表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

186/517

186話 悪嫁攫取その7

「わた、私に、どうしろ、と……」


好きにしろ(・・・・・)。そうすべきだ、お前の人生なんだから。これからも続いていくんだから!」


 肩を掴む。弱弱しく身を捩っても離さない。横からムクジュが俺を止めようと、引き剥がそうと力を込めてくる。邪魔するな肝心なところなんだから!


「お前がどうしたいか決めるんだ! ヒウィラ!」


 彼女がずっと気にかかっていた理由が分かった。彼女は少し前までの俺なんだ。どうすればいいか分からなくて、命令どうすべきかに囚われて、一歩踏み出すことに怯えて状況任せにして。だから見過ごせない。あのときの苦しみを俺も知っているから。


 今、大魔王マイゼスはヒウィラを《澱の天道》に喰わせんとしている。それはあの野郎が《天道》にあらゆる因子(・・)を蓄えようとしているからだ。《魔界》アディケードの魔族/カヴラウ王朝の姫/女性/《悪精》/《信業遣い》───そういった諸因子たちをこそ大魔王は欲している。これまで、《魔界》インスラの九大魔王たちも同じようにしてきたし、《魔界》アディケードの他国の姫たちもそうしてきたのを俺は観た(・・・・)。ヒウィラも生贄でしかないのは瞭然で、だからこんな婚姻は成立しないのは言うまでもない。どうするべきかなんて不確かに揺蕩っていて、どうしたいかヒウィラが我儘を言えるきっと最後の機会なんだ。


「───ヒウィラっ! 何だっていい、言え! どうしたいんだ!」


「ッ───」


 瞬間、向き合う俺の目の前でヒウィラの瞳から火花が散った。呆然としていた彼女の中に発生した情動を俺は待つ。彼女はつっかえつっかえ、想いを形にし始めた。


「私、は……」


「私は、ぜんぶっ、全部なくなっちゃえばいい、ってッ」


「ずっとそう思って、でも! そんなの間違ってるって、そんなことすべきじゃないって、我慢してたしてたというのに! 貴方は! 引っ掻き回して、私の想いを掘り起こして!」


「貴方が嫌いです、ユヴォーシュ・ウクルメンシル! 貴方も、魔王アムラも、大魔王マイゼスも、みんな嫌いだッ!」


「大ッ嫌い! 皆いなくなればいいッ!」


「私をいいように使う人! 私を搾取しようとする人! 私をッ、私の根底を掘り起こそうとする人! 皆、全員、吹き飛んでなくなってしまえばいい───」


よっしゃ(・・・・)やってみようぜ(・・・・・・・)


「……は」


 俺の即答に、ヒウィラはぽかんとした。鉄火場のただ中にいることも忘れて、命の危険や魔王に命ぜられた使命も置き去りにして、彼女がただの童女に帰ったみたいに驚いている。その方がいい。しかつめらしくお姫様の役割ロールを演じてお高くとまっているよりも、彼女はもっと素を出していく方がいい。


 ま、俺の勝手な言い分だけどな。思うだけなら自由だ。


「ヒウィラは俺たちをぶっ飛ばしたい、ならそうすりゃいい。それが自由ってもんだろ?」


 どんと自分の胸を拳で叩く。


「勿論俺はそれに抗う。それが俺の自由だからな。やってみろよヒウィラ、受け止めてやっから!」


 ヒウィラの表情に、怒りの色が滲みだしてくる。あっという間に頭に血が昇っても、《悪精》の蒼い肌は人族みたいに赤くはならないんだな。初めて知ったよ。


 いい顔すんじゃねえか、お姫サマ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ