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173話 髑髏城下その2

 滞在期間は数日の予定となった。


 ヒウィラの婚儀がすぐに執り行われることとなったので同席し、見届け次第帰るという流れだ。この場合の“帰る”とは《人界》への帰還だけでなく、タンタヴィーら魔王軍精鋭兵たちを《魔界》アディケードは魔王城カカラムまで送り届けることを意味する(侍女たちはヒウィラと共にこちらに残るらしい)。またしても魔族を連れて《人界》を移動することが予想されるため、グオノージェンにはしっかりと休息を取らせ、あとのメンツで警戒すると決める。


 しゃらくさい。どうせお姫様(ヒウィラ)は衣装を仕立てるのやらで俺たちの手元から離れ、髑髏城のどこにいるとも知れない状況なのだ。今更俺たちをどうのこうのするとは考えづらく、《魔界》アディケードからこっちずっとそんな警戒具合だから肩が凝るったらない。神聖騎士でも魔王アムラの部下でもない俺は、あれこれ指図を受ける筋合いもないような気がする。


 俺は折角の《魔界》インスラ、ちょっと観光してみることにした。


 魔族への偽装はここ数日で幾度施したか知れない。魔術部分については理論どうしてそうなるかをすっ飛ばして手法どうすればどうなるかのみを教え込まれたから何とかなっている。


 様態を置換し魔族ぶって歩けば、城内の誰も俺を咎めることはしない。……いやまあ、普通に散歩しているだけだが。そして誰か来れば猫みたいに姿を隠してやり過ごしているんだが。


 そうやって一しきり歩き回ってみて、物陰(や、ときには天井)から城内の魔族たちの様子を観察して───いくつか気づいたことがあった。


 まず魔族たち。これはもう、見るからにどいつもこいつも覇気がない。大魔王の城の中だというのに、やる気あんのかとこっちが言いたくなるくらい動きに精彩を欠いている。おそらくこれも大魔王マイゼスの《魔界》統一の影響、九大魔王たちの死による再編の余波なのだろう。そう考えれば道中の村よりもまだマシで、いきなり発狂しそうには見えない。


 次いでひっかかったのは、髑髏城グンスタリオの内装(・・)だ。


 そもそも遠景の見てくれからして、されこうべに似ているから髑髏城と名付けたような奇怪極まる異様の建造物だったが、内装はまた違った違和感がある。例えば床のここ(・・)そこ(・・)、例えばそっちの窓とこっちの窓、例えば燭台。


 くっきりときっぱりと違う───統一感がない。ちぐはぐなパッチワークのような内装に、同じ建物の中を歩いているのかと疑わしくなる。


 大魔王ともなれば他に幾らでも住む場所なんてあるだろうに、こんな場所に好き好んで住んでいる大魔王マイゼスとはいったいどんなヤツなんだ? おいそれと会える立場ではないんだろうが、一度は対面しておきたい。それもできればヒウィラの挙式よりも前に。……とはいえ、ヒウィラのときと同じようにやれば大問題になるから流石に自重はする。


「さて、どうしたもんか……」


「そこの、あんた」


 背後から急に声をかけられて跳び上がった。掛け値なしに、天井まで。

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