126話 旅程完遂その2
二体の義体の慣らし運転も込みで、俺たちは前線都市ゴルデネスフォルムの街をぶらつく。
カストラスが腕によりを振るったのか、金髪碧眼のシナンシスは実に美男子だ。仮面のバスティと併せてまあ目立つ。白皙の《幻妖》クァリミンはその種族特性上人目を惹かないが、それがなかったら道行く男子諸君は全員彼女の虜になっていたことだろう。
俺とカストラスとウィーエは、いやまあ三人とも並以上のはずなんだが、肩身狭く彼らの後を付き従うみたいになった。
街を歩きながら、あれこれ情報を集める。
今までの、やれカストラスって男を知らないかとか、やれ《幻魔怪盗》の行先はどこだとか、そういう時間制限のかかった探し物とは違う。のんびりとゴルデネスフォルムの街を散策しながら、通りすがる人に気さくに聞いて回ればいいというのは気楽でいい。
探し物は、すぐに見つかった。いつもこのくらいあっさりめだといいんだが。
初老の男性が、おススメの店へ案内してくれるというのでご厚意に預かることとする。すぐに見えてきたのは、明るい雰囲気のこじんまりとした店。見ている間にも、女性客がそれを買って出てくるのが見えるあたり、なるほど噂になる人気商品らしい。
どれどれ。俄然よだれが溜まってくる。
看板にはこうある。
“甘宝 ~ハシェント神のお墨付き菓子店”と。
「何て言ったっけ?」
「バフェットだ」
近頃、西方で流行の新作菓子の名前である。
忘れかけるくらい前、カストラスを探しにこの西方へ足を運んだ根拠。彼がバフェットのことを口に出して、それが西方の菓子の名前だから───という記憶がある。
探し人が見つからなかったらバフェットを食べて帰ろう、という話だったはずだ。別に、見つかったら食べちゃいけないワケでもないだろう。
そういうわけで、来たのだった。
「いらっしゃいませ、ようこそフィゾ・レッテへ」
「こんにちは。バフェット、六人分欲しいんですけど」
「はい、かしこまりました。こちらで食べていかれますか、それともお持ち帰り用に包みましょうか?」
笑顔がチャーミングな店員さんに聞き返せば、こじんまりした店の奥には庭があり、そこのテラス席で食べていく客も多いのだという。バフェットがどんなものかは知らないが、俺たちはそこまでどっかり腰を落ち着けて食べていくつもりもないので持ち帰ることにした。篭に入れてもらい、代金を支払って店を後にする。
「どれ。いただきます」
四方八方から篭に手が伸びてくる。義体を新造してものを食べる機能を獲得したシナンシスなど、我先にと口に放り込んで、
───後に、ユヴォーシュが問われて語ったところによると。
「美味いはうまいんだけど、そんな、ディゴールからゴルデネスフォルムまでわざわざ食べにくるほどかって考えちゃうと、うん。……まあ、そこまででもなかったな」




