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カルナード王太子殿下がわたくしの悪口を…

エレシア・スタンシード公爵令嬢は王国で最も権威のある公爵家の令嬢である。

16歳。流れるような金髪にすみれ色の瞳のこの美しき令嬢は、王家のカルナード王太子の妃になる事が生まれた時から決められており、王太子妃、先行きの王妃にふさわしい教養、仕草、ダンス等、こなせるよう厳しい教育を公爵家内で受け、遊ぶ暇もない生活を送っていた。

それに不満はなく、エレシア自身も当然の事として受け入れて来たのだが。

カルナード王太子とエレシア自身の交流は婚約者の割には、恐ろしい位に少なかった。今までは年に一度、新年の挨拶でお見掛けする位しか、会う機会が無かった王太子である。


本当にカルナード王太子とわたくしは結婚するのかしら?


スタンシード公爵や公爵夫人である両親に不安に思って聞いてみれば、


スタンシード公爵は、


「王家と我が家で取り決められている事だ。お前はそれを信じて、自分を磨く事、王妃教育に励むがいい。」


公爵夫人も、


「そうよ。エレシア。貴方が18歳になって王立学園を卒業したら、婚姻する事が決まっているのよ。学園に入れば、王太子殿下と接する機会も増えるでしょう。そこで、親しくなればいいと思うわ。」


確かに16歳から通い始める王立学園で、同い年のカルナード王太子を見かける機会が増えた。

黒髪碧眼のカルナード王太子は男らしく、背も高く整った顔立ちの美男で、

廊下で歩くカルナード王太子を見かけるたびに、


わたくしは将来、この方と婚姻し、王妃になるのだわ。


密かに胸を高鳴らせてカルナード王太子を見つめるのだが、

カルナード王太子は取り巻きの貴族令息達と、行動し、エレシアの事など眼中にない態度で。


令嬢達もエリシアに向かって、


「カルナード王太子殿下、本当に素敵ですわね。」

「背も高くて、勉学も出来、剣技の腕も一流と聞くわ。」

「エレシア様。カルナード王太子殿下とご結婚出来るのですから、羨ましいですわ。」


エレシアは返答に困ってしまう。

しかし、ここは公爵令嬢、顔色も変えず扇を手に微笑みを浮かべて。


「そうですわね。卒業と同時に結婚が決まっているものですから。今から、楽しみですわ。」


とは言ったものの、エレシアは不安であった。


何故?何故、カルナード王太子殿下は、自分の事が眼中にない態度を取るの?

将来の王妃である、貴方の伴侶になるわたくしの事、興味がないと言うの?


こちらから話しかける事は出来ない。

エレシアの苛立ちは積もるばかりである。


そんなとある日、中庭でカルナード王太子が、将来の側近候補達である騎士団長令息と、宰相令息達と話をしているのを、木の影から聞いてしまった。


「政略的に決められた相手と結婚はしてやるが、せめて傍に置くのは愛する女性にしたいものだ。」


カルナード王太子が、そう言えば、騎士団長令息が同意して、


「確かに。スタンシード公爵令嬢は美しいですが、堅苦しいですからねぇ。」


「まったく、顔を見るのも嫌な女だ。まぁ、王妃としての教育は優秀らしいから、せいぜい利用してやるさ。」


宰相令息も頷いて。


「解ります解ります。やっかいな事は正妻に任せて、側室とのんびり愛を育むって所ですかね。白い結婚って奴ですね。」


カルナード王太子は頷いて。


「まさにそれだ。学園では真に愛する女性を探さないとな。あんな堅苦しい女ではなく、

癒してくれる女なら少々頭が悪くても構わない。」


エレシアは傷ついた。


堅苦しい女って、そんな風に思われていたなんて。


幼い時から王妃教育を頑張って、公爵令嬢として、品のある仕草、言葉遣い、教養、行動、全てにおいて気を配ってきた結果が、堅苦しい女だとは…


そこで、エレシアは思った。

本当ならば、ここで涙を流して、悲しむのが普通の令嬢であろう。


だが、エレシアはスタンシード公爵令嬢。

スタンシード公爵家の名にかけて、強く思った。


許せないと。


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