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079話 西方進路その5

「もう何百年前だったか、二つの《人界》を統べる大神が契りを交わした。二柱それぞれの財産は二柱両方の財産となり、よって二つの《人界》も共同統治されることとなる。《人界》は混乱したが、大神の決定は絶対だ。だから、そうして二つの《人界》は一つとなっている」


「側ってのは、もう一柱の《人界》の小神ってことか?」


「ああ。私は大神ヤヌルヴィスの《人界》の小神であり、もう一柱───大神ラーミラトリーの《人界》の小神については知り得ない。興味もなかったしな」


「ならボクが大神ラーミラトリーの小神である可能性はまだあるってことだね」


「ああ」


 バスティがほら見ろと言わんばかりに鼻息荒く胸を張る。


「この《人界》が複数の異界と《経》を持つのも、《神々の婚姻(それ)》が原因だったよね」


「その通りだ」


 二つの、《九界》的に隣り合った《人界》が統合された結果、俺たちの暮らす《人界》には複数の世界が繋がるようになった。《魔界》二つ、《龍界》、そして《枯界》。元々はどれか二つだったはずだが、今や四つだ。この《人界》は交叉した街道の如き重要地点である。


 ちなみに、界学の研究によると《九界》の内訳はこんな感じだ。《人界》ヤヌルヴィス、《人界》ラーミラトリー、《人界》ジルモレティ。《魔界》アディケード、第二《魔界》、《龍界》クラインクィンクス、《枯界》、《妖圏》、そして不明世界。


 《人界》には複数の小神が存在するが、他はそうとは限らない。《妖圏》は小神の代わりに種族ごとの妖精王を擁し、《魔界》は魔王と呼ばれる超越者が統べる。《龍界》には小神に相応する存在はいない、とされている。《真龍》たちが喰ったのではないかとまことしやかに噂されているらしいが、一度相対した身からするとあまり笑えない冗談だ。


 そして、《枯界》ともう一つの世界、俗に不明世界と呼称される地については、何も分かっていない。


 バスティが《枯界》の小神の可能性もあるにはある。シナンシスが語る通り、彼女がただならぬ存在であるのは確実なのだ。カリエの神誓を赦したことといい、縁を手繰って人の祈り、強い感情を認知できる性質といい、何もない(・・・・)ということはない。ただそれが分からないだけ。


 結論を急ぐ必要はない。俺はのんびりと馬車を走らせる。


 カリークシラを発って、俺たちは今、西方の大都市モルドリィに向かっている。


「……それにしても、不思議なものだ。小神たる私に、それと知りながらこうも気安く接する男とは。そんな者はニーオくらいのものだと思っていたが」


 ぽつりと呟いた言葉に興味がそそられる。俺が知るニーオとは《信業遣い》でなかったころのニーオであり、《信業遣い》としての面はさっぱりだから。彼女がどう《信業》を得て、この小神シナンシスとどう付き合っているのか、どんな顔を見せているのか、知りたくないと言えば嘘になる。


「ニーオとキミは、どんなフウに出会ったんだい? ユーヴィーとボクよりも運命的だったのかな」


 張り合ってるんだか何だか知らないが、バスティが前かがみににじり寄って問いかける。シナンシスはそれに苦笑(だと思う。彼の義体には表情がないから仕草でしか推察できない)して、


「……そう面白い話でもないぞ」


「次の街まで随分ある。そういうのも、旅の醍醐味ってやつだろう」


「そうだな。どうだったか───」


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