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白痴の黒  作者: 忌神外
49/53

49話 女神との決別

「…………っ!はぁ……はぁ……」


 目覚めたようだ。……女神。


「…………」


 ああ、くそ、結局、エストリーが来ているか、確認出来なかった。


 ……仕方ない、後で聞くとしよう。そして、あの場所を密会場所にするのはやめだ。アルセドさん達に聞かれるより、女神に聞かれた時のリスクの方が圧倒的に大きい。


 外はまだ、暗い。……だが、二度寝する気にもなれない。とりあえず、外に出よう。夜風に当たりたい。


 扉を開ける。静寂の中、私は開いた扉の先が見覚えのある景色であったことに何故か、安堵した。


 ここには女神はいない。それが、私にとって、人類にとって、まだ唯一の希望だ。私はあれを滅ぼさなければならない。そのためなら、何だってする。あれは存在してはならない。


 ああ、体は寝てたというのに疲れは全く取れていない。それどころか、寝る前よりも疲れを感じる。だが、眠くはない。新鮮な空気が吸いたい。もっと、新鮮な、外の空気を。私は誘われるように城の屋上部へと、足を運んだ。


 こんな時間でも、夜間の警備はしっかりと居て、都度、軽い挨拶をしつつ、目的地に向かっていく。


「…………」


 あそこに見えるのはベンチか?


 ……とりあえず、行こう。それにしても、先ほどまで、何人かすれ違ったり、挨拶をしたりしたが、変に思われていないだろうか?大丈夫だっただろうか?面倒なことにさえ発展しなければそれでいいのだが。


 近づくにつれて、それはやはり座るためのものなのだと、わかる。私はおもむろに腰をおろし、空を見つめる。


「…………」


 深呼吸をすると、僅かにひんやりとした空気が肺を駆け巡っていくのを感じる。ああ、これだ、今の私はこれを求めていたのだ。この空気は落ち着く。空は綺麗だ。星々が瞬き、私はそれをただ、眺めている。


 エストリーはまだ、夢の中だろうか? まだ、私を待っているだろうか?


 ……本当は早く行かなければならない。だが、今戻っても、私はまだ、女神と離れられないだろう。血、肉、すべて余すところなく、私と女神は……、駄目だな。今の私にはあれらの行為はきつい、フィオナ擬きも改めて考えると全く理解できない。何故、あれは嬉しそうだったのだろう? 私も私で中途半端に耐性が出来てしまった辺り、色々と正気じゃなくなっているのかもしれない。定期的に何かしら、メンタルのケアは必要かもしれない。


「…………」


 私の精神力は結局のところ、人並みなのだ。あれが、毎日のように続いたら、流石にきつい。どこかで、普通の夢を見たい。もしくはそのまま、目覚めたい。ああ、夢とは案外、救いだったのだろう。おかしなものでも悪夢でないのなら、それなりに役立つ。


「駄目だな、私は」


 こんなことでは救えないというのに。今の私に、あの女神に抵抗できる術はない。精神面で悪態をつくことは出来ても、力では何一つ抵抗出来なかった。私は女神に対しての自衛手段を持ち得ていないのだ。


 右ひじを太ももに乗せ、頭を抱え、地を見つめる。


 このままではエストリーか、私、どちらかが、精神に変調をきたすのは間違いない。そうなる前に、何か、対抗手段を探さなければなるまい。私は、あの女神を滅ぼさなければならない。


 だが、どうしたらいい? 女神の言う通り、白髪の人類を貪り、力をつけ、最後の最後で女神を裏切ればいいのか?


 だが、もし、白髪の人類全員を貪って、女神を滅ぼすことが不可能だった場合、どうする? そうだ、安直に貪る手段を取るのは良くない。情報を集めよう。人を集おう。その上で方法を模索するのだ。多くが生き残る道を、女神を滅ぼせる道を、そして、人類に危害が及ばない道を。


 ……今までの全てが私の錯覚、妄言であったのなら、それでいい。だが、そうでないのならば、私は自身の保身など考えている場合ではない。私は、私には、真の協力者が必要だ。全ての情報と目的を共有し、協力する人々が必要だ。アルセドさん、あの人は信頼足る人物だろうか? 託せる者だろうか? ……見極めなければならない、託せる者を。最初の一歩を、踏み間違う訳にはいかないのだ。そのためには必要に応じて、ここを去る準備をしなければならない。


 考えるんだ、見極めるんだ。


 ……まずはエストリーだろう。彼女に思っていることを全て話そう。彼女が必要だ。私の核心に最も迫っている彼女、まずは彼女を確実にこちらに引き入れなければならない。


 そうだ、私にはもう、やるしかないのだ。私には、彼らには救われる道はまだ残っている。そうだ、そうでなくてはならない。私は、彼らは切り開くことができる。私は決めた。どうなろうと、どのような未来が待ち受けていようと、私は未来に身を捧げる。


私は女神と決別する。

読んでいただき、ありがとうございます。


誤字などがございましたら、教えていただけると助かります。


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