかったのですが、フィオナは大丈夫ですか? 勝手に共同生活を決めてしまいましたが、別が良ければ今からでも、っ!? フィオナ?」


 突如、少女が抱き着いてきた。


「ソトガミさん、ありがとうございます! 私、嬉しいです……!」


「改めて確認しますが、本当にいいんですか? 一応、私は男性ですが……」


「はい! ソトガミさん、ありがとうございます!」


「そう、ですか。ああ、はい、そうですか。……ああ、ただ、ちゃんと、ベットとかはそれぞれの個室を用意するようにいうので……、あの、フィオナ?」


「…………」


 急に強く抱きしめてきたな。……多分、そういうことなんだろう。だが、流石にそれはまずい。というより、私もプライベートな空間は欲しい。その方が色々と都合もいいしな。


「ええっと、一緒の空間と言うか、部屋で寝たいということですか?」


 無言だが、少女はこくんと頷いた。握られている服がよりギュっとしたのを感じる。


「フィオナ、信頼してくれる気持ちは嬉しいのですが、私も立場上、中々そういうのは難しくてですね。だから、とりあえずはそれに関しては、寝室は別にしましょう。信頼してくれるのは嬉しいですが、それはそれとして、アルセドさんには一緒に居れるよう改めて、確認を取っておくので」


「……わかり、ました」


 僅かにしょんぼりした声が返ってきた。


「まあ、とりあえず、そういうことなので、召使にはならなくて大丈夫ですよ」


「そうですか……。でも、ソトガミさんのお世話はさせてくれませんか?」


「お世話ですか?」


「ソトガミさんがお嫌じゃなければ、料理や洗濯、お掃除とか、してさしあげたいなって」


「それは嬉しいですが、まあ、とりあえず、もし、共同生活した場合はその時に色々決めましょう。暫定は共通スペースの掃除とかは当番制などでいいのかなとは思っていますが。とりあえず、始まってから決めましょう。フィオナはそれでいいですか?」


「わかりました」


「ありがとうございます。とりあえず、その件に関してはそういうことでお願いします。他は大丈夫そうですか?」


「……あの、ソトガミさん、本日のご予定はいかがですか?」


 しまった。余計な一言を言うのではなかった。うっかり、失念して、聞いてしまった。今までの傾向から、こうなることなど、容易に考えられたというのに。だが、仕方ない。心苦しいが、今日は断るしかない。


「今日は実のところ、1日用事があってですね。アルセドさんに頼まれて、私とエストリーだけで、ゲアルさんのところに行くことになってですね……」


「そう、ですか。……それなら!夜は、いかがですか……?」


「すみません、夜も、ゲヘナの人で会わなければいけない人がいるみたいでして、空いていないんです」


「そうですか……」


「すみません」


「い、いえ、こちらこそ、私こそ、わがままを言ってしまって、すみませんでした」


「いえいえ。また今度どこかで時間は必ず作りますから、その時に出かけましょう」


「はい、楽しみにして、いますね?ソトガミさん……」


「はい。……もう少し話したくはあるのですが、そろそろ準備して、出なければいけないので、今日はここで」


「わかりました」


 少女が離れた。


「ソトガミさん、本当にありがとうございます。お仕事頑張ってくださいね」


 そう言うと、少女はぺこりと頭を下げた。


「はい、また、別の時に会いましょう。とりあえず、失礼しますね」


 私も軽い会釈をし、自室に入ったのだった。


読んでいただき、ありがとうございます。


誤字などがございましたら、教えていただけると助かります。


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