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197話 人界生活その2

「話を戻そう。この調子でやっていたら何日かかるか知れたもんじゃない」


「私としては、この屋敷の中でくらい《悪精《普段通り》》の姿でいたいです。要するに、外からそれと分からなければいいのでしょう?」


「とすると敷地に透明な壁を張り巡らせるのがいいか。敷地外から敷地内を見たとき、魔族をそうと看破できなくなるフィルターだ」


「それって硝子みたいな透明な物理的障壁じゃないんだろ?」


「当然。そんな分かりやすい(・・・・・・)壁を立ててたら目立ってしょうがないからね。鳥が庭の樹の枝に止まることは妨げない」


「しつもーん。それって、庭に入ってきたら普通に見えるんだよね?」


「そうなるね」


「それだとマズいんじゃない? 近所付き合いやら来客やら、そういう人たちが来たら一発でバレちゃうでしょ。そういう人たちを庭にも入れないってのはちょっと不自然すぎるし」


「うーん、敷地内でくらいヒウィラが自然体で過ごしやすくしたいしな。こうするのはどうだ」


 俺の提案はこうだ。『屋敷の外から庭を見た』ときに偽装するように、同じものを『庭から屋敷の中を見た』ときも偽装する。歓迎する必要のある来客を招けるように、更に『エントランスや応接間から居住スペースを見た』ときにも同様に偽装すれば、来客が来ているときに寝惚けて起きてきて、その正体が露見するみたいなことは回避できる。


「三層構造か。侵入者感知も、同じ区切りで内部に通知する仕組みにすれば楽かね」


「庭に踏み込んできたら屋敷内に知れ渡るような感じだとありがたいな」


「庭に結界をはるなら、鳥とかそういう動体を検知しないようにしたいよね。そんなのの通知でいちいち起こされても迷惑だし」


「やれやれ、それじゃあどこまでが“内”でどこからが“外”なのか、その決定からだな。こりゃあ大仕事になりそうだ」


「あ、それと。外出用の偽装《遺物》も欲しいです。つければ一発で人族に変装できるアクセサリーの形で。屋敷にはる偽装結界と一致した外見でないと怪しいでしょうから」


 今のヒウィラは自分で自分に偽装を施しているが、今後はカストラスの手による偽装がスタンダードになるからその統一のため、ということだろう。……まあ、それを抜きにしてもいちいち施術するのは面倒だから、という理由の方が比重が大きそうだが。


 そう。彼女は姫君だった(・・・・・)のだ。


 魔王アムラの第三姫。それが彼女の立ち位置だった。それが偽りであり、彼女が魔王の血をひいていないとしても、一通りの身の回りの世話は女中たちに任せきりだったという。頼みの綱の随行女中が《魔界》アディケードに帰った今、諸々を自力でこなさなければならない。


 そういうもんだってのを理解してくれたのは、まあ、大きな前進なんだが。


「ユヴォーシュ。湯あみしたいのだけれど、どうすればいいのか分かりません。手伝いなさい」


「バスティに聞けッそういうのは!」


 ……何だろう、思ってたのと違う。未経験だから想像しかできないけど、これは俗に子育てとかそういうヤツじゃないのか。

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