11話 旅立ちの後に
「はぁ……はぁ……何なのよぉ!?何で、わたくしがこんなところにぃ!?」
あり得ないわ!だって、わたくし、黒いゴミを片付けただけ……いつものように殺してあげただけ!
「ここはどこよぉ!?何で、一面……うっ、おええええっ!」
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……!いきなり何ですの!?急いでここから離れませんと……臭いだけで気がおかしくなりそうですわ……!
~バウムシュタム村にて
報告は四日前のこと、バウムシュタム村に向かっていた監察官、ギャビー・サイデルが予定より3日早く帰還。村が壊滅状態であるとの報告をしたのだ。これを受け、直ちに調査隊及び聖人一名の派遣が決定された。そして、私は聖人として、調査隊の指揮を任されたのだった。
到着したけど、臭いが酷い。まだ慣れていないのか何人か吐き出している。現場は報告通りの壊滅状態。あちこち死体だらけだ。
「一先ず、村人の生存状況の把握を。それと、村人以外の死体もあるようですね」
「白の装い……恐らくは件の者達かと」
……またか。あの国の態度にもうんざりする。いつまで「御伽噺」に縛られているというのか。そんなことを理由に村を襲撃する暇があるなら、領地で畑仕事でもしてなさいな。
「報告します、生存者は確認できず。また、シスターであるテレサ・シュルツと推測できる遺体も見つかりました」
遅すぎた。シスターも村人も少しでも息があれば、治せた。でも死んでしまっていてはどうしようもないのだ。私に出来るのは彼らに祈ることだけ。なんと無力なのだろう。
だけど、今の私は調査隊を任されている。弱気な態度を見せるわけにはいかない。仮にも聖人なのだから。
「そうですか。彼女と村人は後で埋葬しましょう」
村を見て回っているが、妙だ、村人はともかく、あの狂信者たちも多く死んでいる。ここの村人にその様な力があったのだろうか?
「ここは……」
「この村の長の家の様です」
中に入ると、おじいさん一人と狂人二人が死んでいる……ん?
「この女性……どこかおかしくないですか」
私は傍にいた一人に話しかける。
「はぁ……?確かによく見ると目立った傷がありませんね」
「いえ、確かにそうなのですが、そうではなく…」
そうではないのだ。この女性を見ていると何か、違和感とも言うのだろうか。今、目の前にあるものにどこか異物を見ている様な感覚を覚えてしまう。傷はない、でも何かが欠けているような……。
「エルシュタ様?」
「ああ、いえ、何でもないの。行きましょう」
目を離すと、異物のような感覚も徐々に薄れていった。きっとこの臭いで、滅入って変なことを考えてしまったのだろう。しっかりしなければ。




