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072話 龍戮戦線その8

「お前の負けだよ、《真龍》」


 《点滅》を過信し、《光背》と魔剣アルルイヤを軽視し、空を舞う《真龍》が振り払うために地に堕ちた。俺は踏み込みながら剣を支えてさえいれば、あとは衝撃が傷口を深く大きくしてくれる。もちろん、それでさえあらゆる骨という骨が砕け散りそうな堪え難さだったが。


 ざっくりと背を抉られた《真龍》が、再び空を舞うには猶予が必要だ。そして、俺は時間をくれてやるつもりはない。


 《真龍》が《点滅》する。俺は《光背》をぶつけてそれを相殺する。振りかぶった魔剣が背部を断ち、《真龍》を《人界》で活動させる要───核が露出した。これを破壊すればすべて終わりだ。


 龍の視線が俺に注がれる。その瞳は憎悪に濁っている。


『不遜である、この《瞬く星》のアセアリオを斬るというのかッ!』


「おいおい、今更名乗られても遅いぜ。こっちはずっと《真龍》で通してんだ」


 龍界でその名前がどれほどのものかは知らないが、生憎とこっちは《人界》だ。ヒトの家に土足で上がり込んできて乱暴狼藉を働けば、誰であれ罰せられて当然だろう。


 魔剣を進める。それを感じ取ったのか、《真龍》の瞳に怯えの色が混じった。


『ま、待て、止めろ。そうだ、何か望みはないか。富や名声、力、何だって与えてやろう! 我と契約しろ、さすればお前は《人界》の全てを得られるぞ! どうだッ!』


「へえ?」


 あんまりにもあんまりに見事な命乞いに、剣は引っ込めないがそのよく回る舌がどこまでペラペラと喋るのか、興味がわいた。


「契約すれば全てを、ねえ。ホントにそんなことが出来るのか?」


『ああ、出来る、出来るとも! 我を信じよ!』


 おいおい。


 どこまで喋るのかと思っていた矢先に、その言葉(・・・・)は卑怯だろう。俺は吹き出してしまう。まさか、それ(・・)を俺に求めるのか。


「信じればいいんだな?」


『ああ!』


「───悪いな。俺は神すら信じられない異端でね。そんな俺が、どうしてお前の言うことを信じられるものかよッ───!」


 思いっきり魔剣アルルイヤを振り下ろす。キン、と澄んだ音を立てて核が両断された瞬間だけは、世界が止まったかのように感じた。直後、物理的破壊力すら伴っていそうな《顕雷》が核から飽和し、鼓膜ではなく精神に断末魔が響き渡る。


『おのれッよくも我が義体を───百年を───《人界(エモノ)》を───よくも!』


 核は完全に破壊されている。が、《真龍》も《信業遣い》であるというなら念には念を入れろ。突き立ててねじ込むと、アルルイヤが迸る《顕雷》を啜り始めた(・・・・・)


 ───やはり。コイツは、この魔剣は、《信業》を喰らうものだ。


 俺の《光背》を呑んで闇に染めたのも、炎の檻に染み出して両断したのも、《信業》に反応したからだ。ならば《真龍》が何をしようと、この核の破壊は覆らない!


「諦めろ、《真龍》! 《龍界》に帰るんだな!」


『我はただでは帰らん! 我のものにならない《人界》など、魔族のカスどもに貪り尽くされればよい!』


「往生際の悪いッ、野郎だ……!」


 全力で核を破壊している俺とアルルイヤを止められないと悟ったか、《真龍》は《信業》を別の作業に使い始めた。アルルイヤ同様に光を反射しない黒そのものの現象が発生する。俺はそれを、今までに二度見たことがある、これは───


 《()()

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