表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/517

051話 盟神探剣その4

 宿の自室に戻って、さて。


 二人で交互に矯めつ眇めつする。ラベルには《虚像の魔導書》とある。特定範囲の空間内を記録し、あとで虚像として再生できるというものだ。音声も録音できるため、このような連絡手段として、あるいは確認として用いられるのが主な利用手段となる。精度を高めれば虚像を実像に見せかけて誤認させるトラップとしても使えるらしいが、そこまでできる《魔導書》は幾らするのか見当もつかない。……ちなみに、初対面のムールギャゼットがこれ(・・)を使ってコンタクトを取ってきたことは考えにくい。《虚像の魔導書》はあくまで、あらかじめ撮っておいて再生するだけのもので双方向のコミュニケーション用ではない。俺の言動に対応していた以上、あれはリアルタイムで変化するムールギャゼットの幻影だった。


 さておき。


「回りくどいことをしやがる」


 出てきたら今度こそとっ捕まえる予定だったから、あっぱれ裏をかかれた。その怒りもあって、つい荒っぽくいきそうになるが───


「罠ってことはない? 開いたらドカーンとか」


 ラベルなどいくらでも貼りかえられる。《炸裂の魔導書》に《虚像》のラベルを貼り付けて、それと知らずに開いた相手を……。


「……《光背》しとくか」


 俺とバスティに危害を加えるようなら自動的に吹き飛ばせるようにしておいて、ゆっくりと封を切る。


 《光背》の光の中、封緘された魔術が作動。俺の目前に、フードを目深に被った人影が出現する───が、これは虚像だ。うっすらと透けていて、向こう側のベッドに腰かけたバスティが見える。


 虚像のムールギャゼットが喋り出した。


「ご無沙汰しております、ユヴォーシュ様。本日はこのような手段での連絡となり、お手数をおかけします」


「あれ?」


「どしたのユーヴィー」


「この《魔導書》、停止とか逆再生とかないのか」


 こういう《虚像の魔導書》のようなものには、ある程度は映像の操作をするためのインターフェースがあるものなのだがそれが見当たらない。開いたが最後、冒頭からノンストップかつ自動的に再生されるようになってしまっている。


 困惑する俺をよそに、虚像のムールギャゼットはペラペラと喋り続けている。


「貴方様が魔剣をお探しとのことで。お手伝いできるのではないかと思い、声をかけさせていただいた次第でありまして」


 相変わらず鼻につく慇懃無礼。早送りもできないんだから、さっさと本題に入って欲しい。


「あ、あ、いま『早く本題に』と思われましたね。いけませんいけません、それではいけません。私どもがどれだけ貴方様のために骨を折ったのか、ご理解いただけないのはいけません。どうぞ、恩に着ていただかねば」


「ふふっ。だそうだぞ、ユーヴィー?」


 何がおかしいのか、バスティはくすくすと笑っている。話を聞く邪魔なので手を振って黙らせる。


「さて、あまり長広舌で嫌われても困りものです。さっそく本題に」


「やっとか……」


「貴方様がお探しの魔剣について、私は一つの情報を持っております。───ジーブル・メーコピィ。《地妖ドワーフ》の鍛冶師。彼の手元に、一本の魔剣が所蔵されていると言われています。彼をお探しなさい」


「ん? 魔剣を持っているのは分かるのに、居場所は分からないのかい」


 バスティの疑問も尤もで、それは撮ったムールギャゼットも把握していたのだろう。すぐに返してくる。


「彼はディゴール近郊の山、アファラグの中に庵を設けそこで暮らしています。彼は腕のいい鍛冶師ですが、それゆえ作業場所にこだわりめったに街に降りて来ません。貴方様から訪ねるのがよろしいかと」


「山登りか……」


「ボク待ってていい?」


「ダメだ」


 もう出発する前提で俺とバスティが雑談を交わしていたが、ムールギャゼットの言葉は続いている。


「良いですか、彼にはこう伝えるのです。───」


 爆音が夜の街につんざ(・・・・・・・・・・)いた(・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ