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064話 冥窟攻落その4

 カリエはそのとき、孤児院で昼食の後片づけをしているところだった。


 孤児たちの使った皿を洗面台につけて、さて洗うぞと腕まくりをしたところで、彼方からの地響きに気づいた。最初は遠く、やがて近く。……実際には、震源は移動などせずただ震度のみが上がっていただけなのだが、ここは地震のまれなディゴール。生まれも育ちもこの街の彼女に、推し量れというのは無茶な話だろう。


 揺れは止まらず、これは何かまずいぞと感じて作業の手を止める。外に出ると、通りには他にも危機感を抱いて様子を見に来た住民たちが増えつつあった。


 ……皆、なにか大きな問題の予感があった。


 ユヴォーシュがハバス・ラズの魔剣を受け止めた瞬間、遠方───《冥窟》の方角から、突如として閃光が奔った。空は晴れ渡っているとは言い難いが、決してこれほどの雷鳴が聞こえてくるような空模様ではなかった。それもそのはず、紫電は地から薄曇りの空へ向(・・・・・・・・・・)けて(・・)伸びている。


 《顕雷》が、雷雨もかくやとばかりに幾筋も、走ったのだ。


 それは止まるところを知らず、バリバリと引き裂くような轟音を立て続ける。


 地が歪み、《冥窟》が何かを孕み、《顕雷》の奔流の中からその巨体がゆっくりと首をもたげる。


 瞳は真朱、秘色色ひそくいろの鱗で総身を覆われた、翼あるもの。


 個にして全を体現する、一個の世界そのもの。


 伝説に生きる、強欲の象徴。


 誅戮スレイすれば必ず、その名をあまねく《人界》に語り継がれる、勇者の障害。


 ───《真龍ドラゴン》が、全てを喰らい尽くさんと咆哮した。

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